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2022年04月16日16:44

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J.S.バッハ:「リュート作品全集」(マスカルディ)

【収録曲】

J.S.バッハ

CD1
 1 組曲 ト短調 BWV.995
 2 前奏曲,フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV.998
 3 前奏曲 ハ短調 BWV.999
 4 組曲 嬰へ短調(原調 ホ短調)BWV.996
CD2
 5 パルティータ へ長調(原調 ホ長調)BWV.1006a
 6 パルティータ ハ短調 BWV.997
 7 フーガ ト短調 BWV.1000

エヴァンジェリーナ・マスカルディ(バロック・リュート)
(リュートはセザール・マテウス(ニュージャージー)によるコピーで,1999年・2010年製作と2020年製作)

録音:2020年2月29日〜2021年5月29日,アカデミア・モンティス・レガリス,イタリア,2021年9月15日,オルテ司教館,イタリア(CD2の5)
Arcana: A529(セッション)


バロック・リュートによるJ.S.バッハのリュート作品全集を聴く。全集の内訳は「組曲」が2曲,「パルティータ」2曲,「前奏曲,フーガとアレグロ」,「前奏曲」,「フーガ」が各1曲の合計7曲。「組曲」と「パルティータ」の違いは,「組曲」が当時の標準的な楽章を備えているのに対し,「パルティータ」は標準からは少しかけ離れている組曲をいうとのこと。これらには,無伴奏チェロ組曲第5番(組曲ト短調 BWV.995),無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番(パルティータ ホ長調 BWV.1006a)と無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番の第2楽章(フーガ BWV.1000)から編曲された作品も含まれている。

演奏するのはエヴァンジェリーナ・マスカルディ。彼女はイル・ジャルディーノ・アルモニコやゼフィールなど有名古楽アンサンブルで通奏低音奏者をつとめる。また,ソリストとしても活動しており,「カスタルディ作品集」,「サン=リュック作品集」,「スペイン黄金時代の音楽」などのCDもリリースしているそうだ。

この全集では1曲を除き全作品を同じ場所で録音している。おそらく,アカデミア・モンティス・レガリスのアコースティックが「パルティータ へ長調 BWV.1006a」にそぐわないと判断したからなのだろう。また,BWV996とBWV.1006aは運指上・調性上の問題が多い作品とされており通例どおり移調した上で弾いている。この2曲はリュートに近い音のチェンバロのために書かれたという説もあるという。

バッハのリュート作品集といえば,以前ジョン・ウィリアムズがギターで弾いたCDを聴いたことがある。しかし,どうしても好きになれなかった。ギターの音色がリュート音楽にふさわしくないと感じたのが主な理由。それ以来バッハのリュートのための作品をリュートの演奏で聴いてみようと決めていた。そう考えていた矢先にこのディスクの発売を知り,購入を即決する。

楽器の音色に関して不満はない。このCDを聴いていると,周囲とは別の時間が流れているような気がする。そして演奏法は極めてオーソドックスであり,先鋭を究めたような弾き方とはかなり距離を置いているようだ。ロマン主義の名残りさえ感じられる演奏でもある。もう少し何かにチャレンジするような演奏を試みてくれたら申し分ないのだが。もっとデフォルメを多用して,自己主張を行なっても構わないのではないかと思う。チェンバロ奏者で言うと,レオンハルトよりもヴァルヒャに近いような演奏を繰り広げてくれるリュート奏者である。

CD1とCD2を比べると,後者の方が好みに合っているようだ。CD2に収められて演奏の中でも,1曲目の「パルティータ へ長調 BWV.1006a」が気に入っている。この曲の演奏はグスタフ・レオンハルトのように少し尖った演奏のようにきこえる。他の作品の演奏が草書体だとすると,「パルティータ へ長調 BWV.1006a」は行書体の演奏といっていいだろう。メリハリがしっかりと利いた折目正しい演奏であることはもちろん,この曲に対して奏者が抱くイメージをなんとしてでも聴衆に届けたいという強い思いが込められているようだ。おしなべてCD2の方がCD1よりも強い表現意欲に支えられてた明晰な演奏だ。

率直に言って,理想とする「リュート作品集」とは言い切り難いものの,聴いていて違和感を覚えるCDでもない。これからバッハのリュート音楽を聴きたくなったら,このディスクを取り出すことにする。
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