大江戸線を中心に、鉄道駅におけるデザインとパブリックアートについて考える見学会を主催、または、紹介するコミュニティーです。
見学先は、講師が深く関与した「大江戸線」がメインとなります。
以下、講師からのコメントです。
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「テーマパーク駅」と「地下の現代美術館」
―大江戸線の駅舎デザインとパブリックアート作品「見学会」のご案内―
<個性的デザイン駅の魅力化戦略の「出発点」から見える、モノとコト>
都市住民にとって、最もなじみ深い公共空間というと、おそらく鉄道の駅ではないでしょうか。
その駅がこの5年ほどの間に大変貌を遂げたことに、日々の通勤電車等の中で薄々感づいている方も多いと思います。
最近では、横浜「みなとみらい線」6駅での斬新な駅デザインやJR新幹線「品川駅」のサイン計画、「九州新幹線」新水俣駅のユニークな駅舎デザイン等がマスコミで話題になりました。平成17年8月24日には、常磐新線「つくばエクスプレス」20駅で個性的デザインの駅舎が開業しました。
また、JR東日本が展開している「エキナカ・キャンペーン」などは、商業施設を巻き込んだ形での、鉄道駅の魅力化戦略であり、アート化の元となった考え方の「変形」ともいえるでしょう。
そうした流れの先駆けとなったのではないか、と私が考えているのが、平成12年12月12日に全線開業した都営地下鉄大江戸線環状部(26駅)の改札口付近にコンペ等で350を超す応募作品の中から選ばれ設置された質の高いパブリックアート「ゆとりの空間」作品とプロポーザル・コンペ方式で選ばれた新進気鋭の15建築家により駅周辺の歴史や文化を取り入れ、テーマ性を持った個性豊かなデザイン・意匠を施された駅舎建築です。
私は、その「ゆとりの空間」のアート作品(29点)の制作費の寄付金集めとアート作品選考・設置の実務に従事し、大江戸線環状部(26駅)を紹介する写真集「駅デザインとパブリックアート」を企画・編集し、1万冊を制作しました。
爾来今日まで、このアート作品と駅舎建築を私が解説しながら案内する「12駅見学ツアー」を開催してきています。
内容は、環状部26駅に展開され「地下の現代美術館」ともいわれている優れたパブリックアート作品(29点)と「テーマパーク駅」ともいわれている個性豊かなデザイン・意匠が施された26駅舎の中から代表的な12駅を選んで、その特徴・工夫点、開業に至るまでの経緯、苦心談・反省点等を解説しながら案内するもので、併せて開業後の大江戸線の維持管理状態を見守ってきております。
これまでに計64回開催し、累計参加者は、1,900名を超えるに至りました。今後も参加者がある限りボランタリーで続けて参りますので、もしご興味がございましたら、下記開催日に一度おいで下さいますよう、ご案内いたします。
参考1:「ゆとりの空間」概要、「写真集」、東京都交通局主催「12駅見学ツアー」の紹介
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(※東京都交通局主催のツアー申込登録者には、傷害保険が付保されます。)
参考2:私が監修した「JDNの大江戸線環状部26駅の写真・文章による詳細レポート」の紹介
http://
<大江戸線の「ソフト」と「ハード」>
大江戸線の環状部26駅は、プロポーザル・コンペ方式で、77の応募者の中から選ばれた新進気鋭の15建築家により、駅周辺の歴史・文化を取り入れたテーマをもとに、個性的な駅舎デザインや様々な意匠が施されており、いわば「テーマパーク駅」です。
また、各駅改札口付近には、企業等の全額寄付により、350を超す多数の応募作品の中から、コンペ等により厳正に選ばれた質の高いパブリックアート作品が設置されており、いわば年中無休の「地下鉄(現代)美術館」といわれています。
ハード面では、都市インフラ(既存地下鉄路線、電気、ガス、上・下水道、電話など)の下を掘り下げるために、六本木駅(42m)や飯田橋駅(38m)に見られるように極めて深い駅が多く、難工事の連続でした。
また、経済的に建設するためにトンネル断面積を既存路線の約半分にし、三心円・四心円泥水式シールド工法を採用しています。
さらに、経費節約のために公道下を出来るだけ多く通過するべく急カーブ・急坂に強い鉄車輪式リニア・モーター車両を採用するなど、数々の工夫を凝らしています。
これらハード面に対し、2000年と2001年に土木学会・技術賞が授けられています。
ソフト面に対しては、特に優れたデザインの選抜10駅(新宿西口駅・牛込神楽坂駅・飯田橋・春日駅・森下駅・清澄白河駅・大門駅・赤羽駅・麻布十番駅・国立競技場駅)に対して、2001年にグッドデザイン賞(金賞)、SDA賞(入賞)が、また建築家・渡辺誠氏が設計した飯田橋駅に対して、インター・イントラ・スペースデザイン賞(大賞)、日本建築家協会・新人賞、2002年に日本建築学会賞、2003年に建築設備綜合協会・最優秀賞、汐留駅のアート作品「日月星花」(高橋節郎・原画)に対して第1回パブリックアート大賞(国土交通大臣賞)など、数々の賞が授けられています。
※グッドデザイン賞とSDA賞の応募書類は、渡辺誠氏と講師が共同で、パブリックアート大賞は、講師単独で書きました。
私は、平成11年4月から5年余、大江戸線環状部に関与し、このパブリックアートの寄付金集めとアート作品の選定・設置に従事しました。
経済不況下での寄付集めは大変でしたが、なんとか全駅にアート作品(計29点)を設置する寄付金を集めることに成功しました。
アート作品の作家は、高橋節郎・片岡球子の文化勲章受賞者や伊藤隆道・矢萩喜従郎・渡辺豊重・五十嵐威暢・飯塚八朗等の個性的実力派から無名作家までとバラエティーに富んでいます。
さらに韓国籍(趙慶姫・金昌永)とベルギー籍(ルイ・フランセン)を加えました。
また、従来の大壁画27点だけでなく2点の立体造形を、アート作品素材は、よく見かけるタイル・陶板・金属だけでなく、自然石・銅板・砂・樹脂・ガラス・LEDなどと、変化をもたせました。