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2025年12月20日23:47

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ZARDの坂井泉水が育った秦野市を中心とした旅 <レンガ色の空を斜めに見上げて ―― 秦野・厚木・松田・、記憶の断片を拾う旅 テーマ曲 「あの微笑を忘れないで>後編 12月19日(土)多摩市キャンドルナイト

前日に続き、2025年第18回11月23日(日)第19回24日(月・祝)第20回12月6日(土)、第21回12月7日(日)の丹沢山麓秦野市を中心とした旅、後編である。エピローグとして最新12月19日(土)東京都多摩市の多摩中央公園で開催されたキャンドルナイトを紹介する。

 前編 第1章と小見出し掲載 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1991273060&owner_id=32437106

<レンガ色の空を斜めに見上げて ―― 秦野・厚木・松田・、記憶の断片を拾う旅 テーマ曲 「あの微笑を忘れないで>後編

第2章 12月6日(土)弘法山、名残の紅葉が教える「心の解像度」厚木市白山森林公園

・スポット1 秦野市弘法山公園
 (1) 浅間山 
  (2) 権現山 度々飛来するヤマガラの習性 
  (3) 弘法山

・スポット2 厚木市飯山

第3章 12月7日(日) 星空のパレード 夜景 イルミネーション
・スポット1 海老名市相模大堰
・スポット2 厚木市若宮公園
・スポット3 秦野市葛葉緑地、カルチャーパーク、震生湖
・スポット4 松田町西平畑公園
・スポット5 秦野市さかえ町公園と2025年の旅の総括
エピローグ 12月19日(土)東京都多摩市多摩センターイルミネーション&キャンドルナイト


第2章 弘法山、名残の紅葉が教える「心の解像度」厚木市白山森林公園

 外部リンク 秦野弘法山公園 秦野観光協会より
https://www.kankou-hadano.org/pointinformation/pointinformationguide/point_koubouyama.html

 外部リンク 厚木市 白山森林公園 あつぎ観光ナビより
https://www.atsugi-kankou.jp/site/yamanami-kikou/iiyamashinrin-park.html

写真=「あの微笑を忘れないで」のMVの一幕 掲載元 Amebro My Pleasure Time!!
2019年6月28日付 https://ameblo.jp/mufallera181/entry-12486990186.html
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    ・スポット1 弘法山公園 

 12月6日(土) 朝方、西の空に富士山が顔を出すほど、空気は澄み切っていた。刺すような寒さではなく、薄絹を纏ったような、穏やかな冷たさだった。道中駅南口の観光案内所に立ち寄った際、暖房が効いていて、リラックスしたことにより、少々長くとどまってしまった。地元育ちの職員とリアルタイムで会話することにより、過去にも優れたスポットを紹介してくれた。最初に訪れる弘法山公園は春に咲く桜の名所として観光誌にも大きく取り上げられていた。紅葉については、日影が多い影響から遅めに咲く傾向にある。人工林の中にモミジやクヌギが混じり、日の光を浴びるとオレンジと赤のコントラストが浮かび上がる。わき道を注意深く観察するようにとのアドバイスを戴いた。しっかりと言葉を交わすと、気力がわきあがり、足取りも軽くなった。

             (1)浅間山

 秦野駅の標高が90mに対して、弘法山公園の最高峰権現山展望台の標高は243m、未舗装の曲がりくねった険しい道を登る。草の根や石を跨ぎ、ターンをするたびにバランスを失いそうになる。彼女が「あの微笑を忘れないで」のなかで綴った「新しいハードル」の言葉が重みを増す。見上げる者には高く、挑む者には確かな手応えを与えてくれた。
 標高194mの浅間山へ近づくにつれて、勾配が緩やかになった。杉林の中で 一本のモミジが光を受けて、鮮やかな赤に染まっていた。12月の寒風にさらされながらも、その葉は散り際を拒むように、強い意思表示をしているようだった。静かな佇まいの奥底に、誰よりも熱い音楽への情熱を秘めていた坂井泉水の姿に重なって見えた。テレビに一切出ずに控えめだった彼女は、モミジのようにスポットライトを浴びる存在だった。
 浅間山へたどり着き、平坦な道に出ると、権現山へと続くのぼり道に入る。2つの山の境目を貫く道路付近に、緑と赤が入り混じったモミジが枝を伸ばしていた。冬へ向う中、いまだに健在だったモミジに登山客は足を止めて撮影に入った。

