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2015年05月16日11:40

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ブラームス弦楽四重奏全集/アルバン・ベルク四重奏団

【収録曲】
CD1
1 弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.51-1
2 弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67
CD2
3 弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.51-2

アルバン・ベルク四重奏団
ギュンター・ピヒラー(1st Vn)
ゲラルド・シュルツ(2nd Vn)
トーマス・カクシュカ(Vl)
ヴァレンティン・エルベン(Vc)

録音
1&2:1991年12月,1992年4月,Evangelische Kirche,Seon スイス
3: 1991年11月3日,Palais Yusopov,サンクト・ペテルブルク
EMI 7548292(1&2:セッション,3:ライブ)


突然,アルバン・ベルク四重奏団の美音を聴きたくなって,大昔に買った2枚組のCDを引っ張り出してきた。ほとんど聴いていないCDに白羽の矢を立てた。2回ほど聴いただけで放置したのは,ブラームスの弦楽四重奏曲には,このジャンルに求めていたものが欠けていると早々に見切りをつけたからだ。ブラームスのロマンチックな音楽を盛る形式として,弦楽四重奏曲はふさわしくないと直感した。

今回,久しぶりに聴き直してみても,以前の感想と大差はない。ブラームスの爛熟したロマンチシズムをストイックな弦楽四重奏曲の枠組みで表現することは至難の業のようだ。濃厚で豊饒な音楽的着想を表すには4つの声部では足りない。無理を承知でそれを試みると,目の詰んだテクスチャーになってしまい,弦楽四重奏曲の余白の美が損なわれてしまう。

だから,より多くの声部で構成される弦楽六重奏曲の方が,ブラームスの音楽との相性が好いのだろう。また,ヴァイオリン・ソナタ,クラリネット五重奏曲,ピアノ五重奏曲など,ソロ・パートが美しいメロディーを存分に歌わせることができるジャンルもブラームスに向いている。4つの声部が対等に扱われる弦楽四重奏曲の形式では,ブラームスの持ち味がこぼれ落ちてしまうと同時に,どこか焦点の定まらない音楽になりがち。

このディスクを買ったときには気付かなかったが,アルバン・ベルク四重奏団の音色はこの上なく美しい。ブラームスならではの滴り落ちるような甘美さを湛えている。この響きはアルバン・ベルク四重奏団特有の響きではあるが,他の作曲家の作品の演奏にはない退廃の寸前で踏みとどまった陶酔の美がある。このカルテットが持つ音楽の本質を把握する卓越した力量の賜物だろう。それと同時に,ブラームスの音楽に寄せるアルバン・ベルク四重奏団の深い共感の為せるわざでもある。弦楽四重奏曲の歴史に特段あたらしい何かを付け加えたわけでもないブラームスの作品を取り上げた理由はこのあたりにあるのかもしれない。

とりわけ,弦楽四重奏曲第3番の第2楽章アンダンテの歌には,思わずうっとりとさせられる。この熟れ切った美しさは,R.シュトラウスやマーラー,ブルックナーの音楽に通ずるものがある。ブラームスとR.シュトラウスとでは目指す音楽の方向は大きく異なるものの,同じ時代の空気を呼吸していたことにあらためて思い至る。

これはセッション・レコーディングの2曲とライブ・レコーディングの1曲とが混在する,ややユニークなところのあるCDである。ひとけのないスイスの教会と聴衆の熱気につつまれたサンクト・ペテルブルクのホール,全く異なる環境での録音であるにもかかわらず,そのギャップをほとんど感じさせないパフォーマンスも驚異的なレベル。活動期間が40年近くに及ぶアルバン・ベルク四重奏団の絶頂期ならではの緻密で瑞々しい演奏である。

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