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2019年02月03日19:48

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BCJのベートーヴェン,交響曲第9番

【プログラム】

ベートーヴェン: 交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱付き》

アン=ヘレン・モーエン(ソプラノ)
マリアンネ・ベアーテ・キーランド(アルト)
アラン・クレイトン(テノール)
ニール・デイヴィス(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱・管弦楽)
鈴木 雅明(指揮)

2019年1月24日(木)19:00開演,東京オペラシティ・コンサートホール


いまから2年前,BCJによるベートヴェンの「ミサ・ソレムニス」を聴き,先週はBCJの「第九」を聴いた。今回の「第九」の演奏でも,前回の「ミサ・ソレムニス」と同じく,なぜ古楽器でベートーヴェンを演奏するのかという疑問に対する明快な答えはなかった。ただし,この国でも,古楽奏者たちが力を結集すると,ベートーヴェンの作品をこんな風に演奏できるということはよくわかる。その意味で,BCJは健闘していた。

ベートーヴェンのダイナミックな作品を敢えて音量の小さい古楽器で演奏する意味は何なのか,「ミサ・ソレムニス」の演奏会で示してくれるのではないかと期待していたものの,とりあえず古楽器でこの曲を演奏してみましたという以上の答えはなかった。少なくとも,個人的にそれを以上のことを感じ取ることはできなかった。

この点に関しては,交響曲第9番の演奏を聴いたあとでも基本的に変わりはない。古楽器で演奏することのメリット,古楽器の強みを生かせばこういった表現が可能になるといったメッセージに乏しい。たしかに,第3楽章の叙情的なアダージョで木管楽器のソロが奏でる息を飲むような天国的な美しさに満ちた瞬間があった。しかし,音量の豊かさに欠けることに加え,ある種の疾走感の表現を苦手とする古楽器であるにもかかわらず,かなり速いテンポでベートーヴェンの交響曲を演奏するアプローチにそもそも無理があるのではなかろうか。もちろん,古楽器でこの作曲家の音楽が持つエネルギーを表現するにはテンポを上げて,音の凝集度を増すような奏法が適しているという事情は理解できる。問題はこうしたアプローチが正しいとしても,やはりオーケストラの編成が小さ過ぎるのではなかろうか。さらに,国内で古楽スタイルでの演奏に精通した優秀な器楽奏者を必要な数だけ獲得するのも容易ではないかもしれない。海外から招聘するとしても,多くの困難が伴うのかもしれない。様々な要因があって今回のような編成になったことはある程度察しはつくが,今日,ベートーヴェンの音楽を国内の古楽演奏団体が演奏するにはかなりの無理があるように見受けられる。

もう一点気になったのはソリストの水準。もちろん聴くに耐えないレベルだったと言いたいわけではない。国内で行われる「第九」の演奏会のソリストと比べて遜色があるとも思えない。だが,BCJが初めて挑むベートーヴェンの交響曲第9番の記念すべき演奏会にしては物足りなさを感じさせる陣容である。当日,ステージ上には多くのマイクが林立し,本番での演奏を中心に据えた「第九」のレコーディングが行われていることをうかがわせる。であればなおさら,数え切れない「第九」の録音のなかでも出色の出来を目指していたのではなかろうか。歌手の力量に加え,歌唱スタイルも古楽演奏に最もふさわしい歌い方というわけでもなさそうである。古楽スタイルによるわが国初の記念碑的な「第九」のレコーディングにしては,これら4人の独唱者では物足りない。

BCJの演奏を聴いていつも感心することだが,合唱の水準に関しては不満は一切感じることはない。普段よりやや多めの総勢30人を超える合唱のアンサンブルは,技術的に完成度がすこぶる高い。少人数ゆえの機動性も優れている上,通常この曲を演奏する場合の100人近い合唱にも引けをとらない存在感は,鍛え抜かれたこのBCJの合唱の実力を遺憾無く発揮していた。欧米の歌劇場付属の合唱団に勝るとも劣らない歌唱技術と声量をBCJは兼ね備えている。宗教音楽の演奏を主体にする演奏団体だからこそ,管弦楽よりも合唱に重きを置くという事情もあるのだろう。合唱に関しては,世界のどこへ出しても通用するのではないかと個人的には考えている。

今回,ベートーヴェンの交響曲第9番を聴いて,東京オペラシティでのBCJの演奏会詣に一区切りがついたような気がする。J.S.バッハの作品も含めて多くのBCJの演奏に接し,彼らの強味も不足する点も一通りわかったような気がする。今後は少し違ったターゲットに的を絞ろうかと考えているところだ。
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