レモンが死んだ。
レモンは野良猫の子どもで、2年前に生まれ、仔猫の頃からうちの庭に入ってきて、整備した花壇をことごとくトイレとして使ってくれた。
トイレにされないように、あの手、この手で対策を取ったが、これと言って有効な方法は結局なかった。
産まれて最初の冬に、向かいのマンションの植木の中で震えていたことがきっかけで、庭にキャットハウスを置いたりした。ただ最初に置いたキャットハウスは余り利用されなかった。その後、ベランダで大きな段ボールを猫が使えるように改良したものを「セカンドハウス」として設置した。最初の冬は、地域猫の「キジ」と一緒に箱の中に入って暖を取っていた。中には電気行火が入れてあって、寒さをしのげるようにしてあった。
お腹がすいたらエサを与え、時にはネコジャラシで遊んであげた。段々色々できるようになって、「投げたボールを追いかける」なんてことまでできるようになる。
うちにエサを食べに来る猫は4匹。(全部手術済み)
レモン 2年前に生まれた仔猫(茶トラのオス)
ママ レモンのママ(さびに近い茶トラ、メス)
キジ キジトラ猫、年齢不詳、推定オス
福 キジトラ猫、太ったボス猫、推定オス
4匹には力関係があって、いつも仲良く一緒にエサを食べる、などという団らんはなかったが、とっかえひっかえエサを食べに来るので、そのたびに食べさせてやる。
ただ、そんな猫のエサを横取りすべく野生動物もやってくる、カラス・タヌキ・ハクビシン・イタチ・アライグマなどなど。
この冬、タヌキが猫の寝床を奪う、という事件があって、タヌキ対策を強化したりした。それでも、タヌキは生きるべく猫の寝床に入ってきて、4月頃、弱ったタヌキは棒でつついても箱から出ようとしなかった。
そんな事件があって、猫の寝床はすべて廃止して、より安全な高さのある棚を手に入れてきた。レモンはそれも気に入ってくれて、エサを棚の上で食べる習慣もついていた。
5月8日(日)レモンは特にエサをねだることもなく、午前中つつじの木の下でのんびりしていた。それが生きているレモンを見た最後になった。
今日、5月20日、午後、玄関先にやたらハエが集まっていて、茂みの中をのぞくと、そこに既に息絶えているレモンがいた。死後数日たっている様子。左の脇に深い傷があって、おそらくアライグマなどにやられたのだろうと想像できる。たった2年の短い命だった。
桜の木の下に穴を掘って、そこに葬ることにした。
レモンを寝かせ、野ばらの白い花やピンクのつつじの花をたくさん取ってきてレモンの周りに敷き詰めた。
連絡をして動物愛護協会の人たちにも来てもらって、短い時間だがお別れをした。
土をかぶせ、墓標に万両の苗木を植えた。これが「レモンの樹」。
野良猫が生きていくことはとても難しい。外の世界には様々な危険があって、野良猫に限らず野生動物は生まれてもほとんどが短い間に命を落としてしまう。例えば身の回りに沢山いる野鳥、スズメなど、は1年後に生き残っているものは2割、と言われている。
本州以南の日本には大型の肉食獣がいるわけではないので、犬や猫のような大きさの生き物に決定的な天敵はいないのだが、それでも動物同士の喧嘩による傷は致命傷になることも多い。交通事故もあるし、伝染病で命を落とすこともある。
この数年の日本では「保護猫」という形で野良猫になる運命から逃れている猫がいる。しかし現実には貰い手がつくのは生後3か月まで、それ以上育ってしまった猫に飼い主が見つかることはほとんどない。
猫を欲しい人は、生後間もなくの仔猫か、誰かに飼われていて人と一緒に暮らすことになれている猫を選ぶ。当たり前だが、人に懐かない、家の中で暴れる、凶暴に飼い主に向かってくる、みたいな猫は飼うことは困難。だから、選んでもらえない。
そんな中でも、地域猫として生きることも出来ず、さいとて飼い主が見つかるはずのない猫を、家で面倒を見ている人はいる。そうした努力も限界になっているのが実情。
幸い、うちには猫がのんびり暮らせる広い庭があるし、近所の人も猫がどうのこうのと文句を言ってくるわけでもない。エサは動物愛護協会の人が持ってきてくれるので、私が猫の世話のために使っている費用は微々たるものでしかない。ただ、労力は捻出している。
地域猫、といってもエサは食べにくるが別になつくわけでもない。その中でレモンは甘えて鳴き、日々足にまとわりついてきたりしていた。珍しく懐く猫だった。
いつけがをしたのか分からなかったが、命からがらうちの玄関先まで戻ってきて、何とか回復しようとしていたのだろう。もし、戻ってきた時に見つけていれば助けられる可能性が少しはあったかもしれない。でも、これは猫の本能的なものだから仕方がない部分もある、ケガをして弱っている時はできるだけ他の生き物に見つからない場所に隠れてしまう。
猫は捨てられたりして野良猫になるケースが多いが、この地域はちょっと事情が違う。1995年の大地震で家が倒壊したりして、飼い猫は逃げ出し、そして帰る場所を失った。その猫たちは山に辿り着き、そこで生きていくしかなくなった。その時の子孫が今でも脈々と生きている、という構図がある。
もっとも、避妊手術がかなり進んでいて、もう次の世代が現れてくる可能性はかなり低くなっている。そんな中で生まれたのがレモンだった。
最初に見つけた時に捕獲していれば、誰か貰い手があったのだろうと思う。ただその時は私にもそういう知識はなかった。
可哀そうなことをしたが、野良猫としては破格の待遇で暮らせたと思う。飢えさせることもなく、冬の寒さもしのげるように工夫してあったのだから。
ログインしてコメントを確認・投稿する