【現代語訳】
先祖の残された恩恵は何かと言えば、わが身が現在受けている恩恵がそれである。過去の長い年月にわたって積み重ねてきた祖先の苦労のほどを思うべきである。また、子孫の受ける幸福は何かと言えば、わが身が現在残そうとする幸福がそれである。将来の長い年月の間には傾き覆りやすいことを考えておくべきである。
【原文】
祖宗の徳沢(とくたく)を問わば、吾が身に享(う)くる所の者是なり。当(まさ)に其の積累の難(かた)きを念(おも)うべし。子孫の福祉を問わば、吾が身に貽(のこ)す所の者、是なり。其の傾覆の易(やす)きを思うことを要す。
【所感】
中国の古典『易経』は次のように教えています。
積善の家には必ず余慶(よけい)あり。
積悪の家には必ず余殃(よおう)あり。
(善事を積み重ねた家には、子々孫々の後にいたるまで慶応福が及ぶもので ある。不善を積めば、その家は後世まで災禍を受けるものである)。
中国の古典「荀子」は次のように教えています。
善を為す者は、天これに報ゆるに福を以てし、不善を為す者は、天これに報ゆるに禍を以てする。
(善を為す者には、天はしあわせを授け、不善を為す者には、天は禍を下す)
大空に聳え立つ大樹は根っこが土の下でどっしりと根付いているから、百年千年のいのちを謳歌できるのです。 大事なのは根っこです。
私たちの根っこは父母、そして祖先です。
私がこうして存在するためには必ず2人の親が必要です。そしてその両親にはそれぞれ2人の親、すなわち祖父母が4人です。4人の祖父母には8人の曽祖父母、さらに16人、32人・・・・・と祖先が続いていきます。
このように遡っていくと10代前では1024人、32代前になると43億の祖先があることになります。 この43億ある祖先の誰一人が欠けても、私たちはこの世に存在しないことになります。 祖先の中には、食うや食わずで、その日を暮らしかねる貧しい人もあったと思います。
しかし、ここに私が生きているということは、貧乏をしている祖先が、自分の食べ物を減らしてでも子供に与え、自分の着るものを子供に与えてくれたので、子供の命が維持でき、その子孫である私たちがこのように生きているわけです。
いうなれば私たち一人ひとりの背後に、無数の祖先の、
「元気に育ってほしい、立派な人になってほしい」という無償の愛と祈りの心がこめられている気がしてならないのです。
この無数の祖先の愛と祈りの心を思うとき、私たちは祖先の喜ばれる生き方をしなければならないと思います。私たちが世のため人のために一生懸命生きると祖先が喜び、最高の供養になると思います。
次に自分がこれから続く子孫への影響について、考えさせられる事例がアメリカにあります。・・・・・藤尾秀昭氏「小さな人生論�◆廚砲茲蠅泙后�
アメリカのある二人の先祖の150年後の家系調査報告に残る記録があります。大変考えさせられます。
(無頼漢ジョークの場合 )
ジョークは1720年ニューヨーク州に生まれました。怠惰な無頼漢でした。
約150年後の1877年の調査では、 彼の家系は6代を経る中で約1200人の 怠け者、背徳漢、漁色、貧窮、病弱、知的障害、精神病者、犯罪者が生まれた。
この間、300人が嬰児期に死亡、440人が病的な行為で肉体的に破滅。 前科者が130人で、60人が窃盗、7人が殺人、 手に職をつけたのはわずか20人だった。
(神学者エドワードの場合 )
ジョークと同じ時代に生まれたJ・エドワードは代表的清教徒で神学者。
約150年後の1900年に彼の家系は1394人を数えた。 そのうち、3人が大学総長、65人が大学教授および学長、100人以上が牧師や神学者、75日とが陸海軍将校、法律家は100人以上、公職についた80人の中には 副大統領が1人、上院議員が3人、ほかに知事、下院議員、市長、公使などがいる。
15の鉄道、多数の銀行、保険会社、産業会社等がこの家系の人々によって運営されていた。
・・・・以上。
一人の人間の徳の有無が如何に子孫に大きな影響を及ぼすか。私たちは肝に銘じたいものです。
このことから、私たち一人ひとりの身魂磨き、すなわち、人を愛する、尽くす、世のために奉仕する、明るさ、誠実、正直、勤勉など、貴い心や貴い行いは、自分ひとりだけでとどまらず、子孫に大きな影響を与えるのです。
祖先のためにも、子孫のためにも、身魂磨きに真剣に取り組まなければならないとの思いを強くしました。
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