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2020年02月23日15:21

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上野 星矢 フルート・リサイタル

【プログラム】
 シャミナード: コンチェルティーノ
 ラヴェル: ソナチネ
 ヴィドール: フルート組曲
 ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲
 プーランク: フルート・ソナタ
 ビゼー: カルメン・ファンタジー(上野星矢・内門卓也編)

(アンコール)
 パラディス: シチリアーノ
 松任谷由実: 春よ,来い(上野星矢・内門卓也編)

上野 星矢(Fl)
内門 卓也(Pf)

2020年2月14日(金),19:00開演,札幌コンサートホール


 札響の昨年11月定期演奏会で見事なハチャトリアンのフルート協奏曲(ランパル編)を披露してくれた上野星矢のリサイタルを聴いた。期待を裏切らない見事なフルートだった。上野星矢に勝るとも劣らない演奏を聴かせてくれたのが内門卓也のピアノ。ピアノ伴奏の理想と言っても良いほど。非凡な独奏者は,これまた卓越した伴奏者を選ぶ耳とネットワークに恵まれているらしい。

上野のフルートは,この楽器の演奏に要求される全ての要素を満たす。低域から中域にかけては柔らかでふくよかな響きで,高域は明瞭な輪郭を持つしっとりとした響き。もちろん,全ての音域で黄金に煌く音色も兼ね備える。フルートの響き以上に印象的なのが上野の音楽性。どの曲のどのフレーズも音楽的で,聴いているだけでひとりでに楽しくなる。初めて聴く曲であっても,決して退屈することはない。

シャミナードの「コンチェルティーノ」やヴィドールの「フルート組曲」は初めて耳にする曲だが,ワクワクするような楽しさ満載だ。ラヴェルがピアノのために書いた「ソナチネ」のフルート版も,まるで最初からフルートのために作曲した曲のように自然にきこえる。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は,フルートとピアノの二重奏であるにもかかわらず,まるでオーケストラが演奏しているような錯覚を起こしねない豊かな演奏だ。プーランクの「フルート・ソナタ」は,フルート演奏のテクニックを総動員したような曲だが,演奏技術に偏り過ぎた退屈さは微塵もない。上野とピアノ伴奏者の内門がアレンジしたビゼーの歌劇「カルメン」を素材にしたファンタジーも変化に富んだ多様な音楽を堪能させてくれる。時折,1月に観た「カルメン」の悪夢が蘇ることもあったが,演奏者の二人に罪はない。

内門卓也は,東京藝術大学音楽学部作曲科に在学中で,作曲や編曲を手掛けるほか,アンサンブルや伴奏ピアニストとして上野星矢をはじめ多くの演奏家と共演している。内門のピアノは,出しゃばり過ぎて独奏を邪魔することはなく,かといって存在感の乏しい伴奏というわけでもない。つかず離れず,音量は大き過ぎず小さ過ぎることもない,理想的な伴奏だ。もしかすると,このピアノ伴奏者が作曲を専攻していることと関係が深いのかも知れない。つまり,楽曲の構造を正確に把握し,それを踏まえて伴奏の役割を見極めているからのようにも思う。とにかく,ピアノ伴奏に関しては,これまで聴いた中でベストと断言したい誘惑に駆られる。

この日の来場者の多くは,かつてブラスバンドでフルートを吹いていたと思しきお姉さまたち。前列に陣取ったアマチュア・フルーティストたちは,彼女たちにとって演奏技巧の点で難関といえるヴィドールの「フルート組曲」を,上野が難なく吹きこなす様子をみてしきりに感心していた。彼がブラスバンドの卒業生のアイドルなのだろうことは想像に難くない。アンコールで演奏した松任谷由実の「春よ,来い」は,彼女たちへのプレゼント。それにもかかわらず,「ディナー・ショー」に堕することがなかったのは,フルーティストとピアニストの卓越した音楽性の故。
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