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まだまだ急なのぼり道が立ちはだかる。険しい道を息せき切ってのぼった労力が報われる思いだった。色鮮やかなモミジに目を奪われ、活気付く中、階段を登り、公園内の最高峰権現山にたどり着いた。

         (2)権現山展望台 飛来するヤマガラの修正

 公園最高峰の権現山展望台からは、霞む相模湾と、冬の光に洗われた秦野の街並みは、淡いトーンで描かれた風景画の中に、自分の身を置いているような錯覚さえ覚えた。お昼時、ベンチでは数人の散歩客が、寒さに身を縮めながらも静かに食事をとっていた。灰色の空の下、そこだけがぽつんと、冬の静寂に守られた温かな居場所のように見えた。開けた頂上の脇には、真っ赤な実をつけたピラカンサが育つ。木に寄り添いながら、ピラカンサ越しに展望台を撮影する。陽光が遮られたことで、彩度を失い、モミジもくすんでみえた。ピラカンサの実は、まるで自ら火を灯したかのように鮮烈な赤を放ち続けていた。

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 その無機質な灰色の展望台と、鮮やかな赤とのコントラスト。冷たい現実や孤独に抗うように、ひたむきに響き続ける彼女の歌声のようだった。

 
 展望広場のやや奥まったところにバードウォッチャーが集う観察小屋がある。木の三角窓を通すことで、程よく人と野鳥の距離感が保たれていた。メジロやヤマガラ、シジュウカラは、年間を通して飛来し、水を浴びて、羽についた泥を落とす。春先オスとメスの出会いの場となる。初夏へかけて、雛鳥が度々姿を表す。

私が最初に公園を訪れたのは2018年10月21日(日)、7年2ヶ月前に遡る。当時、野鳥の姿を追い、その生態を記録することに夢中だった。権現山から弘法山へ続く平坦な馬場道の脇で、一羽のヤマガラの行方を追っていた。「ジェージェ」としわがれたような鳴き声を出して、縄張りを主張し、地面に降り立っていた。慌しく木の幹と地面を行き来しながら、食物を採取していた。その目的は、冬の食料不足に備えて木の実を地中に蓄える「貯蔵」である。未来の自分を救うために、誰に教わるでもなく、ひたむきに「希望の種」を埋め続ける小さな命。
 「孤独な時間抱きしめて 人は大人になるから」
 2018年の私には、単なる「自然の摂理」としてしか映っていなかった。新たに坂井泉水の歌詞をフィルターとして通すと、見方が広がる。たった一人でレコーディングスタジオで、まだ見ぬ誰かの明日を照らすために、マイクを前に声を吹き込む。一粒、また一粒と言葉を選び、曲のリズムに合わせて歌い続ける。その孤独な作業もまた、いつか誰かの「心の冬」を溶かすための、種をまく時間だったのではないか。
 今、木から木へと渡りゆくヤマガラの瞳は、これから来る厳しい冬を恐れてはいない。むき出しの枝々の新芽では食料としては心もとない。蓄えさえあれば乗り越えていける。 「あの微笑を忘れないで」――。  その旋律は、時を超えて芽吹く種のように、私の心の中に静かに、けれど力強く根を張っていく。2018年には「淡々とした風景」に見えていたこの山道が、今は彼女の情熱とリンクし、驚くほど鮮やかな生命の色を帯びていた。

        (3)弘法山

権現山から下り、最終ゴール地標高234mの弘法山を隔てる平坦な馬場道を散策する。新たに作られた階段沿いでは、モミジが点々と連なっていた。

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確かにやや見頃が過ぎて鮮度は落ちていた。灰色の雲に日差しを遮られると、元気をなくしたようにみえるのかもしれない。 吹き抜ける風が、一枚のモミジの葉っぱを私の足元に届けてくれた。枝から離れていく様子は、冬の到来を告げる。馬場道へと戻り、緩やかな登り道を経て、弘法山展望台に立った。2024年12月に、行政によって麓の木々を景観伐採して、新たに設けられた。秦野盆地越しに相模湾を臨み、大きく深呼吸をした。
 
