ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

スピリチュアリティーの学際研究コミュの心身症の多くはスピリチュアルな問題がかかわってるのではないか

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1.問題

患者や家族の気持ちを無視して延命治療に専念することの無意味さは周知の事実となり、在宅医療が見直され、患者の権利意識も高まり改善されるようになってきた。疾病治療のみを見つめる機械的医療行為の残酷さに関しては、認知度が高まっていると判断してよいであろう。QOL向上には医療倫理的アプローチとともに、心身医学の考え方や態度・理念が多大な貢献をしてきた。
全人的医療への見なおしから補間代替医療が注目されてくる中で、スピリチュアリティや魂の事柄に関し、様々な分野で討議されるようになってきた。このような時代の要請に応え、心身を超越したスピリチュアル・ヘルス概念について整理しておくことが重要である。
医療の目的は健康回復・増進であることは言うまでもないが、健康を心身に限定してスピリチュアルなあり方を無視した場合、様々なひずみがあらわれて来る。それが、いわゆる原因不明な症状群や現代に特有な社会病理として観察される。
スピリチュアル・ペインやスピリチュアル・ケアという概念が提唱されてきたが、現状ではまだ末期患者の死の準備に限定して捉えられる傾向がある。スピリチュアリティの問題は、宗教や倫理観といった価値観がかかわってくるデリケートな領域であるため、討議するのに慎重な姿勢もうかがえる。しかしながら、非定型的うつ状態など近代に特異的な病態は、マインドではなくスピリットの問題を検討することによって整理されると考える。Franklは神経症の20パーセントはその領域の問題であると記しているが、現代ではもっとその割合が多くなっていることが推測される。本稿では、スピリチュアル・ヘルスをメンタルヘルスと対比させることによりその特徴を記述していくこととする。

2.健全な苦しみ

スピリチュアルな成長を遂げた人物を歴史的に概観すると、スピリチュアル・ヘルス概念が明らかになる。たとえばキリストや仏陀は、気高い信念に向かって模索し苦しみ、家族や命まで投げ打って普遍的な愛の実践に貢献したが、WHOにおける現行の健康定義によれば、精神的、社会的、肉体的に必ずしも健康とは言えない。しかし、彼らのスピリチュアル・ヘルスは最高水準であったことが推察される。
歴史的にも、スピリチュアリティの高い人たちの実存的苦しみが「魂の闇夜」として知られている。Franklは、生きる目的や本来の意味を求めて苦しむ実存的うつ状態を記述している(1)。精神科医Peckは、The Road Less Traveledというベストセラーのなかで、愛の欠如は怠惰であり成長を回避することである、成長に伴う苦しみを除去してはならないと訴えている(2)。
楽観的な対象者のほうが、悲観的でうつ傾向のあるものより精神衛生は良好で生産性も高い。楽観性やポジティブ思考は適切なストレス対処法を可能にし、健康促進的なライフスタイルを促し、その結果心身の健康に貢献する。しかし、悲観主義者のほうが楽観主義者より現実認識が妥当で客観的である、とする見解もある(3)。楽観的で希望に満ちた態度は確かに健康促進的ではあるが、それが現実的な根拠に基づいていない否認からきている場合には不健康である。
盲目的信念が病気回復に効果があるとして肯定されると、副作用が生じる。成長の過程として一時的にそのような防衛が必要となる時期があるかもしれない。しかしそれを持ち続けることは不健康であり、本人の成長に伴いそのような非科学的な信念は崩されていく運命にある。他者にまで、善意で非合理的信念を強要するような態度が生じると、それは大きな問題となる。
医療の目的を心身の症状改善のみに限定すると、このようなゆがみが生じる。スピリチュアルな健康が問われなければならないのである。


