私たちは、人にいいことをすると暖かくていい気分になります。このことを「ヘルパー・ハイ」と言いますが、このときに生まれる「いい気分」こそストレスを解消し、健康を守るカギとなります。
以下、デビッド・ハミルトン「『親切』は驚くほど体にいい!」(飛鳥新社)を参考にしました。
この「いい気分」のもとになっているのが前頭野から出る「オキシトシン」と呼ばれる神経ペプチドで、最近、「幸せ物質」「愛情物質」などと呼ばれ、注目を浴びてきました。
オキシトシンは他者とのふれ合いによって分泌され、身体的なふれ合いだけでなく、心のふれ合いでもよく、親切な行為はとくに効果的です。
★見ず知らずの人へ花を贈ったら、人は喜ぶかどうかについて実験した研究者があります。
無作為に選んだ122人に花を贈り、その反応を確かめてみたところ、なんと全員が「うれしかった」と答えたそうです。とくに女性のほうが大きな喜びを感じました。
親切は人に喜びを与え、私たちが気持よく暮らすための潤滑油だということです。
次に、「いいことをする」をするときに出るオキシトシンの効果について、いろいろ調査されています。
★2006年に「幸福ジャーナル」という専門誌に、興味深い研究結果が発表されました。
119人の日本女性を対象にしたその実験では、親切行為を数えるだけで幸福感が増すことがわかったのです。
対象者のうち71人に、他者への親切行為を毎日ノートへ記録して、回数と内容を把握する作業を1週間行ってもらいました(残りの48人は比較のためのグループで、何も指示していません)。そして、その前後で自分の幸福度を数字に表してもらい、比較しました。
すると、指示しなかった48人に目立った変化がなかった一方で、親切行為を数えたグループでは、71人全員の幸福度が高まっていたのです。
★米国で行われた別の調査では、3296人の対象者のうち、実に95%もの人が「人助けをすることで気分がよくなった」と答えています。
その他、「温かい気持ちになった」「高揚感に包まれた」「元気が湧いてきた」などもあり、しかも53%の人が、そのおかげで「ものの見方が楽観的に変った」と答えているのでした。
★テキサス大学は2003年に、25歳以上の3617人を対象に、心の健康とボランティア習慣の調査を行いました。
ボランティアをした人は、しなかった人よりうつ症状が少なく、65歳以上ではその傾向はさらに顕著でした
★2004年、ブラウン大学医学部の研究者たちが、患者の一部にほかの患者の手伝いをさせ、禁酒成功率を調べたところ、手伝いをした患者40%が次の1年間の禁酒に成功し、しなかった患者は22%にとどまるという結果が出ました。
親切心は、脳内で依存性に効く薬物と同じ脳内麻薬を分泌させます。しかも、それだけでなくオキシトシンやセロトニン等の脳内物質も分泌されます。これらの物質は気分の改善に役立ち、前向きで楽観的な心理状態をもたらします。
とくに、オキシトシンには親近感を強める働きがあり、他者との絆を強めます。
親切の習慣を長く続けると、脳内の神経の道筋が変化して、いい気分がより長く維持されるようになります。親切を続けるだけで「気分よく毎日を過ごせる頭」ができていくのです。
★2002年に米国のボストン大学の看護師が行った研究では、慢性的な腰痛に悩まされている患者が、同じように痛みを感じている患者を助けることで、大きな鎮痛効果が得られるということがわかりました。
さらに驚くことに、「人のために行動することで寿命が伸びる」という研究結果があるのです。
★1999年にカリフォルニア州で行われた研究では、積極的にボランティア活動をしている人の死亡率が、ボランティア活動をしていない人より44%も低いという結果が出ています。
近年、テロメアの長さが老化に関して重要な役目を果たしていることがわかっています。年をとるにつれ、テロメアは短くなっていき、それが細胞分裂の回数の限度を決めているのです。
そして、精神的なストレスがあると、テロメアの短縮が早まって、老化が加速されます。
★楽観的な人は、悲観的な人より7年以上長生きするという調査結果もあり、人のためになろうという前向きな態度は、つらい出来事から心を守ってくれる上に、テロメアが擦り切れるのも防いでくれるのです。
★介護や看護のストレスでテロメアが短縮することもわかっています。問題はそのストレスの受けとめ方で、老化のスピードが変わるのです。
たとえ長期の介護をすることになっても、大切な人にやさしくする機会だと発想を転換できれば、テロメアは短くなりません。
★ハバード大学では、マザー・テレサが人々にいたわりを示している50分間のビデオを学生たちに見せ、唾液をとって唾液免疫グロブリンAという物質を調べました。ビデオを見た後ではその量が増え、1時間たっても通常より多い状態が続きました。
このことは「マザー・テレサ効果」としてよく知られており、私たちは他者への親切行動を目にしただけでも健康になれるのです。
日常に感謝し、幸福感をもっている人ほど、経済的に豊かになりやすいという研究結果があります。
★大学生たちに自分の幸福度を自己評価させ、16年後に同じ評価をさせて、その期間に稼いだ収入との関連を調べたところ、顕著な結果が出ました。
もともと幸福度の高かった学生のほうが収入が多かったのです。調査の開始時に幸福度が最も高かった人たちは、最も低かった人たちに比べて、平均2万5千ドルも年収が多かったという結果が出ました、
どんな環境にあっても幸せを感じて、さまざまな恩恵を受けるにはどうすればいいのか・・・。
人に親切をすればいいのです。
親切は「概念」ではなく、「生き方」です。
アフリカの赤道直下で、現地の人のために医療尽力したシュバイツァー博士は、次のように言っています。
「親切の励行は目覚ましい結果をもたらす。太陽が氷を溶かすように、誤解や不信、敵意をほぐしていくのだ」
親切を実行すれば、ほかの人たちをほんの少しでも、幸せにしていくことができます。そして、自分の中のマイナスの感情や心のストレスが消えていくのです。
ダライ・ラマは言います。
「私たちが人に愛や思いやりをもてば、相手は愛や気遣いを感じます、しかし、それだけではありません。自分の中にも幸せと安らぎを育まれるのです」
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