「微笑みを忘れない」ということは、立ち止まることではない。  移ろいゆく季節のなかで、自分だけの「色」を見失わず、新しい景色を目指して歩き続けることだった。私は、眼下に広がる街の輪郭と、残された紅葉の鮮やかさを、心のスコアブックに深く刻み込んだ。
秦野駅へ戻り、観光案内所に立ち寄った際、別の職員が出迎えてくれた。毎回午後1時を境に、職員が交代している。桜の名所弘法山公園にて、冬を前に最後の輝きを放つモミジの印象を伝えた。職員も同じ意見だった。散り際のモミジには、厳しい冬を越えようとする『覚悟』のような色が宿っていた。2025年の紅葉は、前年よりも概ね一週間程早かった。現に蓑毛の緑水庵では、予定より2日前倒しで12月5日(金)にライトアップを終了した。
             
             スポット2 厚木市飯山
 

続く舞台は厚木市飯山である。白山森林公園前では、先着順にとん汁と鮎の塩焼きが振る舞われていた。その条件は厚木市観光協会をLINE登録だった。画面上にて友達リスト追加を確認してもらうと、早速一杯トン汁を戴いた。火にくべていた鮎の塩焼きも丁度出来上がったタイミングだった。山あいの冷たい空気の中で何よりのご馳走となり、しばし旅の疲れを忘れさせてくれた。

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食事を終えると、すっかり午後3時40分を超えていた。陽がかげる前に駆け込むかのように、白山森林公園を隔てるシカ避けの柵を開けた。鉄の柵が閉まる冷たい音だけが響き、その先にはもう、誰の気配もなかった。散り始めたモミジが地面を斑(まだら)に染め、頭上の枝先は少しずつ冬の骨格を露わにしている。
 森の奥へ進むほどに、静寂は重みを増し、薄暗い闇が足元から忍び寄る。一人であることの不安がよぎるが、それを打ち消すように、ケヤキの枯葉を踏みしめる乾いた音だけを頼りに進んだ。ふと見上げれば、いつの間にか空は厚い灰色の雲に覆われ、日差しは完全に遮られている。光なき森の中でも、大きく枝を張り出したモミジの木は、圧倒的な存在感を放っていた。散りゆく姿さえも力強く、太古の昔から繰り返されてきた生命の息遣いが、冷たい空気を通じて聞こえてくるようだった。

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Open your heart ひたむきな あなたの瞳が好きだった

 山々に抱かれた長谷寺(飯山観音)へ戻ると、凛とした崇高な時間が流れていた。参道脇に整然と並ぶ石灯篭。日暮れとともに、一つ一つの灯篭に蝋燭の火が灯されていく。ライトアップされたお堂の三角屋根が、深い闇の中に凜と浮かび上がった。
 石灯篭の中でゆらめく小さな火は、まるで帰る場所を求める魂を清めているかのようだ。一歩先には闇に抱かれた「冥土」を思わせる寺の静寂がある。ふり返れば、横浜ランドマークタワーへと続く街の明かりが点々と連なる。私は今、生と死、日常と非日常を分かつ「境界」に立ち尽くしていた。 時折階段を登って参拝客がくる。撮影者に配慮して、参道の脇からそっとお堂へと赴いていた。
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ふと視線を落とせば、別世界が広がっている。すぐ真下の階段脇には、厚木の町を背景に、ご当地キャラの『あゆころちゃん』とイルミネーションがコラボしている。指揮棒を振るあゆころちゃんは、私を再び愉快な世界へと呼び戻し、気持ちを朗らかにしてくれた。光のマジックがもたらす、心躍る瞬間だった。参道へと戻ると、見方は大きく変わった。お堂へかけて並ぶ灯火の一つ一つが、私の「心の冬」を少しずつ溶かしていくのを感じた。遠くに見える街の明かりは、これから戻るべき道を示してくれた。大きく息を吸い、境界の闇に別れを告げた。
あの微笑を忘れないで いつも輝いていたい 心の冬にサヨナラして 走り出そう 新しい 明日へ

