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2017年07月01日22:28

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ドゥネーヴ&ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団

【プログラム】
1 コネソン: フランメンシュリフト
2 ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」作品73
       〜〜〜 休 憩 〜〜〜
3 ドビュッシー: 交響詩「海」
4 ラヴェル: ボレロ

モナ=飛鳥・オット(ピアノ独奏)
ステファヌ・ドゥネーヴ(指揮)
ブリュッセッル・フィルハーモニー管弦楽団

(アンコール)
リスト: 「巡礼の年”ヴェネツィアとナポリ”(第2年補遺)」より『カンツォーネ』
ビゼー: 「アルルの女 第2組曲」より第4曲『ファランドール』

2017年6月12日(月),19:00開演,札幌コンサートホール


来日オーケストラをこのホールで聴くのは久しぶり。やはり,海外オーケストラの個性的な音色とパワーはひと味もふた味も違う。緻密な演奏を心がけるのも悪くはないが,勢いが削がれがちな演奏に慣れた耳には,このコンビの演奏は新鮮に響いた。

ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団は,1935年に設立され,活動の拠点をベルギーのフランス語圏にある古都ブリュッセルに置く。ストラヴィンスキーやバルトークの作品を初演するなど現代音楽に積極的に取り組んできたとのこと。ステファヌ・ドゥネーヴは2015年9月にこのオーケストラの音楽監督に就任したフランス生まれの指揮者。パリ管弦楽団ではショルティの,パリ国立オペラではプレートルのアシスタントを務めたヨーロッパの若手指揮者の中で注目株だそうである。ピアノ独奏のモナ=飛鳥・オットはいうまでもなくアリス=紗良・オットの妹で,ミュンヘン生まれ。

フランスの作曲家コネソンの「フランメンシュリフト」は,ベートーヴェン交響曲第5番の「運命の動機」をモチーフにした作品で,調性音楽の枠組みからはみ出すことはないものの斬新な手法で書かれた変奏曲のようにきこえる。コネソンとドゥネーヴは堅い信頼の絆で結ばれた仲であるとのこと。最先端の作品に積極的に取り組むこのオーケストラの伝統にのとった選曲なのだろう。ところで,大多数の弦楽四重奏団の演奏会のように,どのコンサートでも現代作品を1曲はプログラムに入れる習慣が定着すると,聴衆の姿勢に顕著な変化をもたらす上で有効だと思う。

最近,若手のピアニストが「皇帝」をコンサートで弾くことが多くなったような気がするが,納得のゆく「皇帝」を聴いたためしがない。ベテランにとっても超難関といえるこのコンチェルトに挑む,この無謀な企てをあえて敢行する理由は何なのか理解に苦しむ。この曲を弾けるという自負なのか,確実に集客できるという打算なのか,はたまた興行主からの要請なのか。

姉と違って,モナ=飛鳥のタッチは少し浅めで,響きも薄い。どちらかというと,鍵盤の上を自由に動き回るような曲で持ち味を発揮しそうなピアニストだ。渾身の力を込めつつも自在に緩急をつけ,さらに全体のバランスを整えるような離れ業をやってのけるだけの技量の持ち主とは思えない。フランス人が書いたピアノ協奏曲と相性がいいような気がする。サン=サーンスかショパンの方が良かったのではないだろうか。少なくとも,いまの時点であえて「皇帝」にチャレンジする必要はなさそうだ。指揮者もオケも独奏者を引き立てることを優先したためか,相当遠慮気味な伴奏に終始していた。余談になるが,アリス=紗良と違い,モナ=飛鳥は靴を履いてステージに登場。

ドビュッシーの「海」は台風の到来を告げる荒れ気味の海を彷彿とさせる。力強く勢いがある演奏だ。空は灰色の雲に覆われ,強い風が吹きすさび,白波が立ち風しぶきが渦巻く光景が目に浮かぶ。おそらくドゥネーヴの好みやスタイルを反映した「海」なのだろう。指揮者のやや難しい棒に余裕を見せつつ付き従うオーケストラは実力派の部類に属するように思う。弦楽セクションも上手いが,何と言っても管楽器の巧さが水際立っている。テクニックが正確なことはもちろん,演奏の基本が歌であることを心得ているところが憎い。ベルギーのフランス語圏の文化特有の色彩を帯びた独特の音色が,このオーケストラの個性をさりげなく印象付ける。そして,弦の響きも同じ音色で彩られていることはいうまでもない。

この演奏会で,指揮者の才能を見せつけたのが,ラヴェルの「ボレロ」である。ドゥネーヴは煽ることにかけて,天才的な才能を発揮する。これまで数え切れないほど「ボレロ」を聴いたが,これほどの興奮を覚えたのは,今回が初めてのような気がする。「ボレロ」は聴衆をエキサイトさせる種類の音楽である。しかし,曲が進むに従いただ音量が大きくなるだけの演奏が普通だ。だが,この日は気が付いてみると,会場は熱気に包まれ,興奮の坩堝と化していた。聴衆の反応が儀礼の範囲をはるかに超えていたことが,その事実を物語っていた。もちろん,指揮者が意図したとおりの「ボレロ」を表現したオーケストラにも脱帽である。でも,いちばん煽られたのはオーケストラのメンバーだったのかも。

隅々まで計算し尽くした演奏の対極にあるような,勢いのある熱気を帯びた演奏は痛快そのもの。やはりリスク覚悟でこういう演奏を心がけるのがプロフェッショナルというものだろう。
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