mixiユーザー(id:7846239)

2018年01月28日18:17

276 view

小菅優のモーツァルト・ピアノ協奏曲第24番(札響定期)

【プログラム】
 1 ラウタヴァーラ: 鳥と管弦楽のための協奏曲「極北の歌」(1972)
 2 モーツァルト: ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
          *****休憩*****
 3 メンデルスゾーン:交響曲 第3番 イ短調 op.56「スコットランド」

(アンコール)
 メンデルスゾーン:無言歌集より「ヴェネチアの舟歌第3番」(ピアノ独奏)

 小菅 優(ピアノ)
 札幌交響楽団
 マックス・ポンマー(指揮)

2018年1月26日(金),19:00開演,札幌コンサートホール


札幌交響楽団第606回定期演奏会を聴いてきた。小菅優を独奏者に迎え,首席指揮者のポンマーがタクトを執る。全部で2回行われる定期演奏会の第1日目とあってか,どこか生煮え感が残る。

1月定期の白眉はモーツァルトのピアノ協奏曲第24番でしょう。非凡な才能の小菅が,モーツァルトとしては大編成のオーケストラを伴う,また当時としては前衛的でもあった作品をどう料理するのかに関心が向く。

2010年から2015年にかけて行ったベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会で絶賛を博した,小菅優が弾くモーツァルトのピアノ・コンチェルトは逸材の名に恥じない演奏だった。まず,多様なニュアンスが込められた重量感のあるピアノのタッチが素晴らしく,まさに第24番のコンチェルトの演奏には極め付きの響きだ。また,落ち着き払った態度から生まれるテンポの設定も絶妙で,聴く側も彼女に全幅の信頼を寄せて身を委ねることができる。なにより,この作品の演奏が小菅優のペースで進んだことが,秀でた彼女の才能を何よりも雄弁に物語る。

ただでさえ内向的な傾向の強いこの短調のピアノ・コンチェルトに,小菅優はさらに内省的な趣を付け加える。モーツァルト風の華やかさや弾むような側面は控えめに扱い,かといってパセティックな表情を強調するでもない。あくまでも,作品をして語らしめることを最優先したかのような演奏だ。そうなると,かえって小菅優の音楽的な才能が際立つ。料理でいえば,食材の持ち味を十全に花開かせた一品にシェフの腕の冴えみるようなものだろうか。

一般に流布したピアノ協奏曲第24番のイメージと比べて,起伏に乏しく華麗な響きも稀薄な演奏ときこえなくもない。ドラマチックだったりエレガントなモーツァルトを求める向きは失望したかもしれないが,小菅優のピアニズムに期待した人たちは大いに満足したのではないだろうか。もちろん,彼女のピアニズムには作品の核心に深く切り込むという要素も含まれる。たとえ,それがステレオ・タイプと違っていても。

この作品の演奏に関して特筆すべきもう一つの点は,札響の木管セクションの充実ぶりである。モーツァルトにしては珍しく,この作品にはオーボエとクラリネットの両方が使われ,とりわけ第2楽章では木管楽器に準独奏的な役割が与えられている。このラルゲットの楽章では,フルート,オーボエ,クラリネット,ファゴットが,美しいソロとアンサンブルを披露するなど,進境著しい札響の木管セクションによる成熟した演奏を聴くことができた。

この日,首席指揮者のポンマーは,演奏会の1曲めにラウタヴァーラの「鳥と管弦楽のための協奏曲『極北の歌』(1972)」を選んだ。エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928〜2016)はヘルシンキ生まれのフィンランドの作曲家。シベリウス・アカデミーで学んだのち,アメリカでコープランドなどに師事する。「カントゥス・アルティクス(極北の歌)」は1972年に書かれたラウタヴァーラの代表作のひとつとで,管弦楽のサウンドに小鳥の鳴き声を取り入れた20分足らずのユニークな作品(環境音楽や偶然性の音楽などに影響を受けたのか)。曲は3楽章構成で,第1楽章は「湿原」,第2楽章「メランコリー」,第3楽章「白鳥が渡る」という題名がついている。ラウタヴァーラは「北の湿地にテープレコーダーを持参してさまざまな鳥の声を採集し,極北の鳥たちをソリストのように扱って幻想的な美しい世界を生み出した」とプログラムの曲目解説にある。

通常の管弦楽と録音された鳥の声に加え,ハープやチェレスタ,銅鑼などが用いられ,スカンジナビアの冷え込んだ空気,針葉樹の静かな森,深く切れ込んだフィヨルドなど雄大な自然を彷彿とさせる作品である。冬の定期演奏会に打って付けの作品で,この種の曲目は札響はお手の物。

メンデルスゾーンの「スコットランド」も札響の十八番かと思いきや,意外にも苦戦していた。ドイツ風の重厚さや力強さを過剰に表現しようとしたことが苦戦に繋がったのでは。曲が進むにつれ,粗さが目立つようになり,オーケストラが息切れしかけているような印象だ。もっとサラッと演奏すれば,自分たちの弱点を晒さずに済んだものを。

土曜日の昼公演がどうだったかは承知していないが,金曜日の夜公演を聴く限り,1月定期で取り上げた曲目の演奏の成熟度が足りず,少し生硬なままで演奏会当日を迎えたような印象である。特に「スコットランド」は演奏の途中で歯車が狂ったのか,精緻さや清澄さが稀薄で札響の「スコットランド」らしくない。モーツァルトのコンチェルトでも,ピアニストに合わせることに注意が行ってしまい,オーケストラにもう少し自己主張があれば音楽の造形により幅が出たはず。「極北の歌」の初演が重荷になったわけでもないだろうに。

3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年01月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031