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都会の喧騒の中では、すべてが早回しの映像のように通り過ぎ、私の心の解像度は、いつの間にか粗くなっていたのかもしれない。秦野市弘法山公園や厚木市白山森林公園の厳しい冬の兆しを前にして、心が揺り動かされた。一枚の葉の脈動、風の温度、そして自分の中にある小さな迷いさえも、鮮明に捉え直すことができた。坂井泉水の歌声がいつも瑞々しいのは、彼女が誰よりも高い解像度で、日常の切なさを愛していたからではないだろうか。

     第3章12月7日(日) 星空のパレード 夜景 イルミネーション

外部リンク 厚木市若宮公園 あつぎ観光なびより
https://www.atsugi-kankou.jp/site/atsugi-flower/kouyou-wakamiyakouen.html
外部リンク くずは自然の家 観光かながわNowより
https://www.kanagawa-kankou.or.jp/spot/1530

外部リンク 第23回松田きらきらフェスタ 松田観光ガイドより
https://letsgo-matsuda.com/?page_id=12467
外部リンク 秦野市さかえ町公園イルミネーション 秦野市ホームページより
https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1763614648669/index.html
      スポット1 海老名市相模大堰 厚木市森の里若宮公園

12月7日、2025年に21回に渡った巡礼の旅は最終日である。 朝方海老名市相模大堰では、冬の訪れを告げる野鳥カワアイサが、大群をなしていた。その周囲にはダイサギが降り立ち、魚をついばんでいた。カワアイサの追い込み漁にちゃっかりと預かる。共に喧嘩しあうことはなく、我々人と同じく、魚の恵みを享受していた。

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スポット2 厚木市若宮公園

私は厚木市「森の里」へと足を運ぶ。坂井泉水が短大時代、瑞々しい感性を育んだこの街は、緑地と公園、住宅地が程よく混在する。駅から離れているとはいえ、スーパーや銀行など生活インフラが整えられていた。本厚木駅と愛甲石田駅との間をバス路線が結ぶ。高低差のある若宮公園では、クヌギのオレンジ、モミジの赤が程よく調和する。松蔭大学(坂井泉水の在籍時は短大)方面へかけての階段道の脇は、モミジの葉越しに、丹沢の峰々が写った。町の景観が変わっても、山はいつの時代も人々の目印になる。山肌を身近に感じた彼女は、清らかな川の流れに耳を澄まし、自然の息遣いを自分だけの音楽(スコア)へと変えていった。
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   スポット3 秦野市葛葉緑地、カルチャーパーク、震生湖

昼時に向ったのは、雑木林が残る葛葉緑地だった。色とりどりの枯葉に縁取られたその姿は、都会の喧騒から逃れてきた旅人を優しく迎え入れる、森のシェルター(避難所)のようにも見える。飾りのない木の壁は、長い年月をかけて周囲の樹々と対話を続けてきたような、不思議な安心感を湛えていた。
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水無川沿いのカルチャーパーク、2週間前と比較して、モミジは散り始めていた。競技場周囲のイチョウの木は、いまだに黄金色に染まっていた。「鎮魂」や「しとやか」の花言葉から、静かに人々を見守ってくれるような包容力を抱いた。
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敷地内の「メタックス体育館はだの」を背景に、シクラメンの鉢植えが並べられていた。花言葉は、「内気」、「はにかみ」、「遠慮」、「気後れ」、冬を迎えるにつれて咲き始める様子から、控えめで大人しい人々の姿と重なった。坂井泉水自身も、デビュー後は人前に姿を見せず、郊外の秦野市内で暮らしていた。透明感があり、可憐に咲く花と重なっていた。
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水無川沿いの秦野市中央運動公園から、出雲大社相模分祀を経て、渋沢丘陵の一角に位置する震生湖へと向った。谷底に位置する水がめは、釣りスポットとしても定着している。風が吹くたびに枝から離れた葉っぱは、湖面に落ちていく。やがて水底に沈み、微生物に分解される。丘陵地の尾根に戻ると、視界は大きく開ける。沈みゆく太陽光により、赤く染まる丹沢の山々、対照的に深い谷底に水を湛えた震生湖。どこを歩いても、散りゆくモミジは「心の冬にサヨナラ」を告げるための、最後の手向けのように鮮やかだった。
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    スポット4 松田町西平畑公園
 