3.スピリチュアルな渇望

スピリチュアルに癒されていないために治らない病態がある。成長に不可欠な気づきを促すための心身の症状を取り去るわけにはいかないことに、うすうす気がついている患者もいる。スピリチュアルなレベルにおいて症状の必然性があるときには、どのように優れた治療を施しても治癒は生じない。
「どうしたらいいかはわかってます。でも、なぜかそうしたくないんです。」と難治性の摂食障害患者らは証言する。必要なのは身体の回復ではなく、認知のゆがみや感情のコントロールといったマインドレベルでもなく、もっと深いところにあるスピリチュアルな渇望、つまり実存的な意味を満たすことなのである。
気持ちを楽にするために処方される抗欝剤は、適応には必要とされメンタルヘルス回復には効果的であるが、スピリチュアルな癒しにはつながらず、かえって悪化させてしまうこともある。解熱消炎剤が症状を軽減するが、免疫機能はむしろ落として自然治癒過程を妨げるのと同様のメカニズムである。
心の問題が重要視されるようになって来た今日では、実は新たな問題が浮上してきている。それは、スピリチュアルな要素が無視された心の癒し行為である。スピリチュアリティを無視してメンタルヘルスに専念すると、表面的に適応して楽しければよい、元気であればよいという、浅薄なあり方を肯定してしまうことになる。スピリチュアル・ヘルスが無視され続けると、それがメンタル・肉体的な症状として訴え始める。実存神経症や原因不明の心身症がそれである。
スピリチュアル・ヘルス概念を明らかにすることにより、このような問題が整理される。


文献

1.Frankl V:The Unheard Cry for Meaning: Psychotherapy and Humanism, Simon and Schuster, N Y, 1978.
2.Peck MS:The Road Less Traveeled, Simon and Schuster, N Y, 1978.
3.Carver CS and Scheier MF:Optimism. In Snyder C. R. and Lopez S. J. (Eds.), Handbook of Positive Psychology, Oxford University Press, London, 366-381, 2002.


4.スピリチュアル・ヘルスの位置づけ

WHOの健康憲章改正案にスピリチュアルな健康という軸が提唱されながらも、まだ採用にいたっていない。スピリチュリティを精神と訳したり、測定観察できる面を強調して操作的に「成熟した心理的な態度」と定義することもあるため、スピリチュアリティを心理的過程そのものや一部であると還元してしまう誤解が、現在でも医学や健康科学の中で観察される。
スピリチュアリティという概念がもともと主体を超えた概念であるために、スピリチュアル・ヘルスも本来的には超越的な概念である。しかしそれがたち現れてくる個人の態度を、観察可能な現象として医科学的に捉えることによって、はじめて臨床的に有意味なものになると考える。
心身医学モデルにも、自然環境とのつながりや実存的な意味を健康問題の重要概念として提唱していくというスピリチュアルな概念が一部含まれていた。しかしながら、大いなるものとのつながりという超越的なスピリチュアリティ概念は、池見がSと表現してはいるものの(4)、一神教的な宗教性を連想されるためか、あまり論議されることはなかった。
筆者らは肉体的・精神的・社会的側面に加えてスピリチュアルな健康側面を健康概念に入れ、環境・倫理的側面も包括したモデルを提出した(5)。このモデル全体を包括しているのが広義のスピリチュアリティであり、ホリスティック・ヘルスと言い換えることができる。本稿で扱うのは垂直方向の狭義のスピリチュアル・ヘルスである。

5.狭義のスピリチュアル・ヘルス

垂直方向のスピリチュアリティ、自己とのつながりという下方向は、人生の目的尺度など、実存的な立場からいくつか測定が試みられてきた(6)。しかしながら、上方向、超越的なものとのつながりは、形而上学的概念であり科学的測定を受け付けない領域であるために、測定を考えること自体が、カテゴリーエラーとされてきた。確かに超越したものと主体とのつながりを測定し記述することは不可能であるが、主体側の態度を記述することは可能である。心身医学モデルで「倫理的」という言葉で説明されようとした側面が、この大いなる秩序・宇宙などとのつながり表す狭義のスピリチュアリティであると考えた。
倫理的態度を狭義のスピリチュアル・ヘルスとすると、肉体・精神・社会的な健康とは一致しない場合もありえるのは、キリストや仏陀の例で見てきたとおりである。
WHO健康定義改定案で提出されたまま留保されているもうひとつの概念は、「ダイナミックな」という視点である。健康をダイナミックな視点でとらえると、たとえ今ここで問題を抱えていても、成長や発展といった積極的な方向に向かっていると判断できる場合には健康であるということになる。宇宙的視野でとらえれば、すべての営みが発展や進化の方向を示す再生への営みであるという視座も存在する。このように時空を越えたスピリチュアルな観点から健康を捉えると、どのような状況であっても個人が前向きな態度を選択することは可能であるため、健康が万人に開かれたものとなる。その意味でも、スピリチュアル・ヘルスを提唱することの意義は大きいと思われる。
次節では、メンタルへルスとスピリチュアル・ヘルスを比較することを通し、概念を探っていくこととする。

6.メンタルