【 Musikalisches Opfer 】
音楽の捧げものはヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した、1つの主題に基づく16の作品からなる曲集。フーガ2曲と4楽章からなるトリオソナタ、並びに10曲のカノンが含まれる。
大王の主題
バッハが1747年5月7日にフリードリヒ大王の宮廷を訪ねた際、ハ短調のテーマ (Thema Regium) を大王より与えられた。
バッハは、これを用いてその場で即興演奏を行なったが、二ヵ月後に作品を仕上げ、「王の命による主題と付属物をカノン様式で解決した」 (Regis Iussu Cantio Et Reliqua Canonica Arte Resoluta) とラテン語の献辞を付けて大王に献呈した。献辞の頭文字をつないだ言葉 RICERCAR (リチェルカーレ)は、「フーガ」様式ができる前の古い呼び名である。
大王の主題が全曲を通じて用いられたこの曲集はその後「音楽の捧げもの」として知られている。伝説によれば、王の与えた主題を用いて即興演奏を求められたバッハは三声のフーガを演奏。続いて六声のフーガの演奏を求められたが、さすがに即興では難しく、自作の主題によってその演奏を行った。後にその場で果たせなかった六声のフーガを含むこの作品を王に捧げたといわれる。
曲の構成
2曲のフーガはリチェルカーレと様式名が付けられている。一曲は三声のフーガで、これが王の前での演奏に近いのではないかとも言われる。もう一曲が六声のフーガである。10曲のカノンは「謎カノン」という独自の様式で書かれた。すなわち単旋律に記号が付されており、演奏者はその記号に基づいて曲を完成させねばならない。また、四楽章からなるトリオソナタが含まれ、これにのみ楽器の指定がある。
1つの主題に基づいて複数の対位法的作品を作るという同一のコンセプト、及び主題の類似性から「フーガの技法」との関連が指摘される。
困ったときには