表参道の喫茶店「大坊珈琲店」のマスターに、
すっかり魅了されてしまった人のためのコミュニティ。
大坊さんが一杯一杯をネルドリップで淹れてくれる姿は、
もはや崇高な雰囲気さえ感じます。
そんな大坊さんとそのお店のファンはきっと多いはず。
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あなたがどこに住んでいるのか僕は知りませんが、もし東京にお住いなら、青山通りの表参道交差点近く(赤坂寄り)にある「大坊」というコーヒー屋さんのコーヒーはとてもおいしいですよ。僕はだいたいいつも「3番」の濃さで飲んでいます。ここは豆もわけてくれます。 (村上春樹『夢のサーフシティー』より)
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文士などの著名人に愛されてきた喫茶店の傾向は大
きく2つ。1つは作家・芸術家たちが集まり、論議を重ねた
店。もう一つは、コーヒーをじっくり味わいながら、作品へ
の構想を膨らませた店です。
脚本家・向田邦子氏が生前に通っていたという大坊珈琲
店は後者の趣。「どういう空間で何をしながらといった形式
などなく、コーヒーの味わい方は人それぞれ」と話す店主・
大坊勝次氏は、コーヒーを味わう人がそれぞれの空間を
演出してきました。
棚に並べられたたくさんの本、壁に調和するように飾られ
た絵画と生花 ―柔らかな日光が差し込む空間で提供され
るコーヒーは最適の温度で抽出され、じわっと舌になじむ味
わい。豆とお湯の量を指定するブレンドの20g100ccがお気
に入りだったという向田氏は、この一杯を楽しみながら、店主
の手元やお客の様子を観察したり、作品への構想を膨らませ
ていたのかもしれません。
「不思議なことに、向田さんがいなくなったという実感はなく、
今もコーヒーを飲みにいらっしゃるような気がしますね」と大坊
氏。向田さんが通った当時はまだ新しかった店が、老舗とも言
える存在となった今も、当時と同じ空間を守り続けています。
(メトロガイド 2010年3月号より)