旅の終着点は、松田町に位置する標高580mの松田山山麓西平畑公園。 公園の標高は推定180m、公園へいたる道程は、早春に開花する河津桜並木である。12月はすっかり葉を落とし、むき出しの枝々が、繊細な神経図のように指を伸ばしている。午後4時55分、休眠する木々の沈黙を破るかのように、18万球のイルミネーションが一斉に灯された。

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星空のパレード 涙がこぼれないように 大きく息を吸った
 3年前、私はマイフレンドの一説に表れるように、切ない気持ちを抱いていた。夜空に浮かぶ星や眼下の町明かり、園内を彩るイルミネーションに慰められていた。今響くのは、もっと内省的で、もっと強い、この「あの微笑を忘れないで」の旋律だ。
 酒匂川沿いの足柄平野に広がる街の明かりの一つ一つには、名もなき人々の営みがある。誰かを想い、時に孤独に震え、それでもひたむきに今日を生きる人々。坂井泉水が都会の喧騒を離れ、丹沢の山々に抱かれたこの秦野の地で育んだのは、「普通に生きる人々」への、どこまでも優しい眼差しだったのではないか。
あの微笑を忘れないで いつも輝いていたい 心の冬にサヨナラして 走り出そう 新しい 明日へ

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 イルミネーションに照らされた若いカップルたちが、肩を寄せ合いスマホで未来を切り取っている。時代はZ世代へと移り、世界情勢は不穏な影を落とし、デジタルの波がすべてを加速させていく。それでも、1967年にこの地で生まれた彼女のメッセージは、時代を越えて色褪せることはない。
 「人は大人になるから」という言葉は、痛みを忘れることではない。痛みを抱えたまま、イルミネーションのように自ら光を放ち、誰かの明日を照らす存在になることなのである。
 刻々と空色が変わり、いつの間にか眼下の町は闇に包まれていた。麓を走る東名高速道路が灯すオレンジのナトリウム光がアクセントになる。闇夜の中で、イルミネーションは一段と主役級の存在感を放つ。私は坂井泉水の故郷から世界観を感じ取ってきた。日暮れ時高台から見下ろす町の明かりは、人々の日常の営みを肌で感じられる。時は常にまっすぐ進む。後を振り返っていては始まらない。時に道に迷っても、必ず一つの方向へ進んでいく。
 新しい明日へ。  

 私はゆっくりと、けれど確かな足取りで、電球により装飾された階段を下り始めた。小田急線の新松田駅から、上り方面に一駅先の秦野市渋沢駅間の乗車時間は、路線内最長の7分になる。停車時、帰宅した登山客を出迎えるかのように「負けないで」のオルゴールメロディーが流れる。坂井泉水もかつて、同じ山並みを見上げ、同じ風に吹かれながらこの駅を利用していた。スピーカーから流れる、優しくも力強い鉄琴の音色が、私の背中をそっと押してくれる。
『ふとした瞬間に、視線がぶつかる』
歌詞にあるような偶然の奇跡は起きなくても、この駅メロが鳴り響くたび、故郷に遺した『ひたむきに生きる意志』が、ホームに立つ人々にエールを送り続けた。私は、遠ざかる電車の音を背に、もう一度だけ車窓越しに空を見上げた。すっかり陽が落ちて空は真っ暗だった。それでも寂しさはない。今、私の心にあるのは、孤独への不安ではなく、明日を走り出すための確かな高揚感だった。

スポット5 秦野市さかえ町公園 旅の総括

帰りの列車に乗っていた私は、渋沢から上り方面で隣に位置する秦野駅で途中下車した。駅間の乗車時間は4分、標高163mの沿線内最高峰の渋沢駅から、標高90mの秦野駅間は、緩やかな勾配を駆け下っていく。かつて私は水無川を経由して駅間を歩いたことがあった。高低差73m、川沿いは勾配が緩やかなうえ、坂はなく、快適に散策できた。盆地から丘陵地に跨る沿線内で、少女時代彼女は陸上競技の選手としても鍛え上げた。

