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2017年05月01日11:34

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渡辺和子「穴から見えるもの」



ノートルダム清心学園理事長渡渡辺和子さんのお話です。



私たち一人ひとりの生活や心の中には、思いがけない穴がポッカリ開くことがあり、そこから冷たい隙間風が吹いていることがあります。

それは病気であったり、大切な人の死であったり、他人とのもめごと、事業の失敗等、穴の大小、穴の深さ、浅さもさまざまです。

その穴を埋めることも大切かもしれませんが、穴が開くまで見えなかったものを、穴から見るということも、生き方として大切なのです。

ある時、女子大生たちに講義の中で、この人生の穴について話したことがあります。
夏休みがきて、その後、再び教壇に戻った時、一人の四年生がきて、言いました。
「シスター、この休みの間に、私の人生に穴が開きました」

話はこうでした。自分は思いがけず婦人科の手術をしなければならないことがわかって受けた。手術は成功だったが、医者から、子どもが産めなくなったかもしれないと知らされた。自分にとってショックだったのは、結婚を前提につき合っている男性が、無類の子ども好きだったからである。

隠しておこうかとも思ったけれど、いつかはわかることだからと覚悟を決めて打ち明けた。するとその男性は、自分の話を聞き終えた後、優しく、
「心配しなくてもいい。僕は赤ちゃんが産める君と結婚するんじゃなくて、君と結婚するんだから」
と言ったという。

そこまで話して、その学生は泣いていました。
「もし、私の人生に、この穴が開かなかったら、結婚しても一生、相手の誠実さと愛の深さを私は知らないで過ごしたかもしれません」

この学生は、自分の人生に開いてしまった穴の“おかげで”、穴が開くまで見えなかったものを見ることができたのでした。神さま、仏さまの愛に近い、相手の「無条件の愛」に気づいたのです。

このように人生の穴からのみ、見えてくるものがあります。そこから吹いてくる風の冷たさで、その時まで気づかなった他人の愛や優しさに、目が開かれることがあるのです。
(以上)

以上、「やすらぎ通信2008年夏・秋号」(ユーキャン出版事業部)より。


かつて青山俊董さん(愛知専門尼僧堂堂長)が言われた次の言葉を思い出しました。

「谷底へ落ちたら谷底でしか見られない景色がある。
病んだ時は病んでなければ見られない景色があるのです。
どういう状況にあっても、
そこでしか見えない景色を楽しみ、
気づかなかったことを学ばせてもらいましょう」。

人生無駄など一つもない。1日1日を大事に生きたいものです。





【渡辺和子さん】
昭和2年生まれ。教育総監・渡辺錠太郎氏の次女、9歳の時に2.26事件で父を目の前で殺害される。18歳でキリスト教の洗礼を受け、29歳でノートルダム修道女会に入会。
アメリカでの修練ののち、36歳という若さで岡山のノートルダム清心女子大学学長に就任。長年にわたり教壇に立ち、学生の心を支え指導する。
現在ノートルダム清心学園理事長。昭和59年にマザー・テレサが来日した際には通訳を務めるなど多方面で活躍。著作も多数。


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