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2017年07月29日22:08

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オリジナル楽器で聴くブラームス

【プログラム】
 ブラームス
1 ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 op.100
2 チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 op.38
     〜〜〜 休 憩 〜〜〜
3 ”ハンガリー舞曲集”より「第1番」,「第14番 」,「第2番」
4 ピアノ三重奏曲第3番 ハ短調 op.101

(アンコール)
 ブラームス:”ピアノ三重奏曲第3番”より「第3楽章」

 佐藤 俊介(Vn)
 鈴木 秀美(Vc)
 スーアン・チャイ(Pf)

2017年7月4日(火),19:00開演,ふきのとうホール


ブラームスをオリジナル楽器で弾くとは面白そうな試みだ。ヴァイオリン・ソナタ第2番,チェロ・ソナタ第1番そしてピアノ三重奏曲第3番という選曲もいい。ということで,この演奏会に出かけてみた。

だが,オリジナル楽器でブラームスの室内楽作品を演奏するねらいや意味が,十分に伝わってきたとは言い難い演奏会だった。ブラームスの時代に使っていたヴァイオリン,チェロ,ピアノが,現代の楽器と違うことは知っている。今より渋い音色だったことは容易に想像がつく。しかし,この日の演奏は音量の小さな楽器を力を込めて鳴らそうとしているようにしかきこえず,ブラームスの渋い音楽をオリジナル楽器の渋い音色で奏でるというねらいからは程遠いような印象を受けた。もちろん,ブラームスのロマンチシズムを表現するには遠く及ばない。聴く側が当時の楽器で再現されたブラームスに慣れていないためかもしれないのだが。

ブラームスの演奏で通常用いられる楽器とこの日使われたオリジナル楽器との違いはいくつかある。この日,使用している弦はガット弦。ガット弦はスチールやナイロンの弦に比べ音色が暖かく豊かであり,人間の声に近いとされている。チェロはエンドピンがなく,両足で挟んで弾くタイプの楽器だ。ピアノもJ.B.シュトライヒャーが製作した1870年代のウィーン式のピアノで,ブラームスが晩年ウィーンの自宅で使用していたものと同じタイプ。ヴァイオリン・ソナタ第2番とピアノ・トリオ第3番を作曲した当時,このピアノを使用していたと考えられている。

そして,これらの楽器を弾く演奏者も専門家が揃っている。佐藤俊介は先日オランダ・バッハ協会のコンサート・マスターに就任したヴァイオリニストで,オリジナルもモダンも弾きこなす。鈴木秀美はバッハ・コレギウム・ジャパンの首席チェロ奏者を務めたこの分野の第一人者で,最近は指揮者としても古楽器のアンサンブルを主宰し,モダン楽器のオーケストラへも客演している。スーアン・チャイもオリジナルとモダン双方を弾きこなすピアニストである。

使用楽器も演奏者も好条件が揃っているのだが,この演奏会であまり深い感銘を受けなかった最大の理由は,肩に力が入り過ぎていたためのような気がする。オリジナル楽器をモダン楽器にように鳴らそうとしたことがその背景にあるようだ。このホールは響きすぎるくらい良く鳴るホールなので,もっと力を抜いても音量は不足することはなかっただろう。その方が却って音楽に集中でき,いい結果につながったように思う。ヴァイオリンは音が割れ気味で,汚れたような響きが気になった。ピアノもホール全体に鳴り響かせることを強く意識したような弾き方で,オリジナル楽器の美しさを十分に引き出していたとは言い難い。ヴァイオリンもピアノも,総じて音楽の造形は甘い。しかし,若い二人とは違い,ベテランの鈴木秀美のチェロはオリジナル楽器の持ち味を十分に引き出すとともに,およそチェロとは思えないくらいのスケールの大きな演奏に圧倒される。

ただ,デュオでもトリオでも楽器同士のバランスに問題があった。オーセンティックな楽器を使い,それぞれの楽器のエキスパートを揃えたのはいいが,アンサンブルが十分に練られているとは言い難い。音量のバランスが狂い気味であることに加え,息もピッタリとは言えない。このホールの響きの良さもあいまって,演奏の粗が目立つ結果に終わったのは残念である。この演奏会で取り上げた曲目の解釈にバラツキが大きいようだ。

というわけで,「オリジナル楽器で聴くブラームス」の醍醐味を堪能することはできなかった。この企画は首都圏などでも実行に移されたはずだが,他のホールではどうだったのだろう。ホールの響きだとか,演奏者のコンディションなど微妙な条件に左右される要素が大きいので,この日の演奏が全てだとは考えていないが,結構チャレンジングな試みであることは間違いなさそうだ。とりわけ,モダン楽器によるブラームスに慣れた聴衆の前では。
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