ブラフマー、シヴァと共にトリムールティを形成する、ヒンドゥー教の最高神。ヴィシュヌとは、「vis (広がる、行き渡る)」を語幹とし、『リグ・ヴェーダ』において、太陽の光を神格化した神であった。ヴェーダ時代は、数ある太陽神の一つである彼だったが、後のヒンドゥー教の時代になると、様々の英雄達を自分のアヴァターラ(化身)として取り込むことによって、シヴァと並ぶ最高神の地位を獲得したのである。彼の10あるアヴァターラは次のようである。
・マツヤ(魚)
・クールマ(亀)
・ヴァラーハ(野猪)
・ヴァーマナ(矮人)
・ヌリシンハ(人獅子)
・パラシュラーマ(斧を持つラーマ)
・ラーマ
・クリシュナ
・ブッダ(仏陀)
・カルキ(救世主)
ヴィシュヌはその名の意味の指す通り、ダルマ(正義)が失われ、アダルマ(不道徳)が世界を覆う度に、ヴィシュヌはアヴァターラとして地上に現れ、悪を滅ぼすのである。化身の数は、多いときは22種挙げられることもあるが、一般的には上の10の化身(ダジャ・アヴァターラ)がよく知られている。
また、ヒンドゥー教のヴィシュヌ派によれば、宇宙がまだ混沌でしかなかった時代、ヴィシュヌはアナンタの上で眠っていたという。やがて、彼の臍に1本の蓮の花が咲き、その中からブラフマーが生まれた。そして、その額からはシヴァが生まれたのである。
ヴィシュヌは、前述したアナンタの上で寝たり、腰掛けている姿で描かれることが多い。仏教で言う半跏(片足を、もう一方の足に乗せる座り方)の形で座り、4本の腕にそれぞれ持物(仏教で言う、仏像の持ち物)を持っている。第1の手には、法螺貝のパンチャジャナ。第2の手には、ヴィシュヌのシンボルとも言えるチャクラを。第3の手には、カウモーダキーという棍棒。第4の手には、蓮の花が握られている。
ヴィシュヌはメール山の中心にあるヴァイクンタを居城とし、妻ラクシュミーと共に暮らしている。