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2016年03月15日12:02

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老子第四章「まず空っぽから始める」



孔孟などの道は、人間の日常実践の道を教えるが、老子のいわゆる道は、宇宙の根本の道を指している。故にその道は、天地に先立って存在する絶対のものであり、万物の本源であると見るのである。また、この道は、世間のいわゆる「有」ではなくして、形体のないものであって、「無」である。更に言葉を換えて言えば、有に対する無という、相対の無ではなくして、絶対の無である。
老子の第4章は、道の本体を説明して、その道を体得したものがいかなる態度を持しておるか、また持すべきでえあるかを述べたものである。道の本体については、道は虚なるものではあるが、その働きには限りがない。しかもこの道は、宇宙の本源であるから、天地に先立った最初のものであることを述べている。而してこの道を体得した者は、いわゆる和光同塵、決して己の才知などを働かせて得意がっている者ではないと説いている。
・・・以上、諸橋轍次「老子の講義」より。

以下、老子第四章について書き下し文と現代語訳です。

【書き下し文】
道は沖(ちゅう)にして之を用うるに、或いは盈(み)たず。淵(えん)として万物の宗に似たり。
其の鋭を挫き、其の紛を解き、其の光を和らげ、其の塵(ちり)に同ず。
湛として或いは存するに似たり。吾、その誰の子なるかを知らず、帝の先に象(に)たり。


【現代語訳】
道の働きは、なによりもまず、空っぽから始まる。
それは いくら汲んでも汲みつくせない 不可思議な深い淵とも言えて、
すべてのものの出てくる源(みなもと)のない源だ。

その働きは 鋭い刃を丸くする。
固くもつれたものをほぐし、強い光をやわらげる。そして、
舞いあがった塵を下におさめる――

それだから、道を 谷の奥にある深い淵にたとえるのだ。
その淵に潜っていけば 果てしれない先の先までゆくだろう。
子から親へ、その親から先へと たどってゆくに似て、
どこまでも、どこまでも先がある。
やっと行きついた先の またその奥にも先があるといったものなんだ。

だから私は、 誰の子かと訊かれたら、
道(タオ)という母の子、と答えるのさ。
・・・加島祥造訳「タオ 老子」(ちくま文庫)


【現代語訳】
「道」とは空虚で形もないが、永遠に尽きることもなければ、満たされることもない。
底知れぬ深淵のようにはかり知れず、すべての物事の源泉といえる。
「道」は知者の鋭気を鈍くし、「道」に従うならば煩雑なことも簡単になり、乱れた世の中も落ち着いてくる。
「道」は知者の光り輝く才気をやわらげ、俗世間に交ざり同化させてくれる。
「道」は空っぽで何もないように見えるが、実は何処にも存在しているようにも見える。それがどこで生まれたのかよくわからない。あたかも天帝が生まれる以前からすでに存在しているようである。
・・・周春才「マンガでわかる老子入門」(日本能率協会)・・・


【現代語訳】
道は空っぽの容器のようであるが、それが活動したときには、一杯になってしまうことはないのだ。淵のように深いことよ、万物の大本(おおもと)のように見える。
智慧のするどさを弱め、知恵によって起こる煩わしさを解きほぐし、知恵の光を和らげ、世の中の人々に同化する。
満々たる水のように静かなことよ、なにか存在しているように見える。わたしは、それが誰の子であるか知らない。天帝の祖先のようである。
・・・蜂屋邦夫訳「老子」(岩波文庫)・・・

【現代語訳】
道はむなしいものではあるが、むなしいからと言っても、これを用いる場合になると、もはやこれで一杯であると、働きをつきることは決してないものである。
(この一節は、道の働きの限りのないことを説明したものである)。
いかにも深くて、万物の大本であるかのようにも見えるし、又たたえた水の如く深く静かで、その中に何か主(主)でもおるかのように見える。
(この二句は、道の深淵さをたとえたものである)。
道を体得した者は、まず以て己の鋭さをくじかねばならぬ(鋭さを挫くとは、自己の才知の鋭さ、知能の鋭さなどを止めよとのたとえである)。
又、道を体得した者は、糸のもつれたのを解きほぐさなければならない(これは人の複雑なる思わくを止めよとのたとえであり、又、文明などをよろこぶなとのたとえである。文明は一面から言えば、ただ条理の整うた複雑さに過ぎない)。
次に、きらびやかな光をぼかさねばならぬ。(これまた人間の才知を誇り、高名を得意とする心を斥けよとのたとえである)。
そして世の俗流とその歩調をあわせて行くがよい(これは一人みずから高しとし、みずから清しとする態度をやめよとの意味である)。
・・・諸橋轍次「老子の講義」(大終館)・・・


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