【プログラム】
1 シューベルト: 劇音楽「ロザムンデ」D797 序曲
2 ベートーヴェン: ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.19
3 ストラヴィンスキー: 管楽器のための交響曲(1947年版)
4 シューベルト: 交響曲 第5番 変ロ長調 D485
(アンコール)
エリーゼのために(ピアノ独奏)
シューベルト交響曲第5番から第2楽章(オーケストラ)
伊藤 恵(ピアノ)
札幌交響楽団(管弦楽)
広上 淳一(指揮)
2020年9月26日(土),14:00開演,札幌コンサートホール
今回は札響の9月定期演奏会について。
新型コロナウィルス感染症の流行拡大に伴い,3月から3回にわたり定期演奏会の中止を余儀なくされた。ようやく9月から再開にこぎつけたものの,新型コロナの影響は決して小さくない。
まず,3密を避ける必要上,当初予定していたブラームスの「ドイツ・レクイエム」がシューベルトの「ロザムンデ」序曲,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番,ストラヴィンスキーの管弦楽のための交響曲,シューベルトの交響曲第5番へと変更になった。この変更を決定したのは首席指揮者のマティアス・バーメルト。しかし,彼自身の入国がかなわず広上淳一氏が指揮台に立つこととなった。
さらに,ソーシャル・ディスタンシングを確保するため横一席おきに空席とすることとされ,入場者数は最大でも満席状態の半分にまで制限されることとなった。この措置に伴い,札響の定期演奏会の座席変更にも応じることとなった。以前は1階席最後列中央で聴いていた。しかし,今回と次回は2階席最後列中央からやや左寄りの座席へと変わった。一席おきに空席とされることで,ホールは超満席になるかと思いきや結構空席が目立つ状況だったのは意外。
札響定期の再開が,他の国内オーケストラと比べて一歩遅れてしまった感がある。コロナ禍の直撃を受け早々に取り止めとなった,パシフィック・ミュージック・フェスティヴァル(PMF)が予定されていたため,7月と8月は札響の定期の予定が入っていなかったことが最大の要因だ。とにかく,コンサートを聴くことが出来るようになったのは喜ばしいことである。とはいえ,ある種の寂しさが支配する札響の9月定期だった。聴衆の入りが芳しくないうえ,いつもと違う座席で聴いたことも関係しているかも知れない。
オーケストラの音量は,どの楽器もいつもより若干上がっていたのではないだろうか。コンサート開始直後,わずかばかり強めに弾かれた音に僅かな違和感を持った。客席ばかりかステージ上でも演奏者間の距離がいつも以上に離れている。音の密度が低下することを防止するため,普段より若干音量を大きくして演奏していたように思う。ステージに並んだ団員たちも半年以上のブランクのため,多少勝手が違う可能性も否定できない。もちろん,この日の指揮者,広上淳一の要求に従った結果かも知れない。座席が後方に退いた影響も小さくないだろう。とにかく,このオーケストラの持ち味ともいえる精妙な響きが,素朴なサウンドに変わっていたことに少し驚いた。
シューベルトの「ロザムンデ」序曲は,この作曲家の作品の演奏にしては,何かザラついた感触がする。その意味で,あまりシューベルトらしくない演奏だった。もともと,こんな感じの音楽なのだろうか。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番は,ピアノ独奏の伊藤恵の個性全開の演奏だった。特に目立ったのは,レガートに拘っていた点。曲全体を美しいレガートでまとめげるというソリストの意思に貫かれていた。美しい演奏だったものの,ひと時代前のロマンチシズムのような感触が伝わってくる。
休憩後の第1曲目,ストラヴィンスキーの管楽器のための交響曲は,プログラムの変更に伴い出番が減った管楽器セクションの出番を確保しようとするバーメルトの配慮だろうか。金管と木管,合わせて23の楽器がステージに並ぶ。どの管楽器も健闘していた。ソロのテクニックの面でも,アンサンブルの緻密さの面でも秀でた演奏である。このオーケストラの優れた一面を遺憾なく発揮したストラヴィンスキーだった。どの奏者も自信に満ちており,その上,楽しんで演奏していた様子が印象に残る。
演奏会の最後を飾るシューベルトの交響曲第5番では,「ロザムンデ」序曲と異なりシューベルトらしさが戻って来る。この作曲家らしい透明感や瑞々しさが伴う演奏である。この曲が持つシンプルで引き締まった構成も見事に再現されていた。何より,この曲のチャーミングなところが実によく出ていた演奏である。古典派的な均整とロマン派的な色彩感が程よくバランスしているのも魅力である。
憶測に過ぎないが,指揮者の広上淳一もバーメルトが決めたプログラムを振るのは多少抵抗感があったのではないだろうか。広上にしては感情移入が少なく,なんとなく安全運転だったような印象。複雑な事情を承知の上で,指揮を引き受けたのかも。
9月定期演奏会を聴いて,旧に復するにはまだ時間を要することを痛感する。オーケストラの響きに関しては,ある程度日数が経過すれば復調するだろう。一方,果たして入場者数が元に戻るまでにどれくらいの時間がかかるのか。そもそも,以前と同じだけの聴衆を集めることが可能なのだろうか。聴く側の気持ちも,以前と現在と同じとは言えない。
とにかく,様々な障害を乗り越え,ようやく定期演奏会を開催することができたことがひしひしと伝わって来た。
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