最後の舞台は、秦野駅北口から800mの距離に位置する秦野市「さかえ町公園」、地元の子供たちが手作りしたサンタや雪だるまのオブジェが、柔らかな光に包まれていた。小さな手が一生懸命にハサミを動かし、色を塗ったぬくもりが宿っている。プロが作る豪華な装飾とは違う、日常のなかにある「ひたむきな輝き」。それこそが、彼女が愛し、歌い続けた「希望」の原風景のように思えた。
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2025年、21回に及ぶ巡礼の旅を通して、私は坂井泉水の故郷に流れる『静かな情熱』を肌で感じてきた。 かつては彼女の歌に『慰め』を求めていた私だが、今は違う。標高180メートルの高台から見下ろした街の明かり、そしてさかえ町公園で見た子供たちの手作りの光——。それらは、誰かに照らされるのを待つのではなく、自らがひたむきに光を放つことの尊さを教えてくれた。
坂井泉水が丹沢の麓で育み、生涯をかけて紡ぎ続けたのは、孤独を知るからこそ生まれる、他者への限りない優しさだったのではないか。
『人は大人になるから』。 その言葉を胸に、私は過去の切なささえも自分を形作る大切な音符(スコア)として受け入れ、前を向く。秦野の街が彼女を慈しみ育てたように、この旅で得た景色を心の糧として歩き出す。彼女の微笑みが、そしてその歌声が、これからも私の進む道を、澄み渡る冬空の星のように照らし続けてくれると信じて。
手作りの光に照らされた公園を後にする。 見上げれば、冬の星座が静かに見守ってくれていた。
もう、迷いはない。
                                    <終わり>
  エピローグ 12月19日(土)東京都多摩市多摩中央公園第1回キャンドルナイト

詳細 多摩市ウィンターキャンドルナイトより
https://tama-central-park.jp/event/entry-346.html

2025年12月19日(土)東京都多摩市の小田急と京王の多摩センター駅からパルテノン多摩にかけて、中央通りは40万球のLED電球が施されていた。パルテノン多摩前には、今では多摩市のシンボルとなる等身大のキティーチャンのバルーンライトが据えられている。闇夜の中に透き通った乳白色の肌は、厚手のコートをまとった人々を出迎えてくれた。子供たちはキティーチャンの前で足を止めて、母親や父親に見守られながら、記念撮影していた。19日は、翌20日にかけて2日に渡る「キャンドルナイト2025」の初日である。多摩中央公園内大池の一角では、ガラス瓶を白い紙で包み、中心に蝋燭を点す。小雨が降る中、ブルーの空を背景に、蝋燭の火がおぼろげに浮かんだ。
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きらめき広場では、浅い水面に灯ろうを浮かべた。銀色のオブジェを背景に、火が灯る様子は、未来へ向って進む人々へ「自分だけの光を絶やさないで」と、音のないエールを送っているかのようだった。秦野の山麓で拾い集めた記憶の断片は、今、多摩の夜に揺れる数千の灯火となって、私の行く手を鮮やかに照らし出している。

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 『あの微笑を忘れないで』。その旋律を心のスコアブックに刻み、傘を畳んだ。フード一つで雨避けには十分だった。濡れたアスファルトに反射する光の粒子を一歩ずつ踏みしめる。雨上がりの夜空には、彼女の微笑みのような清廉な星が、きっとまた昇るはずだ。私の旅は、ここからまた、始まっていく。


写真=坂井泉水のメッセージ 出展先 NHK「The Covers ZARD 35周年SPナイト!」 初回放送日:[NHK BS / BSP4K]2025年7月6日(日)22:50〜23:19 より

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過去の秦野関連日記 

2025年上半期フィナーレ テーマ曲「見つめていたいね」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990263194&owner_id=32437106


2024年フィナーレ テーマ曲「マイフレンド」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988978359&owner_id=32437106

2023年のフィナーレ テーマ曲「Don't you see!」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986504073&owner_id=32437106&org_id=1986490500



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