落ちていきながら俺は信じてる
1985年9月 LIVE INNのある 渋谷は 滑りのあるようなベタつく暑さだった。まだこの頃は猛暑という言葉は生まれていない。
その年の夏 大阪・PL学園高校が2年ぶり3度目の優勝した。決勝戦、清原和博が1大会新記録となる5本塁打を放つなど、桑田真澄との「KKコンビ」としてのラスト甲子園で有終の美を飾った年だ。だが自分は高校野球に興味を持てず 逆に嫌悪感を抱いていた。自分より 年下の天才がチヤホヤされ、新聞の1面を飾る。そんな記事が何故かしゃくに障った。
LIVE INNは当日券だったのか 前売り券だったのかも覚えていない。ただ客の熱気と「東京のライブハウスは静岡にあったものとまるで違う」という驚きから、そこの空気に馴染む迄かなりの時間を要した。
Opening Theme Tune の 音楽が鳴り止まぬうちに 小山卓治登場
1曲目は
気をつけた方がいいぜ
この時から始まる長い彼へのリスペクト人生のスタートを飾るにこれ以上相応しい曲はないだろう。遠いステージで彼がどんな表情しているのか 読み取る事は不可能であったが掴みはOK。気をつけた方がいいぜ が 火をつけたほうがいいぜ と聞こえる。俺のハートに火がついてしまったのか。
PARADISE ALLEY
アコギとコーラスのイントロが印象的なナンバーが2曲目だ。ようやく前列のお客さんのエキサイトぶりを観察する余裕ができる。サビに合わせ拳を振り上げたり、皆コーラスしている。
Time
裏窓
次々と曲が進むが何か息苦しい。隣の同級生パンク野郎も呆然と立ちすくんでいる。
.Show Time*
ここで新曲を披露するという彼のMCだけ 今も鮮明に覚えている。12インチシングルがどうのこうの 12インチがお洒落な時代、それが80年代半ば 自分もビックカントリーのレコードを持っていた筈だ。
ILLUSION
知ってる曲も知らない曲もあったが、やはりこの曲のイントロが流れた時は 涙腺がきれた。お客さんの殆どが
半端な夢を見続ける
と叫んでいる気がした。それは自分の耳に入ってきたのか
それとも自分の心の声なのか 今でもよく解らない。
この日はもう一つの新曲 微熱夜*を2回演奏している。
実は自分の脳みそに
記憶されているのは オープニングの2曲と
微熱夜*を2回演奏した ILLUSION
に心震えた 事 位だ。
酸素の薄い小屋の一番後ろで佇み、ただ圧倒されていた。
いったい最前列で燃えている奴らは どこでこんな宝物を
手に入れたんだ。
そう 一人ひとりに聴いて廻りたい心境だった。
今は
インターネットを検索すれば 30年前のセットリストがいとも簡単に引き出せてしまう。なんと便利な時代だろう。
でもこの1985年にインターネットが存在したとしても、自分は卓治の唄に出逢えただろうか。
ライブの帰り道 パンク野郎と居酒屋に入り 当時はまだまだ飲めない自分だったが 浴びるようにお酒を飲んだ、語った、喚いた、彼と言い合いもした。 自分の中でその日の夜の出来事で何かが弾け何かが変わった。当然二人とも学生寮は門限破り、しばらくして 二人
とも退寮した。学費を稼ぐために必死でアルバイトしたのに、次の年の3月俺は学校すらも辞めてしまった。
まあ中退と卓治はそんなに関係ないような気もするけど。
続く
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