いくつもの海戦で『雪風』の将兵は、僚艦の沈没を目の当たりにし続けます。そして彼等は、重油の中で必死に助けを求める人々を誰彼かまわず、毎回救い上げてきました。
ある海戦の『雪風』は、撃沈された米海軍の駆逐艦の将兵が海上に漂っていたにもかかわらず、彼等を銃撃しませんでした。一方救えなかったのは、友軍の救出を優先したためです。
海に漂う米兵の傍らを通過する『雪風』の甲板では、将兵が一斉に米兵に対し敬礼をして、彼等の健闘を称えたとのことです。それに気づいた米軍の駆逐艦艦長は、救命ボートの上で直立不動の姿勢で、涙を流しながら、『雪風』に返礼の敬礼をしていたと回想されています。
このことから、あなたは何が見えるでしょう?
もしも『雪風』の艦長が、憎しみ(較正値50)、怒り(150)や、プライド(175)に満ちていたなら、アメリカ軍の将兵を見たなら、それが敗残兵であろうと銃撃を命じた可能性もあります。
しかし、救命ボート、あるいは浮遊物につかまり救助を待つアメリカ兵に敬礼をしたというのは、戦争という異常事態で『殺し合い』をしても、敗者に敬意を表する姿、いわゆる騎士道精神や武士道精神、すなわち人類平等の尊厳を、激しい『殺し合い』の中でも、彼等は持ち続けていたことを示しています。
ブラッド・ピット主演の『フューリー』という映画は、実話をもとに欧州戦線における米軍戦車兵の英雄を描いたものです。
ブラッド・ピッド演じるノーマンは、最初の戦闘で銃撃を躊躇し、戦車隊の指揮車が撃破されてしまいました。敵を撃つことに躊躇していたノーマンに、戦車長コリアーは、ドイツ兵の捕虜を無理やり射殺させます。その後、ノーマンは『マシーン』と言われる程、狂ったように銃撃し始めます。同様の捕虜虐殺シーンは、他の映画でも度々描かれています。
『雪風』の敗残兵への敬礼と、捕虜を虐殺した戦車長、どちらも戦争の現実です。
しかし、どちらがポジティブなカルマを積み上げているかは、言うまでもないでしょう。
欧米人にとって、カルマの法則はあまり馴染がありません。どちらかというと、聖書の完全懲悪の物語が好まれるため、悲劇は度々戦場で起きているとも言えます。もちろん日本兵の中にも・・・。
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