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2015年05月23日15:28

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五嶋龍ヴァイオリン・リサイタル2015

【プログラム】
1 ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 「クロイツェル」
2 サーリアホ: 「トカール」
   〜〜〜休 憩〜〜〜
3 フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調
4 ヴィエニャフスキ: 創作主題による華麗なる変奏曲 Op.15

【アンコール】
グルック(クライスラー編曲): 「メロディー」
ハチャトリアン(ハイフェッツ編曲): 「剣の舞」
クライスラー: 「美しきロスマリン」

五嶋 龍(Vn)
マイケル・ドゥセク(Pf)

2015年5月16日(土),16:00〜,札幌市民ホール


札幌コンサートホールが,改修工事のため一時的に休館しているので,五嶋龍のリサイタルは久々の演奏会。この日,1500席の札幌市民ホールは満席だった。たしか,発売即完売に近い状態だったはず。Kitaraがリニューアル中のため公演が少ないことも影響しているだろうが,やはり,五嶋龍が持っている抜群の集客力をまざまざと見せつけた結果とみるべきだろう。

ヴィエニャフスキの「創作主題による華麗なる変奏曲」を聴いていて,五嶋龍は現代のパガニーニではないかと,ふと思った。パガニーニにそれほど詳しい訳ではないが,五嶋龍は超絶技巧を求められる作品で,その実力を遺憾なく発揮するタイプの演奏家だ。そして,その種の作品で,演奏会場を興奮の坩堝と化すことに長けている。アンコールでハチャトリアンの「剣の舞」を演奏した時もそうだったが,とにかく聴いている人たちを煽るのが上手い。ヴィルトゥオージティを駆使して,聴衆を熱狂させる天賦の才を持ち合わせていることは間違いない。

これまで何度となく五嶋龍のリサイタルを聴いてきて,このヴァイオリニストをどう捉えるべきなのか,もどかしい思いをしてきた。だが,彼がパガニーニのようなヴィルトゥオーゾだとすると,すべてのことを明快に説明できるようにこのとき思った。

ベートーヴェンの「クロイツェル」もフランクのソナタも,超絶技巧を駆使して聴衆を興奮させることができない作品ではない。しかし,この2作品では,テクニックに加え人間的な成熟というもう一つの要素が必要なのだろう。五嶋龍の超絶技巧は表面的であり,内面の成熟を伴っていないような気がしてならない。そもそも,ヴィルトゥオージティの追求には非常に熱心だが,人間的に成熟した音楽を演奏することにそれほど大きな関心を払っていないようにさえ感じられる。

だから,「クロイツェル」もフランクのソナタも,技術的には微塵も破綻していないが,大味な演奏ですこしも面白くない。大柄で大味で大雑把な演奏で,技術的には完璧かもしれないが,コクや深みに乏しく,緻密さに欠ける演奏になりがちだ。よく言えば天真爛漫で無邪気な音楽であるが,その演奏で聴衆に何を伝えたいのか,音楽の芯のようなものが感じられない。この日も,鷹揚に構え過ぎて,「クロイツェル」の第1楽章はチューニングが不完全なままの汚れた響きで演奏していたほどだ。

とはいえ,フィンランドの作曲家,カイヤ・サーリアホ(1952〜)の「トカール」は,作品も演奏も素晴らしかった。深い霧に包まれた森林の昼とも夜ともつかぬ光景が拡がる冷涼感あふれる北欧ならではの音楽。調性音楽であるが無調的な要素も色濃く,饒舌とは無縁の深い精神世界が表現されている。もちろん,これは初めて聴く作品だが,それを演奏していたのは,ベートーヴェンやフランク,またヴィエニャフスキを弾く五嶋龍とは別のヴァイオリニストだった。初めて聴く現代作品には感激してしまう質だが,五嶋龍の違う側面を垣間見た思い。

たしかに,現代のパガニーニという捉え方は,基本的に間違っていないのだろうが,それを超えるポテンシャルを秘めている可能性も否定できない。一筋縄では行かない複雑さを持っていることも認めるべきだろう。

余談になるが,札幌市民ホールは,老朽化した札幌市民会館を取り壊した跡に建てられた多目的ホール。収容人員1500人と大きなホールではないが,最新の多目的ホールらしく音響効果も満足できるレベルだ。客席の内装は黒一色で,ある意味異様だが,音楽に集中するには適しているともいえる。

札幌市民会館は,札幌コンサートホールが完成するまで,札幌交響楽団の定期演奏会の会場でもあった。そして,アルバン・ベルク四重奏団とピノック&イングリッシュ・コンサートを初めて聴いた,思い出深い場所でもある。旧式の多目的ホールで,客席内の階段が極端に急だったり,ステージが遠かったり,来場者にとって使い勝手の良いホールではなかったが,音響は不思議とよかったように記憶している。

そして,札幌市民ホールの国道をまたいで向かい側に,旧札幌厚生年金会館の後継となる多目的ホールが建設中だ。完成までには,まだ2年ほどかかるらしいが,オペラの上演も可能な施設だという。竣工の暁には,現在よりもオペラの公演が増えることも期待できる。すくなくとも,オープニングの年には,より高水準の上演に接することができるのではと夢が膨らむ。

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