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ラフマニノフ - 楽興の時

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詳細 2017年11月5日 02:33更新

《6つの楽興の時(仏語:Six Moments Musicaux ; 露語:Шесть Музыкальных Моментов)》作品16は、セルゲイ・ラフマニノフが1896年の10月から12月にかけて作曲したピアノ曲集であり、ラフマニノフのピアノ独奏曲への復帰作にして、ピアノ曲作曲の転換期と位置付けられている。 題名はフランツ・シューベルトの前例を連想させるが、超絶技巧の要求やピアノの書法は、ショパンやリストの影響が見受けられる。《楽興の時》を構成する一つ一つの楽曲は、19世紀に特徴的な音楽形式の焼き直しであり、ラフマニノフは作品の肉付けに夜想曲・舟歌・超絶的練習曲ならびに変奏曲といった楽式を用いている。
全曲の演奏に30分ほどを要する。

第1番 変ロ短調「アンダンティーノ」

第2番 変ホ短調「アレグレット」

第3番 ロ短調「アンダンテ・カンタービレ」

第4番 ホ短調「プレスト」

第5番 変ニ長調「アダージョ・ソステヌート」

第6番 ハ長調「マエストーソ」

それぞれの楽曲は、「真の演奏会用の作品であり、コンサート用のグランドピアノを使えば最も舞台栄えする」と評されてきた。各曲は組曲を構成しながらも、個別の主題や気分をそなえた独立した楽曲として成立している。それぞれの主題は変化に富んでおり、第3曲の厳粛な葬送行進曲から第6曲の壮麗なカノンに至るまで幅広い。
1941年のインタビューでラフマニノフは、「私が楽譜を書き下ろすときにしようとすることは、自分が作曲しているときに心の内にあるものを、単純明快に飾らずに表現することです」と述べている。《楽興の時》は、たとえラフマニノフがお金に困っていたときに作曲されたにしても、それまでのピアノ曲の作曲の知識を総括する作品になっている。

第1曲の「アンダンティーノ」は、息の長い内省的な旋律によって曲集の始まりを告げ、急激なクライマックスへと畳み掛ける。
第2曲「アレグレット」は、ラフマニノフの演奏技巧の熟達を告げる、曲集中では最初の小品である。
第3曲「アンダンテ・カンタービレ」は、前後の曲と鮮烈な対比をなしていて、「葬送行進曲」とか「哀歌」と呼ぶにまさしく相応しい。
第4曲の「プレスト」は、ショパンの《前奏曲》などに着想を得て、濃密な旋律の爆発を綜合している。
バルカローレ形式の中休みである第5曲「アダージョ・ソステヌート」の後、声体の重厚なテクスチュアによる終曲の「マエストーゾ」が曲集を締め括る。かくてラフマニノフは、《6つの楽興の時》において「自分の心の内にあるもの」を完全に描き出している。
本作は、題名からも明らかなように、シューベルトの同名のピアノ組曲(作品94、1828年)に着想を得ている。「家庭向けの小品」から構成されたシューベルトの同名作品がラフマニノフの作品の華麗さを欠いているという点は注目すべきであろう。またシューベルトの作品に比べると、全般的に短調に傾き、総じて悲愴感を漂わせた壮烈で重厚な表現がきわ立っている。第2番の華麗で豊かな響きはショパンの《練習曲》の、第5番は《夜想曲》の特徴を受け継いでいる。第2番は初版のほかに1940年の改訂版が存在し、現在は通常、改訂版で演奏されることが多い。

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