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2015年08月19日09:39

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中村天風先生「絶対積極」1


心が土台

 人間が一生を通じて運命的に、あるいは健康的に、生きがいのある人生を生きるためには、心を積極的にするということが第一です。

 ほとんどの方、いや、専門の医者すら、健康の回復には、薬を飲むとか、食養生をするとか、あるいは運動をするとか、またその他の健康法をしていればよい、それで健康が回復すると思っている。このように心より体のほうが大事だと思っている。

 しかし、いくら体のために良いということをやっていても、心の持ち方が積極的にならないと、あまり効果がないのです。結局、心というものは、家を建てる場合の土台と同じで、心の持ち方が少しでも消極的になれば、どんなに合理的で立派な運動法であっても、完全な効果は出てこないのです。

 心を積極的にするということは昔からいわれ、人生のいちばん大事な焦点になっており、そのために宗教や哲学が生まれてきたといえます。
しかし、どうすれば心を積極的にできるかという方法を、今日これだけ文化が発達した現代においても、ほとんどの人が知らずに生きているというありさまです。

 ある時は、矢でも鉄砲でも持って来いという気持ちになる。しかし、ちょっと健康状態がおかしくなったり、運命が少しでも思わしくなくなると、より一層、心を積極的にする必要があるのに、心が青菜に塩をかけたみたいに萎んでしまう。こういうのは心が積極的とはいわないのです。積極的というのは、どんなことがあっても、心の尊さと強さと正しさと清らかさが失われない状態をいうのです。

相対積極と絶対積極

 だいたい多くの人は、積極という言葉の意味を、消極に相対したものとして考えているんです。だから、時によると、積極精神というのは、何か強気な気持ちで、という意味にとらえられ、がむしゃらに強がったり、強情はって頑張るというように考えている。
しかし、これはあくまでも消極に相対しているものだから、相対的な積極なんです。

 私が教える積極精神というのは、消極というものに相対した積極ではなくして、絶対的な積極のことなんです。
 どう違うかというと、たとえば外からの刺激で、痛いとか暑いとか寒いとかの刺激を受ける。あるいは消極的な感情、怒ったり、悲しんだり、恐れたり、そういうものが心の中に起こる。それに対して、これをこらえようとか、これに負けまいとする気持ち、これは相対的な積極なんです。

また、仕事や勉強をする時、あるいは、スポーツをする時、「あいつだけには負けたくない」、なんとかして勝ってやろう、負けまいと思う。

これも積極的な気持ちなんだけれども、相手があってのことでしょう。相手が人間でなくても、なにかの対象に対して、心に張りあう気持ちや、対抗する気持ちがあるでしょう。だから、これは相対的な積極なんです。

では、絶対積極とは、どういう気持ちかというと、これは張りあうとか、対抗しようとかする気持ちが全然ないんです。

心がその対象や、相手に、とらわれていない状態、これが積極的な気持ちというんです。心に雑念とか妄念とか、あるいは感情的な恐れとか、そういったものが一切ない状態。けっして張りあおうとか、対抗しようとか、打ち負かそうとか、負けまいといったような、そうした気持ちではなく、もう一段高いところにある気持ちや境地、これを絶対的な積極というんです。

私の話を聞いた人が、
「先生、おかげさまで、家じゅう健康になりまして、ありがとうございます」とか、
「商売もおかげさまで繁盛いたしまして、家のほうも、本当に平和でございます」こういう礼を言う人をみると、私は、この人、いったい何を聞いてたんだと思うんです。

私が涙が出るほど嬉しいお礼の言葉は、もう一つ上にあるんです。
「先生、ありがとうございました。おかげでこの頃は、うちにどんなに病人ができても、どんな運命的なことが起きましても、以前とはまったく心の持ち方が違うんです。全然、心がいたぶられないんです。ほんとうに天風会の誓いの言葉どおり、怒らず、恐れず、悲しまず、正直、親切、愉快に、力と勇気と信念を持って・・・・。ほんとうですよ、先生。どんなに私の心を乱すようなことを仕向けられても、断然、私の心は始終、平和でございます。憎い人は一人もいません。私の心の中は愛で満ちています。ほんとうにありがとうございます」

こういうお礼だと、私ねぇ、もう抱きしめてやりたいような嬉しさを感じるのです。

つまり、どんな大事に直面しても、どんな危険に直面しても、心がいささかもあわてたり、恐れたり、あがったりしない、いわゆる平然自若として、これに対処することができる状態。どんなめにあっても、どんな苦しいめ、どんな思いがけない大事にあっても、日常と少しも違わない、平然としてこれに対処する。これが私の言う積極精神なんです。

そういう気持ちになってこそ、はじめて人間として立派に仕事をやりとおせ、自分の人生を立派に生きていくことができるんだよ。

昔の歌に「晴れてよし曇りてもよし富士の山」というのがありますね。富士山は、天気だろうが、曇って雲がかかろうが、その元の姿は変わらない。あの状態、あれがいわゆる絶対積極の気持ちなんです。


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