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2016年10月29日18:15

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秋の夜はブラッドベリを読む

中・高生の頃はSF少年だった。
ありがちだが小6の時に星新一を読んだのをきっかけに筒井康隆や小松左京などを知り、ほどなく海外のSFを読むようになった。アシモフやアーサー・C・クラークなどの古典SFからディックやギブスンのサイバーパンク黎明期あたりまでハマって読んだ。
今は情けないながら全くと言っていいほど読んでないのだが、今でも書店でふとハヤカワ文庫の水色の背表紙を見たりすると胸がときめく(笑)

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そんな中でも、今でも定期的に読みたくなる作家が一人だけいる。
特に今のような秋が深まる時期になると特に。
それはブラッドベリだ。

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レイ・ブラッドベリ。
名前くらいは知ってる人もいるだろう。
1920年 アメリカ、イリノイ州生まれ。2012年没。
40年代から作品を発表し始め、50〜60年代に多くの名作を残した。日本では60〜80年代に特に多く読まれた印象があるけど、本人は2000年代くらいまで旺盛な執筆活動をしてたんだよね。

タイトルだけでも挙げていくと。
「華氏451度」「火星年代記」「たんぽぽのお酒」「何かが道をやってくる」・・・
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これは長編。短編だと、
「黒いカーニバル」「太陽の黄金の林檎」「10月はたそがれの国」「刺青の男」「ウは宇宙船のウ」「スは宇宙(スペース)のス」「よろこびの機械」・・・
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※これは僕が当時文庫で読んだときの装丁。現在は全部変わっている。すごくオシャレな装丁になっている(笑)

ああ・・・タイトルを書いただけでブラッドベリ・ワールドに引き込まれそうだ。
そう、彼の作品はタイトルも素敵なんだ。というか、これは翻訳家のセンスがよかったというべきか。
うん、そうだな。ブラッドベリの作品を訳す際にはそれなりのセンスがいると思う。正直、翻訳家によって微妙に味わいが違うんだよね。

しかし、僕は幸運だったというべきか、最初に読んだブラッドベリが最高だった。
これだ。

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「火星年代記」1950年発表(ハヤカワ文庫)訳:小笠原豊樹
26の短編が連なって、それがひとつの長編となっていくという形式も初めてで新鮮に感じたけど、なによりもハマったのはブラッドベリ・ワールドとしか言いようのない詩的で繊細な抒情的語り口。アメリカの作家のくせに非常にウェット。それでいてところどころに非常にブラックでシニカルな展開や結末があったりする。でも、全体を読んだ後の壮大なスケールのデカさに読後しばらく呆然とした記憶がある。
星製薬の社長だった星新一がこれを読んで感銘を受け、SF作家の道を志したという話しもうなずけるSF小説の金字塔だ。

ここからブラッドベリ作品をむさぼるように読み始める。
そしたら、どちらかというと長編よりも短編のほうが面白い傾向があることに気付いた。(さっきの「火星年代記」も長編ではあるけれど、ひとつひとつの短編が独立して完成しており、それが最終的にひとつの作品になっていく)

僕が読み始めた70〜80年代の頃、彼の短編集は、数多く出ていたんだけど、それらは収録作品が重複しているものが多くて、最初どれを読んだらいいか迷った。
で、いろいろ悩んだ末選んだのがこの1冊。

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「刺青の男」1951年(ハヤカワ文庫)訳:小笠原豊樹
同じタイトルでストーンズのアルバムがあるけど全く関係ない(笑)
いやぁ、今から考えてもこれを最初に選んでよかった。18編すべてが良いわけではないが、ブラッドベリの短編と言えばコレと言われるくらいの「万華鏡」や「宇宙船乗組員(ロケットマン)」が収録されている。

ちょっとストーリーを紹介すると、

●「万華鏡」
ロケットが爆発して、乗組員たちは宇宙空間に投げ出されてしまう。宇宙服の酸素が切れるまでの残り少ない時間、彼らはインカムで会話を続ける。やがてある者は月にぶつかり、ある者は流星群へ飲み込まれたり、漆黒の宇宙の闇の中へ消え去っていく。そんな中、主人公は地球へ向かっている。大気圏で燃え尽きてしまうだろう。彼は自分の人生を考え始める。楽しい思い出がひとつも無かった。自分は誰かに何もしてやれなかった。万華鏡のような流星群を眺めながら彼は思う。意味のない人生を送った自分でも何かひとつ善なることができたら・・・地上へ落下するときに灰のひとつにでもなって大地を肥やすことができれば・・・と。
田舎の道を歩いていた少年が、空を見上げて叫んだ。「あ、お母さん、見てごらん!流れ星!」母親が言った。「願いごとをおっしゃい」

