たいら母は余分なことは一切喋らない人なので、
わたしはこの年までずっと一緒の家で暮らしていても、
母と雑談をしたことがほとんどない。
五月蠅く喋られるよりは楽なのではと言われることもあるが、
あまり喋らなすぎて最近ではドライマウス気味になって困っている。
母が喋らないのは家の外でも同じ。
と言う訳で、井戸端会議をしている母というのをわたしは見たことがなかった。
ところが、昨日、隣家の解体工事の振動を避けてカラオケに非難した帰り、
玄関ドアを開けようとしたら鍵が引っかかって開かなくなり、
わたしがドアと格闘していたら、前の家のおばあちゃまが母に、
「あら大変、鍵が開かないの?」
と声をかけてきた。
話し好きの方らしく、色々と質問をされ母が応えていくうちに、
おばあちゃまの隣の家の奥さんが話の輪に加わり、
「うちでさえ気持ちが悪くなりそうなんだもの、隣だと振動が大変でしょう?」
「ええ、だから娘とカラオケに非難していたのよ」
「あら、それ上手い方法ね」
などと隣家の解体工事をネタに井戸端会議が始まったのだ。
母の初井戸端会議なんて面白そうなのでドアと対峙しつつ耳をそばだてていると、
「うちとお隣は3年前に引っ越してきたけど、おたくはいつ越していらしたの?」
「25年ちょっと前かしら」
と言う母の応えが聞こえて吹き出しそうになってしまった
違うだろう、二次大戦中にこの土地に疎開して、
ほぼほぼ原野だったところを宅地として開拓した一族の生き残りだろう?
なんとかドアを開けて家に入った後に突っ込んでみたら、
「だって、もうそんな柵なんて関係なくなったのだもの。
今の家に建て替えた時期を言ったのよ」
だそうだ。
確かに今までだったら、母の一族がもともとこの土地は我が一族の物だったからと、
高飛車な態度で見当外れに威張り散らしていたから、
母に「いつ越していらしたの?」なんて聞いてくる方はいらっしゃらなかった。
土地を維持できなくなって切り売りしたのに威張るってどういう理屈なんだろう?
と苦々しく思っていたわたしですら、
空威張りの人の親戚という目で見られてまともに話しかけて下さる方はいなかった。
それが、「いつ越していらしたの?」なんて聞かれるまでになるとは。
「自分から無駄話するのは苦手だけど、
一度でいいから井戸端会議ってやってみたかったのよね」
と母が言う。
そうか、話し好きとか嫌いとか以前に母も井戸端会議に誘って貰えなかったのね。
母は口数は少ないけれど、実は異様に社交的なので、
自身が喋らなくても井戸端会議には参加してみたかったのだろう。
参加できて良かったね
て言うか、今気付いたんだけど昨日の井戸端会議のメンバーって、
隣家が母の姉一家の家だっていうのもご存じないのか。
だから純粋に解体工事の振動気持ち悪いって愚痴が言い合えるのね。
これが普通のご近所づきあいなのか。ちょっと感動

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