尖閣諸島について議論はあるものの、もっと沖縄の立場から主張するべきです。尖閣諸島は昔から沖縄の漁民の生活圏に入っていました。
沖縄人は経済に困っているのに欲がなさすぎる。琉球の領土なのですから、誰にも遠慮は入りません、もっと主張しましょう。
JANJAN沖縄通信より
尖閣諸島にみる政党や政府の領土意識の欠如 2006/08/11
日本の領土を取り巻く問題は何ひとつ解決されていない。北方四島、竹島は依然として返還されていない。沖縄の本土復帰によって琉球列島はすべて日本の版図に組み込まれたのに尖閣諸島は中国、台湾政府との間に境界をめぐってマスコミを賑わわせている。この南の島々についての政党などの発言、外務省のとった態度などを沖縄側から考えてみた。
九州から南へ弧状に連なる島々は、一般に琉球弧と総称されている。九州島から台湾島までの全長1300Kmの海域に飛び石を置いたように弓状にならぶ島々である。北から大隈諸島、トカラ列島、奄美諸島、沖縄諸島、先島諸島がほぼ弓状に位置している。その太平洋側に大東諸島があり、先島諸島と中国大陸の間に尖閣諸島があるので、この2つの諸島は地学的には琉球弧に含まれないが、古くから琉球に属してきた島嶼(とうしょ)群である。
琉球は、中国を宗主国とし、その服属国という立場にあった。服属国は宗主国に貢物をした。つまり進貢である。近代以前、東アジアの中心が中国であり、周辺国は琉球と同じく中国を宗主国とした服属国であった。服属国がその国の特産品などの貢物をすると、中国はそれ以上に贈り物をした。服属国は中国の進んだ文化や技術を必要としていたので、許された範囲で交易を行い、中国の珍しい文物などを自国に持ち帰った。それを進貢貿易という。それができる国は冊封(さっぽう)関係が結ばれていた。その関係は宗主国・中国の皇帝が使者を遣わして服属国の国王を任命することで始まった。冊封関係を結んでも宗主国・中国は服属国の主権を侵したり、政治や宗教、歴史認識などに言及することはなかった。
琉球が初めて冊封関係を結んだのは1404(応永11)年で、琉球の中山王・武寧は父の察度の死を報告し、冊封を請うた。その冊封の礼を行うため使者を派遣した。尖閣諸島は中国(門港)から琉球に向かう冊封船の標識島として活用されていた。そのとき、中国には琉球への航海の経験者がいないので、琉球からの進貢船を待って出港している。そのとき、中国の船で航路を指示し、中国側に航路の標識になる島を教えたのが航海に習熟している琉球の看針通事である。そのときに中国側は尖閣の島々の名称を知ることになる。その記録が『冊封使録』である。
故・井上清氏は『「尖閣」列島-釣魚諸島の史的解明』(現代評論社)の中使で、こうした歴史的な流れを省いて考察しており、その論拠は完全に崩れている。『冊封使録』は次の冊封使に航海の記録として残し、航海の不安や苦難をさせないために書かれたものである。この『冊封使録』は琉球の最後の王国・尚泰の冊封のときまで行われている。
これまでにも井上氏の説を覆した論文に用いられた資料であるが、最近、沖縄県宜野湾市の溶樹書林から発行された原田寓雄著『尖閣諸島 冊封琉球使録を読む』では、ことごとく井上教授の主張を無力化させている。また主張の根拠がなく、虚偽を述べていることが指摘されている。原田氏は1927年京都生まれ、京都大学卒業の医師。1967年に日本政府派遣の医師として来沖。それ以後、琉球に関する研究を続け、『使琉球録』『冊封琉球使録』『使琉球録』など多数の訳注書を出している。原田さんは「琉球使録とそれに近い記録から、尖閣諸島とその周辺の記録を紹介」している。井上教授の主張に詳しく事例を挙げて反論している。
井上教授の主張は沖縄国際大学の緑間栄教授の『尖閣列島』(ひるぎ社)でも崩されている。しかも琉球王国時代の東南アジアへの航海の実績を述べ、琉球人の航海技術がすぐれていたことを紹介している。井上教授は『「尖閣」列島』の中で「どのような政治的選択をするにしても、それは歴史的な事実のしっかりした認識の上になさるべきである」と述べているが、原田氏や緑間教授の著書を読む限り、その主張は疑問に思った。他にも原田氏らと同じ主張の論文があるので、尖閣諸島を中国領土という主張は「歴史的な事実のしっかりした認識の上に」なされていない、と言わざるを得ない。
琉球王国からの流れをみると、中国の領土でないことは明白である。日本の学者文化人はなぜ尖閣諸島を中国領土と主張してきか、筆者は不思議でならない。過去を調べてみると、意外にその主張が多いのにびっくりしている。特に沖縄の日本復帰以後の報道に散見される。1972(昭和47)年4月18日付け『毎日新聞』は「尖閣列島は中国のもの 文化人らが声明」という見出しの記事を掲載している。
記事によると、ルポライターの石田郁夫氏らが記者会見し「尖閣列島は日清戦争で日本が強奪したのであり、歴史的にみれば明らかに中国固有の領土である。われわれは日本帝国主義の侵略を是認し、その侵略史を肯定してしまうことはできない」との声明を発表している。この声明には荒畑寒村(評論家)、小田切秀雄(法政大学教授)、羽仁五郎(歴史家)3氏らをはじめ文化人95人が賛同している。もちろん、井上教授の名前もある。記事は「日本で『尖閣列島は中国の領土』というのは初めて」とある。それはまったく初めてのものだろう。沖縄の者はびっくりするか、荒唐無稽な話と思っている者が多かろう。しかも、石田氏ら4人が世話人になり、「日帝の尖閣列島略奪阻止のための会」(仮称)としてシンポジュームも開き、広く国民に訴えていく、とある。
(比嘉康文)
参考書籍:
「尖閣」列島-釣魚諸島の史的解明(amazon)
尖閣諸島-冊封琉球使録を読む(amazon)
JANJAN沖縄通信
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尖閣列島に関する琉球立法院決議および琉球政府声明
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新沖縄独立論
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尖閣諸島の領有権問題
http://
日本から分離した琉球列島の地図(米国統治時代の南西諸島図)
http://
困ったときには