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2010年08月20日23:57

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それはたとへば虹の橋 わたるためしはないものに

『ホームレスヴィジュアル系』SHAZNA著 読了。

あまりにもヒドいタイトルに出た当初は
本屋で失笑してしまったものだったが、
100円ワゴンで見つけてしまったので、
購入してしまった。

物の30分程度で読了。

『ホームレスなんたら』ブームと
『(局地的)ヴィジュアル系』ブームの
二本の人のマワシで相撲を取る形振り構わない
姿勢が面白い。
つうか、それ以上の感想はない。

勃興期ヴィジュアル系は当時から大好きで、
今もその関心は続いている。

つい先日ロラパルーザで素晴らしいライヴを披露したX JAPAN。
『REBOOT』したらしいLUNA SEA。
泰然自若のBUCK-TICK。
仲直り後あちこち引っ張りだこの筋肉少女帯。
古参コアファンの囲い込みに活路を見出しているらしいD'ERLANGER。
相変わらず激烈なテクニックと世界観で人間離れしたDEAD END。

それぞれがそれぞれ、現役時代(という表現もおかしいが)を
越える自由さで闊達に活動している。

だが当然。

ブームという物は須らく玉石混交であり。

自分が中高生だった頃のヴィジュアル系ブームから
近年の再結成花盛り期に至るまで、様々な
『石』もあった。

大概、書籍などで通読したり、そのバイオや
逸話に触れられるのは『玉』の方のみである。

誰が、失敗者や無能者の行状を読みたがるか。

アマチュア時代のXの強烈な逸話の数々や、
LUNA SEAの頑固極まりないメンバ同士の
確執や譲られぬプライドの話しなど、
やはり面白くて仕方ない。

天才であるから成功したのであり、
努力する事が出来たから天才だったのであり、
当然のようにバンドや音楽に総てを捧げられたから
こそ、今の彼らはあるのだ。

そんな中。

そういった先人が築いてきた場所に
二匹目の泥鰌として形だけの成功を
味わってきた連中がいる。

それらが云うまでもなく、『石』だ。

以前、市川哲史のインタビュウ本
『私がヴィジュアル系だった頃』での
SUGIZOの回で、「SWEET CHILD(所属事務所)の
社長があまりにもLUNA SEAが云う事を聞かないので、
云う事を聞くバンドをデビューさせようとしたのが
SHAZNA」という発言を読んで爆笑すると共に
久々に(当時)目にした『SHAZNA』という名前に
関心が湧いたのだった。

そして、しばらくの時間が経ち。

ついに読んでしまったのが本書だった。

デビュー期からテレヴィなどで度々見かけていたので、
知っていたが如何せん空っ下手で曲もあまりにも
薄甘く興味の欠片も持てないバンドだったのだが、
それは読んでみた内容によって「さもありなん」と
補強されてしまった。

確かに、デビューまでの苦労と、その後の浮沈が
語られる。

だが、「浮」に至るまでの過程での努力は
素人目にも甘ったるく見当違いであり、
音楽が演りたいのか有名になりたいだけなのかが
徹底的に不分明だった。

そこを敢えて「暴露」する事がセンセーショナル、と
思ったのかも知れないが、やはり居心地の悪さは
否めない。

というより、ミューズの寵という物を得ようとして
墜落していった人々を数々観ているだけに、
この心構えの輩風情がどのような道を歩もうが
知った事ではない、というのが本音だ。

やはり、「命削って演っている」と口だけで
云うバンドや音楽家は多数いる中、本当に
削ってしまったXのようなバンドのファンでいると、
更に。

練習スタジオ代やレコードを作る為の広告料、
ライヴ特典用のヴィデオなどを作る為に
危うく栄養失調や餓死しかけた(マジで)
バンド(Xだが)と違い、少々インディ盤が売れて
小金が入ったらライヴハウスへのアシに
RX−7を買ってしまう(下手を自認しながら!)
ような連中の音楽に価値などあろう筈がない。

下手とオーディションでこっ酷くケナされて
それを見返す為に徹底的に努力したXや
「努力しない練習しない人間の云う『ラフ』は
信じられない」というLUNA SEA(SUGIZO)の
真摯さが今も変らぬクオリティと信奉を
集める要員となる。

再結成したとの事なので、Youtubeで
ちらりと見てみたが、やはり全く変る処は
なかった、というのが印象だ。

努力する事を知らなかったバンドが
たまたま時流に乗り、つかの間の成功をした。
それはやはり泡沫のような蜜月に過ぎず、
間も無く消え失せる事となったが、それから
再び来た時流に再度乗っかりやってみただけ。

そういう姿勢はこの本にも強く顕われている。

徹底的にそういうだらしなさや矮小さを
書くのであれば、もっとやりようもあったろうし、
最後に亡くなった母親の下りで美談化しようなど
という腹積もりは吐き気がする。

つくづく、微温的な本であった。

だが、その生温さが多くの人間の本音であり、
その中で図抜けた努力をする人間が成功する。

そんな当たり前の事を改めて考えさせる功、というのは
あるかも知れない。

好きでも嫌いでも無い存在が嫌いになったという
滅多に無い経験をさせて貰ったのは、貴重。

口直しに『私がヴィジュアル系だった頃』を読もうっと。
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