Richie Hawtin率いるMinusに於いて、その中心的アーティストとして常に脚光を浴びている1人がHeartthrobことJesse Siminskiである。デトロイトから北へ6時間ほど離れたマルケットという地方都市で育ったJesseは、ギターリストとして幾つものバンドでプレイする父親の影響から、幼い頃からロックはもとよりファンクやレゲエなど様々な音楽に慣れ親しんでいた。中でもLaid Backの「White Horse」とKraftwerkの「Tour de France」は、その後の彼の音楽性に大きな影響を与えている。1996年にテクノと出会った頃、Plastikmanの「Gak」によって一気に開眼した彼は即座にターンテーブルを手に入れ、シンセサイザーの物色を始め、父親が所有していたレトロな70年代の機材で音楽制作を開始する。現代美術を学びながらも彼の音楽に対する情熱は醒めることなく、1999年にニューヨークでMagdaとTroy Pierceとの出会い経て、Richie Hawtinがニューヨークへ活動拠点を移した事も相まって、ニューヨーク・テクノ・シーンの一員としてその潮流に身を任せるのは自然の流れであった。2006年、Richie Hawtinのスタジオで制作されたDepeche Modeの「Personal Jesus」のリミックスとコンピレーション『min2MAX』に収録された「Baby Kate」でHeartthrobのサウンドを見事に確立した。「Baby Kate」はミニマル・テクノ・シーンの爆発的な人気を裏付けるかの様に、その代表的なアンセムとして、その後数年に渡って世界中でプレイされ続けている。自身の音楽的アプローチを「白昼夢〜意識の流れ」と語る様に、実験的かつ感情的と呼べるサウンド・プロダクションは、テクノというジャンルに捉われない果敢な冒険心と変化に溢れている。Minusの中枢神経の一部と言われるHeartthrobのライヴ・セットは、今日も世界各地のオーディエンスを熱狂させている。
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