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2019年12月21日13:27

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札幌交響楽団 第625回定期演奏会

【プログラム】

マーラー : 交響曲 第10番(クック版 第3稿)

管弦楽: 札幌交響楽団
指揮: 広上 淳一

2019年12月6日(金),19:00開演,札幌コンサートホール


札響の12月定期演奏会はマーラーの交響曲第10番の補筆版。作曲者の死去によって未完に終わったこの作品をイギリスの音楽学者デリック・クックが補筆し,クックの死後1989年に出版された第3稿を使用した演奏。この定期演奏会で,札響はマーラーの交響曲の全曲演奏を成し遂げたことになるという。

蛇足になるが,札響によるマーラー の交響曲全曲演奏に至る歩みを振り返る。1980年1月(第1番),1987年6月(第5番),1990年3月(第8番),1991年3月(第6番),1991年11月(第3番),1994年9月(第2番),1994年12月(第4番),1996年3月(第9番),1998年3月(第7番),2005年5月(「大地の歌」),そして2019年12月(第10番)。3月の定期演奏会で4回もマーラーの交響曲を初演しているが,何か理由があるのだろうか。第8番の初演が3番目だったというのも意外だ。さらに,声楽入りで比較的規模の大きい第3番と第2番も比較的早い時期に初演している。ちなみに,最も演奏回数の多い作品は第4番の17回で,オーケストラの編成が小さいため取り上げやすいのだろう。次いで多いのは第1番の10回。こちらは人気作品ということもあるのだろう。反対に演奏回数が少ない作品は,コストの嵩みそうな第8番と「大地の歌」。「マーラー 」の沙汰も金次第ということか。

聴いたのは毎度2回行われる定期演奏会の1日目の夜公演。第1日目ということもあり,演奏の完成度はやや甘めな箇所が目立つ。指揮者の指示とオーケストラの演奏とが微妙にしっくりといっていないような感じを拭い去ることができない。おそらくリハーサルに3日程度は費やしているはず。それでも,オーケストラは指揮者の指示に戸惑って,「えっ,ここはそんなふうに演奏するんでしたっけ」とでも言いたそうな雰囲気が感じられた箇所は五指に余る。オーケストラがこの作品に対してどのようなイメージを抱いていたのか想像の限りではないが,広上淳一は交響曲第10番,というよりマーラーの音楽そのものの耽美的な側面よりも,力強くダイナミックな面をドラマチックに再現することを目指していたように見受けられる。オーケストラとマエストロとの齟齬も,ある箇所をどの程度ドラマチックに表現するかという点をめぐって生じていたようだ。まさかとは思うが,指揮者がリハーサルではそれほどダイナミックな演奏を求めていなかったにもかかわらず,本番で事前の了解とは異なる指示があった可能性も完全に排除できない。あるいは,指揮者が曲の流れに沿い感興に任せて振った結果,オーケストラとの間に溝ができたということもあるかも知れない。ともあれ,定期演奏会は2日目の昼公演の方が練り上げられた演奏を聴くことができるらしい。

とにかく,広上淳一は交響曲第10番の巨大なスケール感を出そうと力演していたことは,指揮の様子から判断しても間違いなさそうだ。しかも,そのスケール感を音の響きの大きさで表そうとするアプローチである。音量でスケールの大きさを表現しようとするアプローチに札響がついてゆけなかったという見方も成り立ちそうだ。もちろん,札響も広上淳一もプロの演奏家なので,演奏が明らかに破綻するようなことはない。とはいえ,少々生煮えだったような感触を拭い去ることができなかったのも確かである。

小回りが利かなかったという点では,オーケストラの編成が大きくなったこともマイナスに作用したとも考えられる。この日のエキストラは,ヴァイオリン8名,ヴィオラ3名,チェロ2名,コントラバス3名。フルート,オーボエ,ファゴット,ハープ各1名,クラリネット2名。通常は3管編成の札響が,ほぼ4管編成に膨れ上がる。視覚的にも,演奏会場のステージ全面を占めるオーケストラは演奏する作品の巨大さを訴えかけているようでもあった。

客の入りは二の次といったプログラムが並ぶ今シーズンのラインアップの典型ともいえるマーラーの交響曲第10番一曲だけの演奏会で満員盛況という訳には行かない。客席はガラガラではないにしても,滅多に聴く機会のないマーラーの交響曲第10番の補筆版を聴いてみたいというマニアがそれ程多くないのは寂しい。地方では,マーラーと聴いただけで拒絶反応を示す人も少なくないだろう。ましてや,未完成に終わった第10番なんて勘弁して欲しいという名曲好きのファンも珍しくはないだろう。

その一方で,全国各地からマーラーの第10番を聴くために馳せ参じた愛好家も少なからずいた。左隣に座った人物も,持っていた荷物から判断して遠征組のようだった。SNSでも,「厳寒」の北海道までマーラーの第10番を聴くために遠路はるばるやってきたという書き込みが多かった。地元がダメならマニアをターゲットにするという戦術が有効な時代になったことを実感する。いずれにしても,全国に散らばるマニアの皆さんをも対象にした意欲的なラインアップで,攻めの姿勢を維持するのが得策でしょう。そのような戦略を通して,札響がどのようなカラーを打ち出してゆくのかにこのオーケストラの未来がかかっているように思う。
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