商品化に至らなかったEVベンチャーが見た死の谷
元シムドライブ社長の清水浩・慶大名誉教授に聞く
庄司 容子
2018年1月19日(金)
EV(電気自動車)には大手自動車メーカーのみならず、英ダイソンのように異業種やスタートアップからの新規参入が相次いでいる。だが、資金力や開発・生産体制が乏しいスタートアップにとっては、EV参入はそう簡単ではない。それを端的に示すのが、2009年に設立されたSim-Drive(シムドライブ)だ。
シムドライブは17年6月、1台のEVも量産することなく清算した。同社を社長として率いたのは、30年以上、EVの開発を続けてきた慶応大学名誉教授の清水浩氏。当時、ベネッセコーポレーション会長兼CEO(最高経営責任者)だった福武總一郎氏やガリバーインターナショナル(現IDOM)などから出資を募り、シムドライブを設立した。現在、清水氏はEVの研究開発コンサルティングなどを手掛けるe-Gle(川崎市)を立ち上げ、社長を務めている。EV開発の先駆者である清水氏に、ベンチャーがEVを商品化する難しさを聞いた。
英ダイソンなどの異業種や、数多くのスタートアップがEVに参入しようとしていますが、そもそも、EVの開発や生産は大手自動車メーカーでなくてもできるのでしょうか。
清水浩・慶應義塾大学名誉教授、e-Gle社長(以下、清水氏):クルマは、自動車会社じゃないと作れないというのは、必ずしも当たっていません。自動車会社にいた人が集まれば作れます。
私は2009年9月に設立したシムドライブで、大手自動車メーカーや、電機メーカーをリタイヤした人たちと若い連中の混成チームで開発に取り組んでいました。コンセプトがはっきりしていて、自動車メーカーや電機メーカーにいた人が集まれば、きっちりしたクルマを開発することはできます。これは私の経験上、明確に言えることです。
シムドライブでは2010年1月に最初のEVのプロジェクトを始めました。そこから始めて1台目の試作車ができたのが、11年3月です。2号車を作り始めようとしたときに震災があって、5月から作り始めました。その試作車は12年3月までにはナンバーを取得することができました。つまり、全くゼロから作ったとしても、試作車はだいたい1年くらいで作れるということです。
エンジン車よりだいぶ早そうですね。
清水氏:もちろん、そこまでにモーターの開発をしたり、エリーカ(注:清水氏が慶大教授として04年に完成させたEV)を作ったりした経験があったので、どうやればいいかという知識はありました。ただ、いずれにせよ、実際に開発に携わっていた人たちは自動車メーカーか、電機メーカーの出身者です。
シムドライブでは、EV開発に関心のある企業と共同で試作車を作るという事業をしていました。例えば「インホイールモーターで作り、居住空間を大きくする」などのコンセプトを、5週間くらい議論してまとめる。それが決まったら、シムドライブの技術者が中心になって作り始める、というサイクルです。4台の試作車を作りました。
試作から量産までには「死の谷」がある
順調に試作車ができたのに、なぜ量産や製品化に至らなかったのですか。
清水氏:そこが難しいのです。
経営論で言えば、私は試作車を作ってナンバーまで取ったし、「魔の川」は渡りきりました。ですが、「死の谷」は越えられなかったのです。
どういうことかと言うと、アイデアを試作品に作り上げるまでが「魔の川」で、その試作品から製品に仕上げるのが「死の谷」です。製品化というのは、信頼性・耐久性・安全性の証明が必須です。ここが、EVにおける「死の谷」なんですね。
「死の谷」は一見すると分からない。だから試作品と「死の谷」を渡った後のクルマは、見た目は同じに見えるでしょう。けれども、商品になるのは信頼性、耐久性、安全性を証明できたものだけなのです。
なぜ、シムドライブではそれができなかったのですか。
清水氏:一言で言えばカネです。試作品を作るのに、例えば10億円かかったとして、その信頼性、耐久性、安全性を証明するだけで、200億〜300億円はかかります。
大量のクルマを作って衝突試験や走行テストをする、設計をもっと洗練させて量産に適したものにする、値段を考えてより合理的に作れるようにする・・・・・・。そういうプロセスが、量産化への道です。カネと時間をかければ、そこは証明していけますが、それができなかった。
私はずっとやってきたけれど、いつも「魔の川」まではうまくいって、「死の谷」に足をかけようとしたが、渡ることはできませんでした。資金を集められても、せいぜい1回10億円程度なんです。それでできるのは試作車レベルなんですよね。だから私の作ったクルマは1台もまだ、商品になっていないのです。
テスラにはカネがあった
資金力がモノを言うのであれば、経営資源が潤沢な大企業はやろうと思えばEVを作れそうですが、ベンチャーではなかなか難しそうです。
清水氏:結局そこなんです。なぜ、米テスラだけが成功したのか。それは、ふんだんにお金があったからだと思います。米カリフォルニアの環境規制が後押ししたという背景は大きかったのかもしれませんが、数百億円の資金を集めることが、それほど難しくなかった。
本当にEVをビジネスにできるかどうかは、「信頼性、耐久性、安全性の証明にカネがかかる」ということの認識があるかどうかがポイントでしょう。テスラにその認識があったかどうかは別として、そこに投じるカネが現実にあったので、商品化までできたということですね。
ダイソンのEV参入をどう見ていますか。
清水氏:少なくともモーター技術は扇風機と、掃除機で世界中のお客さんのニーズに応えてきている。そういう意味でモーターを使った機器に対しては自信も能力もあるでしょう。
時代の流れを考えれば、次の商品としてEVを狙ってくるのは不思議ではありません。あとは、自動車メーカーとのしがらみがないことが強みでしょうね。
EV開発に20億ポンド(約3000億円)を投じると表明していますから、資金もありそうです。
清水氏:今までの商品で蓄積があると思うし、今どきは投資してくれる人も多いでしょう。自動車の耐久性の証明が家電と違うことも、十分に分かっていると思います。
現在、清水さんが社長を務めるe-Gleでは、どのような事業をしているのですか。
清水氏:新しいモーターやインバーター、リチウムイオン電池の開発のほか、インドでEVを開発したいという企業家から声がかかっています。昨年12月には我々のEVをインドで展示しました。
私は、EVを開発してきた人生が今ここで終わってしまうか、終わらないかの瀬戸際のような状況にいるんです。再び、EVを開発したいですね。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011100194/011100004/
日本で苦しんでるのが三菱の国産ジェット機です。
飛ばせても商品化のための安全性テストが車よりも厳しいのでなんども設計変更を余儀なくされています。
それでも商品化が進められるのは三菱財閥の資本力があるからです。
日本のテスラこと清水氏は資金力不足で撤退したと言っています。
しかし、大量生産するには生産技術の蓄積が必要です。
英ダイソンは例外ですが、EV新規参入者の多くは製造業にも新規参入で、死の谷の怖さを知りません。
マスゴミにチヤホヤされていたテスラも青色吐息状態です^^;
日本の投資家の方がテスラに金出したベンチャーキャピタルよりも賢明じゃないかなw
電池には寿命がありますし、充電する設備が充実していません。
原発数十基分の発電設備も必要です^^;
米国では年間1700万台の新車が購入されてますが、EVはどの会社の製品も売れていません。
世界中の政府がEVに熱心ですが、燃費の良いガソリン車やディーゼル車、ハイブリット車が主流であり続けるでしょう。
一番懸命なのは自動車を購入する消費者だったりしますw
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