春日大社宮司 葉室頼明氏「神道の心」(春秋社)より抜粋要約します。
東洋医学を知る
形成外科というのは生まれたての赤ちゃんの手術が多いのです。体の変形、そういう赤ちゃんです。ところが唇の手術の時、疳の虫を出す赤ちゃんがいて、ギャーギャー泣くのです。唇の手術をするのだから泣いて唇が動くと、傷がむちゃくちゃになってしまいます。
そんな時、鍼の先生が、鍼で疳の虫の治療をやろうということになりました。
そして鍼治療をしてもらっている子どもさんと、しない子どもさんとを比較すると、傷の治り、経過がガラっと違ってきたのです。
このことが動機となって東洋医学の勉強を始めたわけです。それから患者さんは手術をしたら、手術室ですぐ鍼をやる。すると手術の後、普通なら腫れる傷が、一人も腫れない、また傷もきれいに治るのです。ということは、ものすごく血行が良くなるのですね。
僕の手術は大体7時間かかります。7時間は大手術だから、手術したあと麻酔が覚めてから吐いたり、腰が苦しいという訴えがある。それが鍼をしてからは、一人もいなくなりました。誰も吐いたり苦しんだりする人はいないのです。
そのことを学会で発表したところ、医者のくせにということで他の医者から軽蔑されました。最近は、東洋医学が見直されてきていますが・・・。
東洋医学は人体を宇宙と見る
西洋医学は病気を征服するという考えから出発します。それに対して、東洋医学は人体を宇宙として見ることから出発します。
宇宙はどうなっているかというと第一にバランスです。太陽と地球とか、いろいろなものすべてがバランスによって成り立っています。人間の体もバランスによって成り立っています。そして、このバランスの崩れが、病気の症状、漢方では「証」となって現れることになるのです。
首のこりが重大
西洋医学では、たとえば大きな病院に行って、肩がこるといえば、ばかにされて、膏薬でも貼っておけというぐらいです。
ところが東洋医学では、首、肩がこるというのは、血行が悪くなっているという重大な症状だとするのです。
首から上はものすごく血液が多いのです。首の周りは通路(上に血液を送る通路)なのです。だから首がこるということは、脳までの血液が詰まっているという証拠ということになります。そうなると脳圧が上がります。その結果、脳の血管が破れると脳溢血です。
脳圧が上がると大変だというので、心臓が一生懸命になって首に血液を通そうとします。その結果、心臓のポンプがオーバーワークで破裂したのが、狭心症、心筋梗塞です。
だから首のこりは非常に大切な、命にかかわる症状なんです。
ツボの話
首のつまった症状は、また顔の眉間にも出てきます。眉間が何となく腫れっぽたくなる。
僕は人相学は知りませんが、眉間の状態から症状を見つけることについては百発百発中です。眉間が腫れっぽたくなったら、何か治療をしなければいけません。
さらに小指の先にも心臓のツボがあります。
赤ちゃんの麻酔というのは非常に難しい。ショック死することもあります。うちの赤ちゃんもショックを起こすことがあります。その時、小指の先に注射針を刺すのです。そこから血を一滴、二滴を絞り出すと、心電図がパーッと動き出します。それで麻酔のドクターはビックリしてしまうのですが、すぐ息を吹き返して助かります。
だから幸い私は赤ちゃんを死なせたという経験はいっぺんもありません。また私が医者になってから、患者さんが死んだという経験は一人もありません。
このように小指の先には大切なつぼがあります。救急の時などは、これをするといいと思います。何もなければ小指を噛み切ってもいい、血をちょっと絞り出すのです。
ある時、知り合いの奥さんが脳溢血で意識不明になりました。専門のドクターに診てもらったがどうしようもない。今日か、明日ぐらいでダメだろうということでした。
そこで、私に何とかして欲しいというのです。
私は、両手の全部の指のつぼから、鍼で血を抜くことをやったのです。2時間ぐらいやりましたよ。ところが2時間ぐらい経ったら、そのご婦人がパッと目を覚ました。鼻血をガバッと洗面器いっぱい出して、完全に息を吹き返しました。みんなビックリ仰天です。そして後遺症もなく治ってしまいました。
鼻血が出るということは、脳に溜まっていた血が、鼻からいっぺんに出てしまったということです。
東洋医学のすごさ
このように全身にいろいろなツボがあるということを、昔から経験で知っていた中国人は、本当にすごいと思います。西洋医学だけが医学と思っている人が多いようですが、そうではなくて、世界には、その国独特の医学を持っている国はいくらでもあります。東洋の漢方医学は3000年の歴史があります。3000年も続いているということは、本物だということです。
形成外科と東洋医学
形成外科と東洋医学とはある程度考え方が似ています。
1.一般の外科は、怪我をしたら傷が残って当たり前だ、と考えます。
2.形成外科は、人間は本来傷がないのだから、傷がなくなるのが当たり前だという自然観から出発しています。
3.東洋医学も人体を宇宙として見るという自然観から出発しています。
原点はともに大自然の摂理。非常に似ています。
家内が子宮筋腫と痔の手術とを一緒にすることになりました。大野病院の副院長が、手術の後の痛みが大変なので、モルヒネを一晩に3本用意するから、痛むときに打ってくださいと言うのです。
手術して、モルヒネを3本も打ったのでは、術後の経過が悪くなるので、絶対に打たないで、しかも痛みも起こらないようにしようと、一晩中、僕が家内につきっきりで鍼をやったのです。
家内は翌日まですやすやと寝たままです。痛いなんて全然言わない。モルヒネも1本も打たずにすみました。
このように、手術をしたあとに、鍼をしてあげたら、痛み止めはいらないと思うのです。
私は40年医者をやりましたが、痛み止めを使った患者さんは1人もありません。普通なら、盲腸を手術しても痛いのに、それより大きな手術をしても痛いといった人は1人もいないのです。それほど鍼というのは効果があるのですね。痛み止めを使わないで、経過を良くするには鍼がいい。最高ですね。
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