ピタゴラス

【ピュタゴラス（ピタゴラス）】（紀元前582〜497）
ピタゴラスは古代ギリシャの自然哲学者。アテネの植民地であったサモス島の出身。彼は「ピタゴラスの定理」を発見した数学者であり、【万物の元の根源要素は数である】との主張は、哲学を具体から抽象の領域へと拡大させ立体的に色づけた。また、彼の学派は点こそが完全な形であると考え、球体地球説・球体宇宙論・地動説を、すでに唱えていたと伝えられる。宗教・道徳・学問・音楽などの統一解釈は、プラトンにも影響を与えるものとなる。

★旅の神秘性
　ピタゴラスの本質は【旅人】であり、それは魂の浄化を求める旅であったという。30代後半に故郷を出遊し、ミレトスにいってアナクシマンドロス(自然哲学者)やターレス(最古の哲学者)に会い、エジプト旅行で縄張り師(幾何学測量士)に会い、3：4：5の直角三角形の洗礼を受た。バビロニア(イラク)紀行のおりに、ゾロアスター(預言者＆宗教祖)に出会ったという憶測めいた一件もある。さらにインドまで足をのばしたとの説もある。
★神秘教団
　その後、南イタリアのクロトンに一種の神秘的な宗教的学術団体を作って、ピタゴラス学派を創始した。ピタゴラスは他の哲学者に先がけて女性の入信を受け入れ、財産・認識の私有制の放棄を実践してみせた。この教団は当時のヨーロッパ思想としては珍しく【霊魂の不滅と輪廻】を信じ、肉体の中に閉じこめられた魂を浄化するため、戒律が重視された。数学や音楽の研究も、【魂の浄化の手段】であり、世界は数的調和・音楽的調和によって統一されているものとされた。
★数のコスモロジー
　「数とは如何にあるか？」を問うことが彼らの日常だった。学科としては天文学、音楽、算術、幾何学の四科。実利的、世俗的努力は一切排し、【数は宇宙を支配する】という数秘術がピタゴラス学派のメインテーマになる。万物は、奇数（限りあるもの）と偶数（限りなきもの）からなると考え、カバラ数秘術の元になったとされている。
★宇宙的音階
　ピタゴラス教団は、【数は天界の調和音を封印し、宇宙を支配する】を旨とする音楽教団でもあった。数が万物の根本原理であり、万物は数の関係に従い、秩序あるハーモニーコスモスを創るとする。天界の調和音を封印する数、ここでの数は抽象的概念ではなく、単位1を表す。ムーシケー（musike）がミュージック（音楽）の語源であるが、ムーシケーは太陽神アポロンに仕える女神「ムーサ（Mousa）がつかさどる９つの技芸(抒情、叙事、悲劇、喜劇、舞踊、歴史、天文)」という意味。
人間にも動物にも神にも通じる「神的なもの」を意識させる不可思議な力を具える音に、ピタゴラスは数の神秘を見た。ピタゴラス自身が宇宙数的構造のような考えを抱くにいたったのは、音階が絃の長さの簡単な整数比で表されることを発見したことによると推定される。さらに人が聞いて心地よい和音は、弦の長さが簡単な整数比で表せるという。だから彼らは万物の根本原理を数だと考えたのだ。
★神秘教団、秘密結社の原型
　今日、「組織」を想起するとき、そこに「宗教性」と「企業性」という両極の偏向がみられる。ピタゴラス教団は歴史上のあらゆる神秘教団、秘密結社の原型＝ヘテロフォニーが存在する。教団は紀元前4世紀頃、いったん消滅したが、紀元前1世紀に新ピタゴラス派として再興し、ユダヤ教の神智学に影響を与えた。後世のアインシュタインも物理学徒というより、ピタゴラス学徒と呼ぶにふさわしい存在だった。ちなみに、ピタゴラス教団のシンボルマークは正五角形と正十二面体であったという。

■黄金比(1：1.618)
　最も美しいとされる比。線分を a, bの長さで 2 つに分割するときに、a : b = b : (a + b) が成り立つように分割したときの比 a : b のことである。黄金比は五角形の中や、歴史的建造物、美術品、準結晶の中に見出すことができる。また、自然界にも表れ、植物の葉の並び方や巻き貝の中にも見つけることができる。黄金比で長さを分けることを黄金比分割または黄金分割という。　また、黄金分割の網状組織で創作された絵画は世界中にあり、一見普通の絵柄でも、どうしてか美しさをそこに見てしまう。ルネサンス期を代表する万能の天才「レオナルド・ダ・ヴィンチ」や「ミケランジェロ」など、黄金比に魅せられた人物は数知れず。
■数秘占い
　ピタゴラス学派の数秘術では、たくさんの事態数が編み出されていた。たとえば両性数、男性数、女性数、生成数、派生数、能動数、受動数、素数、合成数、超過数、不足数、不定数、定数、社交数、反発数、社交数、反発数、友愛数---などである。また、仏教世界も数秘術のオンパレードであり、数の宇宙論を概念の基盤にしている。
■不思議な数秘術
　 1×9+2= 11
　 12×9+3= 111
　 123×9+4= 1111
　 1234×9+5= 11111
　 12345×9+6=111111
■ピタゴラスの定理
直角三角形において，斜辺の長さをc、他の二辺の長さをa、bとするとき、ｃ2(二乗)=ａ2+ｂ2

【ピタゴラスの名言】
・万物の元の根源要素は数である。
・己を制し得ぬ者を自由人とは言えぬ。
・線は点で出来、点こそが完全な形である。
・怒りは無謀をもって始まり、後悔をもって終わる。

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