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2016年09月23日10:11

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ある死刑囚の詩


私は死後の世界をかいま見た臨死体験者の回顧記事を読んで臨死体験者のその後の生き方は、人としての本当の生き方を教えてくれているように思います。

また死と直面しながら生き、本当の人間に目覚めて死んでいった死刑囚たちの心情にも微塵も嘘はなく、人の心はここまで清められ、美しくなれるのかという感動を与えてくれます。そして人生において、何が大切かということを教えてくれます。



死刑囚島秋人という方がつくられた次の短歌は、人としての本当の生き方というものを教えてくれている気がしてならない。

島秋人という人は小学校、中学校では最下位の劣等生で、まわりの人からいじめられ、馬鹿にされ、すさみきった生活を続けていた。昭和34年、農家に入ってその家の人を殺し、2千円を奪ってつかまり,昭和42年、小菅刑務所で死刑になりました。 

中学校の時、一度だけ先生にほめられたことが忘れられず、獄中から、その先生に手紙を出したのがきっかけとなり、詩を作るようになり,身も心も清められて死んでいきました。

以下、刑務所に収容され処刑されるまでの島さんの詩を、私なりに月日を追って島さんの心境の変化を味わってみることにします。

昭和35年
★わきあがるさびしさありて許されぬクレヨン欲しき死刑囚のわれ
・・・・寂しい、なんともさみしくてかなわない。せめてクレヨンで気をまぎらわしたい。逃げようにも逃げようのない絶望のうめき声を耳にするようだ。

昭和36年
★うす赤き冬の夕日が壁をはう死刑に耐えて一日生きたり
・・・・死刑囚という重圧に必死にこらえて、やっと一日を生きることができた、という緊張感と孤独感がそのままつたわるようである。

★声あげて悔いぬることもなぐさめか死刑囚になき更正の道
★死刑囚となりて思えばいくらでも生きる職業あると悟(し)りき
・・・・しまった、えらいことしたものだ、自分の人生を悔やんでも嘆いても,今更どうにもならない、とりかえしのつかないことをしたものだという後悔と絶体絶命の気持ち、せめて悪かった、許してくれと大声であやまりたい。
しかしこれも気休めにすぎない。

昭和37年6月に死刑確定
★亡母(はは)といる不思議に気づき初夢は覚めて死刑の己のみある
・・・・懐かしい母といる、心が限りなく和んでいく。待てよ、母は亡くなった筈だと気づき、夢だったと知る。そして死刑囚という現実にひやりとし、寒々とした気持ちにもどる。

★安らかに笑みうくべし殺(あや)めたる罰受くる日の何日(いつ)に来るとも
・・・・何時死刑執行の日が来ようとも、せめて安らかに笑って死のう、と自分に言って聞かせ、避けられぬ運命を受けようと懸命に努力をする島さんの気持ちが、痛いほど伝わってくる。

昭和39年
★いくたびかことし限りと思い来しつつがなく去年(こぞ)を生きて愛(いと)しき
・・・・ああ、よくも生かしていただいた,一年を生きてきたこの自分が本当に愛しい。

昭和41年
★悟(し)ればなお愛しさ湧きていのちとはかくも尊きものと知らさる
・・・・だんだん命の大切さが深まっていく、そして生かされているこの命を、本当に尊いものとかみしめている。

★素直さを身に覚えつつよろこびに幸福なりとひとり云い寝る
★受けるものみなよろこびとなりゆきて笑(え)みては和(なご)むひと日愛ほし
・・・・すべてが喜びと受けとることのできるようになった自分を、本当にありがたい、幸せだという実感がでている。

昭和42年 死刑の年
★生かさるるひと日尊び思う夜のすべてのもののいのち愛ほし
★土ふかき部屋に移され処刑待つひととき温きいのち愛しむ
・・・・生かされる自分の命、そしてすべてのものの命がたまらなく愛しく美しい。処刑までの僅かの日の,一日一日を生きるこの命が、ほんとうに暖かく愛しい。

★この澄めるこころ在るとは識らずきて死刑の明日に迫る夜(よ)温(ぬく)し
・・・・私のこころのなかに、このようにも美しいものがあったとは〜。
そして死を待つ私に、夜の空気がなんと暖かくつつんでくれるのだろうか。心がほのぼのしてきた。

島さんの短歌を、月日の経過とともに味わってきましたが、ここに歌う島さんの言葉は決して建前だけの言葉ではない。苦しみ悩み、とことん悲しみぬいてたどりついた、本心からでた命の讃歌ではないでしょうか。

そしてその叫びは、最初は孤独、絶望、不安、淋しさ、耐えるという表現が多かったのが、終わりになるにつれ喜び、愛し、命という表現が多くなっている。そこに人間にとって真の幸福とは何か、人としての行き方は何かということを教えているような気がします。
人間には、明日命が消えようとしている、それでも尚喜びだけの世界が持てるのです。

一度しかない人生、生きている間にすこしでも心のフィルターを磨いて、人間のもつ無限の真・善・美・強さを現わしたいものです。

トルストイの言葉
「死を忘れた生活と,刻々とせまる死を意識しての生活では、まるで違ったものになってくる。前者は動物に近く、後者は神に近い」



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