傘をパクるな!!
…
「パクられたからパクろう」
の限りない輪廻を断ち切るため立ち上がる人のコミュニティー
傘を公共財と思うな!!
パクるくらいなら買えよ!!
傘を傘単体の原価で捉えてはならない。
その背後には、雨の中、傘を使ってでもどこかに行きたかった誰かがいるのだ。
僕らは傘パクリを許さない
傘をぱくらないことへのコミットメントでも
以前、傘をパクってしまったことに対する懺悔でもいい。
しかし、僕らは傘をパクらない
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2年前の梅雨のことだった…
突如襲ってきたにわか雨が僕の肩を濡らしていた。
傘の用意はしておらず、大きな雨粒と寒冷前線が僕の体温をあっという間に奪っていった。
途方に暮れながら駅に向かって走る僕の影は雨雲にかき消されていた。
「ついてない。」
そう息切れしながら呟いた。
雨やどり出来そうなバス停をやっと見つけて滑り込んだが、バッグの中にある本は雨に濡れ、資料はインキがにじんでしまっていた。
雨粒を弾いて見にくくなっている腕時計に目をやり、それからまた空を恨めしく見上げた。やむ気配はない。
「ついてない。」
一限目の授業は中間テストだった。
遅刻を覚悟したその時、バス停にひとりの女の子が入ってきた。年は自分と同じか一つ下といったところだろう。
彼女は傘の水滴を地面に向かってはらうと、腕時計と空を交互に睨む僕の方を見た。
彼女は申し訳なさそうに口を開いた。
「あの……雨やどりですか?」
「うん…でもしばらくはやみそうにないね…」
急な会話にどぎまぎしながらも無難に返した。
「この傘……使います?」
耳を疑った。なんで…
「君が傘を使えなくなっちゃうよ。」
「ううん。あたし今からバスに乗って学校に行くんです。バス停から学校への道は雨に濡れないから大丈夫。だから気にしないで使ってください。」
女の子は遠慮がちに傘をこちらに差し出してきた。
「そんな、さすがに申し訳ないよ。」
抵抗感こそあれど僕は傘が喉から手が出るほど欲しかった。表情にも出てたに違いないだろう。
「いいんです。あなたに使ってもらった方が。」
そう言うと彼女は僕に無理やり傘を押し付け、傘から手を離した。
「本当にありがとう。今日は大事なテストがあるんだ。助かったよ。何かお礼ができればよかったんだけど。」
「いいんですよ。お礼なんて。」
「じゃあせめて名前だけでも教えてくれよ。忘れないよう孫に言い伝えたい。」
照れ隠しに少しおどけてみせると彼女もはにかみながら笑ってくれた。
「じゃあ…あたしmixiで[傘をパクるな]ってコミュニティの管理人をしてます。よかったらそのコミュニティに入ってください。」
「お安い御用さ」
そう言うと同時にバスがやってきた。彼女はバスに乗り込みながら言った。
「約束ですよ!」
僕は頷いた。
彼女が背を向けたのを確認すると、傘を片手にバス停を飛び出し再び駅へと急いだ。
これが僕がこのコミュニティに入ったきっかけだ。
彼女は今はもうmixiを退会してしまったが、きっと戻ってくると僕は信じている。
このコミュニティは彼女が帰ってくるまで
僕が守る。
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困ったときには