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2022年12月25日11:33

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ロット:『交響曲第1番』(フルシャ&バンベルク交響楽団)

【収録曲】

1 ロット: 交響曲 第1番 ホ長調
2 マーラー: 花の章
3 ブルックナー: 交響的前奏曲 ハ短調 WAB297

バンベルク交響楽団
ヤクブ・フルシャ(指揮)

2021年9月30日〜10月2日(1),12月22日(2),2022年3月14日(3),
ヨゼフ・カイルベルト・ザール,バンベルク・コンサート・ホール
DG 4862932(セッション)


これは,まだほとんど知られていない作曲家ハンス・ロットの交響曲第1番をメインに,この作品に関連するマーラーの花の章(交響曲第1番)とブルックナーの交響的前奏曲を組み合わせたCDです。このディスクを聴くまでロットという作曲家のことは何も知らなかった。しかし,近年,彼に注目する愛好家が増えつつあるらしい。4年くらい前のこと,同じ時期に複数の在京オーケストラがロットの作品を取り上げて話題になったという。

このCDを制作するきっかけは,バンベルク交響楽団の首席指揮者であるフルシャが演奏会で取り上げるブルックナーの交響曲第4番に関連する情報をネットで探していたとき,ハンス・ロットという作曲家の名前に偶然行当たったこと。少し気になってオンライン上で音源を再生してみてとても気に入ってしまったそうだ。ついにスコアを取り寄せ,コンサートでもロットの作品を演奏することに。そしてついにロットの代表作ともいえる交響曲第1番のレコーディングを完成させた。

ロット,マーラーそれとブルックナーはウィーンで繋がる。19世紀後半,ブルックナーはウィーンでオルガニストとして,またウィーン音楽院の教授として奉職していた。ハンス・ロットはウィーン音楽院でブルックナーに師事する。作曲科の教授は学生の才能に注目し,「将来,偉大な仕事を成し遂げるだろう」と絶賛する。マーラーはロットの同級生だった。しかし,ロットが25歳のとき,アンチ・ブルックナー派のブラームスから非難されたことがきっかけで自ら命を絶ってしまう。

早逝した天才,ロットはあまり多くの作品を残しておらず,交響曲第1番が彼の代表作とされているようだ。この作品はマーラーやブルックナーの創作活動に影響を与えた。ロットの交響曲第1番に遅れて完成したマーラーの交響曲第1番,とりわけ後に削除された「花の章」にはロットの交響曲の強い影響がうかがわれるという。さらにブルックナーの交響的前奏曲もロットの第1番の影響が刻印されているとのことだ。ちなみに,マーラーの花の章もブルックナーの交響的前奏曲も,一度はスコアは失われたと考えられたものの,前者は1950年代,後者は今世紀に自筆稿が発見された。

このCDが届いて,何度か通しで聴いたとき随分似た音楽が並んでいるなという印象を持った。ロットの交響曲はマーラーやブルックナーの作品とは微妙に違うものの,酷似しているところが少なくない。4つの楽章で構成されるロットの交響曲第1番は,大づかみに言えば静かな曲調の第1楽章と第2楽章はブルックナー風で,ダイナミックな第3楽章と第4楽章はマーラーの交響曲の似ている。もちろん,同じ楽章の中にも静と動が併存していて,それらが脈絡を無視したかのように交代する様子もマーラーやブルックナーの管弦楽作品に酷似している。メロディーラインを重視して書かれた箇所ではR.シュトラウスを彷彿とさせる音楽が聴こえてくることも稀ではない。

とはいえ,ロットの音楽は聴けば聴くほどマーラーやブルックナーとは異なる人物によって書かれたという気持ちになる。音を連ねて作るメロディーラインや和音を集積させる響きの作り方がマーラーともブルックナーともどこか違う。とても良く特徴をつかんで書いているものの,地声の持つ特徴が作曲の先生や同級生とは違うのである。それが透明で澄み切った静かな音楽でも,ややテンポの速いフレーズでも,クライマックスへと続くダイナミックなフィナーレでも,そこかしこで感じられる。おそらく消そうとしても消えないロットの個性の萌芽なのだろう。

たしかに,ハンス・ロットはマーラーやブルックナーの交響曲へと繋がる書法を探りあてた作曲家の一人と言って差し支えない。専門家はロットのこうした先見の明を評価し,愛好家も後期ドイツ・ロマン派の先駆的なもう一つの音楽を歓迎しているのかも知れない。しかし,個人的には25歳で世を去ったこの作曲家がこれほど完成度の高い音楽を書いたことに驚く。彼が残した作品は習作の域を出ていないと評価されているようだが,ワーグナーが基礎を作ったドイツ・ロマン派の音楽を自分なりに消化吸収し,自らの個性を核にして比較的完成度の高い作品を書いた早熟の天才という印象が強い。

そして,このCDを聴いていて,もしロットの交響曲第1番をホールで聴く機会を与えられたならば,もっと感動するかも知れない,などと考えた。
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