●「宇宙船乗組員(ロケットマン)」
少年は母と二人暮らし。宇宙飛行士の父親は宇宙へ出るとめったに帰ってこないのだ。たまに帰る父親に少年(主人公)は憧れを持つが母は複雑な思いを持っている。もう危険な仕事はやめて家で過ごして欲しいのだ。母は少年に今度こそ父を引き留めてくれと頼む。父は何度もこの仕事をやめようとするが宇宙の魅力に勝てない。休暇を終えるとまた宇宙へ発ってしまった。いつものように「これを最後にする」と言って。母は「もし、あの人が火星で亡くなったら私は火星が空に見える日は空を見ることはできない。金星で命を落としたらやはり金星を見ることはできないでしょう」と泣く。次の日、電報が届く。父が死んだのは火星でも金星でもなかった。宇宙船は太陽に落ちたのだ。それから少年と母が外出するのは夜か雨の降る日だけになるのだった。


まあ、あらすじだけ書いたってしょうがないんだけどさ。
でもこれが彼の流麗な文章にのって表現されるとたまらないのだ。この世界のとりこになるというか。やみつきになる。小笠原豊樹さんの翻訳がまたいいんだ。ブラッドベリの作品っていろいろな人が訳しているんだけど、僕は小笠原:訳がいちばん。というか最初に読んだ訳のものがやっぱりいちばんしっくりくるんだよね。「火星年代記」もこの人。

そういえば「万華鏡」は漫画「サイボーグ009」に似たエピソードがあって、明らかに石ノ森章太郎は影響されたと思う。「宇宙船乗組員」は後に萩尾望都がマンガ化した。これもすごくよくて意外にブラッドベリ作品と萩尾望都の作風は相性がいいなと思ったものである。
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あと、僕は小説を読むとき、どちらかというと短編のほうを好んでしまうんだけど、それはブラッドベリの影響かもしれない。
映像だって「ヒッチコック劇場」や「トワイライトゾーン」みたいな短い話しが好きだしね。

そんで、ミュージシャンにもブラッドベリの影響を受けた人は多くて、例えばこの人。


https://www.youtube.com/watch?v=-LX7WrHCaUA
「ロケット・マン」(エルトン・ジョン)
そのままズバリ。さっき書いた「宇宙船乗組員」からインスパイアされて書いた曲だそうだ。

意外とこれもなんだよね。

https://www.youtube.com/watch?v=FTQbiNvZqaY
「Africa」(TOTO)
短編「草原」からインスパイアされたらしい。ただ、これは歌詞を読んでもほとんど関係ないと思う。原作は無邪気な子どもが引き起こす、もっとブラックな話しだよ。

日本ではなんといってもこの人だ。


https://www.youtube.com/watch?v=VWU7W2sEUUc
「パレード」’76(山下達郎)作詞・作曲・編曲:山下達郎
達郎はブラッドベリのファンということを公言していて、この曲も彼の作品の影響からきていると言っている。たしかにパレードというタイトルはいかにもブラッドベリっぽい。でも、曲調はちょっと明るすぎるね。作風的にはダークで不思議なパレードというイメージがあるから。
それであれば同じ達郎でアルバム「Melodies」収録の「メリー・ゴー・ラウンド」という曲のほうがよりブラッドベリの世界に近い。ただ音源が例によってないので紹介できない。
(「パレード」の音源もこの日記がアップされるまでは削除されませんように^^;)

達郎はもともとSFファンらしくて「夏への扉」なんてハインラインの超有名SFの同名古典をモチーフにして作っている。もともとは盟友・難波弘之氏に提供した曲なんだけど、彼にはもう1曲提供している。これもブラッドベリの短編と同じタイトル。

https://www.youtube.com/watch?v=wQO4ZI0zG-A
「いちご色の窓」(難波弘之)’79 作詞:吉田美奈子、作曲:山下達郎、編曲:難波弘之

あとはユーミンもかなり強く影響を受けていると感じる。

https://www.youtube.com/watch?v=6BbOlxNtY-Y
〜3:28より「りんごのにおいと風の国」(松任谷由実)'79 作詞・作曲:松任谷由実、編曲:松任谷正隆
かなり曲調的にもブラッドベリの世界に近いと感じる。

ユーミンはほかにもそれっぽい曲があるんだよなぁ。
「水の影」とか「経る時」「かんらん車」なんて勝手にブラッドベリ風味だと思っているんだけど(笑)

ああ、また読みたくなってきたな。なんかブラッドベリって秋に読みたくなるんだよね。
やっぱりそれって「十月はたそがれの国」っていうタイトルの作品集があるからかしら(笑)
秋の夜長、たまには昔のSFなど読んでみてはいかがでしょうか?


【おまけ】
ブラッドベリは、なんと日本が世界に誇るアニメにも影響を与えている。
そのアニメの名は、なんと「ポケモン」!
シリーズの中の1作「マサキのとうだい」という話しは、世界に一頭しかいない幻のポケモンが灯台の霧笛の音が仲間の声だと思って現われる…というストーリー。
これ、ブラッドベリの短編の中でも名作と言われる「霧笛」という作品にソックリなんだよね。んで、やっぱりそれは「ポケモン」のスタッフがオマージュとして作ったものらしい。いやあ、こんなところにまで影響を与えるブラッドベリ恐るべし!

https://www.youtube.com/watch?v=XGQxuFQNozc
「ポケモン」エピソード13「マサキのとうだい」

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