自由意志の問題とは、理性的な行為者が自己の行為および判断に対するコントロールを行うことができるか否か、また、それを行うとはどういう意味なのかという問いである。この問いに取り組むには、自由と因果との関係を理解し、そして自然法則は因果的に決定しているのかどうかを判断しなければならない。様々な哲学上の立場が、あらゆる事象は決定されているか否か(決定論VS非決定論)について、また同様に、自由は決定論と共存できるか否か(両立主義VS非両立主義)について意見を違えている。それゆえに、例えば、固い決定論は、宇宙は決定論的であり、このことが自由意志を不可能にすると主張している。
自由意志の原理は、宗教的、倫理的そして科学的原理の絡み合いから成っている。例えば、宗教の領域においては、自由意志は、万能な聖なる存在すなわち神はその力を個々の意志や選択に及ぼさないということを含意しているだろう。倫理学においては、自由意志は、個々人は自身の行為に対して道徳的な説明義務を負っているということを含意しているだろう。科学の領域においては、自由意志は、脳と思考を含む身体の動作が物理的な因果律によって完全に規定されているわけではないということを含意しているだろう。自由意志の問題は、哲学的思索が始まって以来、中心的な論点であった。