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2016年01月26日10:10

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1/4の奇跡



山元加津子・柳澤桂子・四方哲也・新原豊共著「1/4の奇跡 強者を救う弱者の話」(マキノ出版)より転載します。



山元加津子という名前、どこかで聞いたことがあるという人は、時代の流れに、ちょっと敏感な人かもしれません。

石川県の南西部、日本海にほど近い小さな町に、その学校があります。校内では、「かっこちゃん、お話して」「かっこちゃん、ちょっと来て」と、山元加津子教諭(53歳・通称かっこちゃん)を呼ぶ生徒たちの声が途絶えません。

見た目はきゃしゃで、声が小さく、話し方もゆっくり。握力わずか7�圈1親芦暫圓琶�向音痴、おまけに泣き虫・・・・。そんな頼りない印象の山元先生ですが、実は、北海道から沖縄までの全国で、これまで500回にのぼる講演を精力的にこなしている、今注目の女性なのです。

人前に出ることも、話すことも苦手な「かっこちゃん」が、全国を奔走する理由。その原動力になっているのは、難病で亡くなった、一人の少女、雪絵ちゃんと交わした約束にありました。



雪絵ちゃんは、多発性硬化症という難病を抱えていました。

ある日、「何かうれしくなるような話しをして」と言う入院中の雪絵ちゃんに、山元先生は前日に見たという興味深い科学番組の話をしました。

昔、アフリカのある村で、マラリアという伝染病が猛威をふるい、村は壊滅的な打撃を受けてしまいます。しかし、どんなに伝染病がまん延しても、どんなに絶滅するほどの病死者が出ても、必ず生き残るグループがいました。

後年、そのメカニズムを調べようと、多くの研究者が、「生存者」本人から、その子孫にいたるまで、徹底的に調査をしました。すると、一つの事実がわかったのです。

それは、マラリアが多く発生する地域では、ある一定の割合で、伝染病に強い突然変異の遺伝子を持つ人がいる、ということ。そして、その「強者の遺伝子」を持つ人が生まれるとき高い確率で、その兄弟に重い障害を持つ人が現れる、ということ。そんなことがわかったのです。その確率は4分の1。

4人の子どもが生まれた場合、必ずそのうち1人は、成人前に亡くなってしまうような、重い障害を持つことになります。

つまり、人間がマラリアとの生存競争に勝つためには、マラリアに強い遺伝子のほかに、病気や傷害を持つ遺伝子も必要だった、ということです。病気や障害を「引き受ける人」がいなければ、その村は絶滅していたことになります。



山元先生が、雪絵ちゃんにその話をすると、雪絵ちゃんはしばらく考え込んだ後、こう言いました。

「私たちだけで、こんなにいい話を知っているのはもったいないよ。病気や障害がとても大切だ、ということ。みんなが素晴らしい役割を持っていること。それが、科学的に証明されていること。すべての人が、この宇宙から必要とされていること。そんなことを、世界中の人が当たり前に知っている世の中に、かっこちゃんがしてほしい」。

そんなの無理だよ、と山元先生が言おうとしたとき、それをさえぎるようにして雪絵ちゃんは嘆願しました。
「何も言わないで約束して。かっこちゃん、お願い――」

「その約束が、毎日、私の心を揺さぶり続けてくれるんです」
と山元先生は言います。

かっこちゃんが、障害を持つ子供たちから日々教えてもらっていること。それは、なぜ私はここに存在するんだろう、生きるってどういうことなんだろう、大好きって何だろう、そんな問いに対する答え(=本当のこと)なのだと言います。

先日行われた講演は、いずれも立ち見が出るほどの超満員。幼稚園児からお年寄りまでが、ささやくように話す山元先生の言葉に聞き入っている姿が印象的でした。

そして核心部分、「本当のこと」に話がふれると、会場からは、鼻をすする音が絶え間なく響くように――。

心が震える、とはこういうことをいうのでしょうか。自分を、そして、すべての人を抱きしめたくなる、価値ある講演でした。



※山元加津子さんプロフィル
石川県・特別支援学校教諭。1957年生まれ。国立富山大学理学部卒業後、特別支援学校(旧・養護学校〉の教諭になる。通称「かっこちゃん」。
「すべてのことはいつかいい日のためにある」が信条。誰もが抱える悲しみを愛に昇華させる、不思議な力を持った人。文筆や講演など、幅広い表現活動を行っている。著書に、「たんぽぽの仲間たち」「本当のことだから」「ゆうきくんの海」「宇宙は、今日も私を愛してくれる」(すべて三五館)などがある。
障害児らとの交流を描いたドキュメンタリー映画「1/4の奇跡〜本当のことだから〜」(100分)は、口コミで評判が広がり、日本国内はもちろん、海外でも高く評価され、自主上映映画としては異例の上映回数を記録している。




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