
暴力表現あり注意 (と言っても子どもの姉妹喧嘩レベル)
お祭り事件以来、2代目お梅ちゃんの監視が厳しいのも嫌だったが、
もっとも潔子が困ったのは須磨子の暴力がエスカレートしてきたことだ。
暴力と言っても、子どもの姉妹喧嘩の範囲なのでもともとはそんなに酷くはなかった。
須磨子は自分の絵本を本棚にきちんと等間隔に並べ、
ちょっとでも曲がっていると癇癪を起こす。
しかし、神経質なのかと思うと、読みかけの絵本を卓袱台に置きっ放しにしたりする。
潔子は親切心をおこして絵本を本棚に戻してあげようとしたことがあるが、
おおらかと言えば聞こえの良いほど雑な性格なので、
等間隔に並べるどころか上下ひっくり返ったまま乱雑に本棚に突っ込んで、
「潔ちゃん、汚い手でわたしの絵本を触って本棚をぐちゃぐちゃにしたでしょ」
と言われて須磨子に手の甲を思いっきりつねりあげられた。
それ以降、須磨子の私物がそこらじゅうに置きっ放しでも、
潔子は見て見ぬふりをして手は出さなかったのだが、
「また潔ちゃんが須磨子の御本を汚い手で触った」
となぜかすぐに言いがかりを付けられて頭を叩かれた。
さすがに今回は濡れ衣なので、
「わたし触ってないの知ってるよね?」
と同じ子ども部屋の片隅で勉強をしていた温子に仲裁を求めたが、
「潔ちゃん、五月蠅い! わたし学校の宿題してるんだから静かにして」
と全く取り合って貰えずスルーされてしまった。
子守たちは姉妹が仲良く(?)子ども部屋で遊んでいる時は、
羽を伸ばして厨で他のお手伝いさんとお茶を飲んでいるので他に目撃者はなし。
祖母に事実無根だと訴えても、お母さん子の須磨子の肩をもつに決まっている。
年上といえど偏食の須磨子は小柄で痩せているため、
叩かれてもそんなに痛くないので仕方なく我慢したが、
あの事件以来、須磨子は祖母のマネをして潔子を縁側から突き落とそうとし出した。
祖母は曲がりなりにも母親で分別のある大人なので柔らかな庭の芝生の上に落としたが、
須磨子は未だ子どもなのでなにも考えず突き落とそうとするため、
危うく大きな踏み石に頭を撃ちつけそうになったこともある。
大怪我をしてから文句を言っても始まらないので、
潔子はなるべく須磨子と同じ部屋にいないようにすることにした。
と言っても、インドア派の須磨子は学校から帰ると、
殆どんどの時間を子ども部屋で絵本を読んだりお絵かきをして過ごす。
対する潔子はアウトドア派。
今までだったら広い庭を駆け回って、大きな柿の木に登って遊ぶのだが、
二代目お梅ちゃんは潔子が木登りをすることを許さず「奥様にいいつけますよ」と言う。
子ども部屋や庭で遊べなくても潔子にはまだ行くところがあった。
今住んでいる家には北と南に離れがあって、
潔子たち三姉妹は絶対に離れに近づいてはいけないと祖母に厳命されていた。
北の離れには認知症になったお祖母ちゃんが侍女と住んでいたが、
潔子がこっそり覗きに行っても、
お雛様のように立派な着物を着て床の間の前に座ったままで、
話しかけても全く反応がないのでつまらないから二度と覗きには行かなかった。
その代わり、南の離れにはしょっちゅう遊びに行った。
南の離れに住んでいたのは、先妻の息子である薫兄さんだ。
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