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2024年01月13日14:57

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シェーンベルクほか『終わりなき航海』(エマーソンSQ)

【収録曲】

1 ヒンデミット: メランコリー Op.13
2 ベルク: 弦楽四重奏曲 Op.3
3 ショーソン: 終わりなき旅 Op.37
4 シェーンベルク: 弦楽四重奏曲第2番嬰へ短調 Op.10


エマーソン弦楽四重奏団
 ユージン・ドラッカー(第1ヴァイオリン� ��ぁぢ茖殴凜.ぅ�リン�◆���)
 フィリップ・セッツァー(第1ヴァイオリン�◆���,第2ヴァイオリン� ��ぁ�
 ローレンス・ダットン(ヴィオラ)
 ポール・ワトキンス(チェロ)

バーバラ・ハンニガン(ソプラノ,� き�&�ぁ�
ベルトラン・シャマユ(ピアノ,��)

2022年8月,ヒルフェルスム音楽センター,オランダ
Alpha Classic ALPHA1000(セッション)


2023年10月で解散すると公表していたエマーソン弦楽四重奏団のラスト・アルバム。このディスクでは,ソプラノのバーバラ・ハンニガンが重要な役割を演じる。このCDに収められた4曲の選曲を主導し,そのうち3曲で独唱を務める。アルバムのタイトル「終わりなき航海(Infinite Voyage)」はショーソンの作品からの引用であると同時に,この弦楽四重奏団の活動は録音などを通じて解散後も影響を与え続けることを示唆しているとも取れる。

カナダ生まれの歌手バーバラ・ハンニガンは現代音楽のスペシャリスト。声楽曲の分野では,2011年の時点で約75曲の現代作品を初演する。また,オペラでも5作品の初演に参加し,その他の現代オペラの意欲的なプロダクションでも,例えばベルクの「ルル」でバレエのようなダンスを披露し,ツィンマーマンの「兵士たち」のマリーで高い評価を獲得している。さらに最近は歌手兼指揮者としてオーケストラのコンサートに出演することも多い。ベルリン・フィルなど超一流のオケを振っている。エマーソンSQはハンニガンと初めて共演したときから,最後の録音に彼女と共演することを決めていたという。

このアルバムでは,シェーンベルクの弦楽四重奏曲第2番を核にして,彼の弟子といえるベルクの弦楽四重奏曲Op.3,ヒンデミットの「メランコリー」そしてショーソンの「終わりなき歌」を収録する。いずれも,おおよそ調性音楽から無調への移行期に書かれた作品ばかり。作曲家の比較的若い時期に書かれた作品が多く,どの曲も美しい。無調で書かれた音楽の中に,後期ロマン派の音楽美を見出したかのようだ。この弦楽四重奏団が関心を寄せていた音楽,あるいは彼らの出発点とも考えられる。

ヒンデミットの「メランコリー」(1919)は,弦楽四重奏の伴奏によるソプラノのために書かれた声楽曲。4曲で構成され,詩はクリスティアン・モルゲンシュテイン。

この作曲家の音楽を聴いてしばしば感じるメカニカルで無機的な印象を受けることは少ない。声楽がリードする音楽だからなのかも知れない。それ以上に作曲家が20代で書いたことも関係しているのかも。なんといっても,ソプラノと弦楽四重奏の解釈がロマン派寄りだからでしょう。ロマン主義からの脱却を目指す新即物主義的傾向は萌芽状態。

ベルクの「弦楽四重奏曲 Op.3」(1910)は3楽章の弦楽四重奏曲。これも作曲家が20代の半ばに無調的技法で作曲した音楽。

無調で書かれた音楽だが,「メランコリー」と比べると耳によく馴染む。個人的な偏向や嗜好だと言われればそれまでだが,ヒンデミットよりも深みがあり落ち着いた音楽にきこえる。この順番で聴くと音楽的に充実した作品であることがよくわかる。

ショーソン(1855〜99)は「終わりなき旅」を最晩年の1898年に作曲した。タキストはC.ソロの詩。オリジナルはソプラノと管弦楽のための作品だが,このCDで伴奏を担当するのはピアノと弦楽四重奏。

調性音楽そのものといった響き。しかも,まぎれもないフランス・シャンソンの伝統を色濃く引き継ぐ。「終わりなき旅」はショーソンの歌曲の中でも傑作かもしれない。ベルトラン・シャマユのピアノがまた素晴らしい。この味わいはフランスのピアニストでなければ表現できないような気がする。ウィーンのオーケストラが演奏するウィンナー・ワルツのまねをできないように。

シェーンベルクの「弦楽四重奏曲第2番」(1908)は作曲家が30代半ばに書いたソプラノと弦楽四重奏のための4楽章の作品。ちょうど無調を試み始めた時期に一致する。ソプラノによる歌唱が加わるのは第3楽章と第4楽章のみ。両楽章ともゲオルゲの詩をテキストにし,前者は「連禱」後者は「忘我」を用いる。

調性から無調への変化を一曲の中に凝縮したような音楽といえそうだ。曲の後半に無調的な色彩を強めるに従い,人間の感情の表現が一層深まり,より的確になったように感じる。シェーンベルクが調性音楽に限界を感じて,無調による音楽を追求し始めた動機が手に取るようにわかる気がする。袋小路に迷い込んだ音楽を救い出すというより,世紀末になってウィーンの作曲家は無調のような手法でなければ表現不能な対象に直面した結果なのかも知れない,この演奏を聴いてそんなことを考えた。

「終わりなき旅」というアルバム・タイトルはエマーソン弦楽四重奏団がこれからも与え続けるであろう影響を指しているのかもと冒頭に書いた。だが,どうやらそれだけではなさそうだといま気付いた。つまり,音楽そのものがたどり続ける旅路がこれからも無限に続くという意味合いも込められているのではないだろうか。
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