テスラ、モデル3の生産遅延で膨らむ財務リスク
2018/1/17 12:00日本経済新聞 電子版
米電気自動車(EV)メーカーのテスラが量産タイプの新型EVセダン「モデル3」の生産立ち上げに手間取っている。3日、モデル3を週5000台ペースで生産する目標の達成時期を2018年4〜6月期末までに延期した。生産目標の修正はすでに2回目。財務状況をみると、高水準な仕掛かり在庫や急増する損失引当金など課題が山積する。モデル3の生産がさらに遅れるようだと、赤字経営のテスラが頼る資本市場や銀行からの資金調達にも影響が出かねない。
「生産地獄ではなく、(先の見えない)ブラックホールになるかもしれませんね」。国内証券の自動車アナリストはモデル3の度重なる生産遅れについてこう話した。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はモデル3の量産で「生産地獄」に直面していると説明しているが、テスラにとって遅延問題はより深刻化しているという指摘だ。モデル3は高級セダンEV「モデルS」の半値以下の3万5000ドル(約390万円)からという割安さで人気を集め、事前の受注は50万台規模に達した。当初は17年末までにモデル3を週5000台ペースで生産する目標を掲げたものの、11月に達成時期を18年1〜3月期中の後半まで延期し、そしてさらに遅れた。17年10〜12月期の出荷台数はわずか1550台にとどまる。テスラは18年末までに年間の生産能力を50万台に増やし、20年までに100万台まで引き上げる野心的な計画達成に黄信号がともり始めた。
生産に手間取る中、にわかに注目され始めたのがテスラの財務状態だ。「自動車メーカーとしては異常だ」。ある自動車メーカーの財務担当役員はテスラの財務内容に首をかしげる。理由として指摘するのは、高水準な仕掛かり品などの在庫と損失引当金の急増だ。
商品や原材料などを仕入れて、どれくらいの期間で販売できているかを示す棚卸し資産回転日数をみると、テスラは16年12月期で139日だった。17年1〜9月期でも100日程度だ。カンバン方式でムダな在庫を極力つくらないトヨタ自動車は過去5年平均で約35日と約1カ月で在庫が一回転する効率性を築いているのと比べると、テスラの在庫回転は効率が悪いのが分かる。テスラが目指す100万台クラスの自動車メーカーであるマツダは約57日で在庫を回している。
メーカーにとって在庫は悪だ。在庫は眠った現金と同じだからだ。在庫が膨らめば、追加の運転資金を必要とする。在庫が滞留すれば、販売機会を逃す可能性もある。「在庫がこんなにあると、自動車メーカーとして安定した経営をできない」(自動車メーカー役員)と話す。
もうひとつは引当金の急増だ。QUICK・ファクトセットによると、17年9月時点の引当金は24億ドルに達する。15年12月の12億ドルから2倍に膨らんだ。「電池が故障したときの買い取り保証引当金なども入っているとみられる」(同役員)と指摘する。
そもそも、在庫や引当金が懸念されるのは、テスラが赤字経営で台所事情が厳しいためだ。テスラの17年1〜9月期の最終損益は12億8600万ドルの赤字(前年同期は5億5300万ドルの赤字)だった。キャッシュフロー(CF)も厳しい状況が続いている。1〜9月期の営業CFは5億7000万ドルの赤字(前年同期は3億2400万ドルの黒字)だった。企業が自由に使える現金を示すフリーキャッシュフロー(純現金収支=FCF)も、モデル3の量産に向け設備投資が膨らみ、31億9800万ドルの赤字(前年同期は4億3400万ドルの赤字)に悪化した。
これまでは、テスラのビジネスモデルに対する期待を受け、資本市場からの資金調達は順調だった。だが、市場からは「頼みの資金調達も金融が引き締めモードに変わりつつあるなか、これからは一筋縄にはいかないだろう」(国内証券アナリスト)との声が聞かれる。モデル3の度重なる生産遅延も、投資家の期待を失望に変える恐れがある。
テスラは17年8月に総額18億ドルの社債を発行した。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングの格付けは投機的水準である「シングルBマイナス」で、「モデル3に関連する販売や財務目標を達成できなければ、資本構造の持続性に対するリスクは今後1年で高まる」(S&P)としている。
テスラの17年9月末時点の自己資本比率は16.8%と16年12月末の21%から4.2ポイント悪化した。現金は17年9月末で35億ドル保有している。ただ、モデル3などへの設備投資の資金需要があるため、この1年で四半期ごとのFCFの赤字(出超)は平均で10億ドルを上回る。
一般的に成長企業ではFCFが赤字の企業は多いものの、営業CFが赤字なだけに、今後、社債や銀行からの借り入れ、新株発行などによって新たな資金を安定して調達し続けられるかが経営を左右する。
もっとも、投資家のテスラに対する期待は、はげ落ちたとまでは言えない。テスラ株の12日終値は336.22ドルと、直近ピークだった17年9月から約1割安。時価総額は565億ドルと米フォード・モーターの525億ドルを上回る。「テスラの株価は、IT(情報技術)バブル時に赤字のネット企業を評価するのに使われたPSR(株価売上高倍率)ぐらいでしか説明できない」(アナリスト)。
テスラがモデル3の量産にてこずる間に、ライバルの日米欧の自動車メーカーは着々と米国へ投入するEVを開発している。顧客の手元に届くモデル3が遅れるほど、ライバルとの競争に巻き込まれる。何度も正念場をくぐり抜けてきたテスラの底力が試される。
(証券部 星正道)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25735560W8A110C1000000/
>市場からは「頼みの資金調達も金融が引き締めモードに変わりつつあるなか、これからは一筋縄にはいかないだろう
過熱感のある米国では金利の上昇が今年も続きます。
景気が良いのに物価がさほど上がらないのは金が消費ではなく投資に回っているからです。
テスラへの資金調達状況はベンチャー企業に金が流れ込んでいる投資の一例です。
でも今後金利が上がって行けばテスラをはじめとしたベンチャー企業に金が回らなくなって行きます。
特にマスゴミに騒がれて規模を大きくしたテスラはキャッシュフローが出なければ、投資家に切られるでしょう。
唯一の望みは利上げ後に海外に流出していた資金が米国に戻りドル高になる事です。
国内に資金が溢れればまず米国債が買われて金利が上がらない状況になるでしょう。
更に余った資金がベンチャー企業にも流れます。
ただしそうなるまでに1年以上費やします。
その間テスラ始めどの位のベンチャー企業が持ちこたえられるかは神のみぞ知るです^^;
ログインしてコメントを確認・投稿する