佐藤一斉「言志四録」は人生の知恵を記したものとして坂本龍馬、吉田松陰、勝海舟、郷隆盛、伊藤博文、山形有朋など数多くの幕末の志士たちが範とした名著で全4巻、1133条からなり、今もトップリーダたちの座右の書として高く評価されています。
とくに維新の英傑である西郷隆盛はこの「言志四録」を座右の銘として繰り返し、反復熟読したといわれ、その中から101条を選んで「南州手抄言志碌」として残したほどです。
言志四録は、江戸末期、佐藤一斎が後半生の四十余年にわたって書いた語録であり、『言志録』、『言志後録』、『言志晩録』、『言志耋(てつ)録』の4書の総称で全1133条からなっています。
言志録: 全246条。佐藤一斎42歳(1813年)から53歳(1824年)までに執筆されたもの
言志後録:全255条。佐藤一斎57歳(1828年)から67歳(1838年)までに執筆されたもの
言志晩録:全292条。佐藤一斎67歳(1838年)から78歳(1849年)までに執筆されたもの
言志耋録:全340条。佐藤一斎80歳(1851年)から82歳(1853年)までに執筆されたもの
以下、岬龍一郎「言志四録」より(PHP)。
少にして学べば、則ち壮にして為すことあり。
壮にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。 ・・・・・(言志晩録第60条)
佐藤一斉「言志四録」といえば、誰もが知っている「三学戒」の名文句である。とくに平成13年5月、小泉首相が教育関連法案を衆議院で論議している中で述べてから、いっそう有名になった。
ところで、この「三学戒」の言葉を知っている人でも、「では、その著作者である佐藤一斉を知っているか」と問われたら、おそらく多くの人は「ノー」と答えるだろう。無理もない。じつは、かつて小泉首相が、当時、外務大臣をしていた田中真紀子氏の、あまりなる言動を誡めるために、佐藤一斉の『重職心得箇条』をプレゼントしたことがあった。このとき彼女は「こんな江戸時代のカビの生えた話など要らないわよ」と言い放ったそうだが、おそらく彼女は佐藤一斉のみならず、「言志四録」など読んだこともなかったのであろう。
「言志四録」を一度でも読んでいれば、とてもじゃないが、こんなセリフは恥ずかしくて吐けないはずだ。なぜならこの本は、志を立て、自分の運命を切り開き、世のため人のために尽くさんとする「指導者のための聖書」といわれている本だからである。
今日の日本人の精神が、どこかひ弱になり、それとともに国家も社会も元気がなくなり、倫理・道徳は地に墜ちたといわれる原因は、じつはこうした日本人のバックボーンを培ってきた古典としての思想書が読み継がれなくなったからではないか、と私は思っている。
驚くべきは、その門下生たちである。その数6000人ともいわれるが、一斉先生の全精魂が込められた「言志四録」は、彼ら維新の志士たちに「志とは何か」「武士の天分とは何か」を教え、近代日本を開くための、原動力となった一冊だったといえる。
・・・・以上。
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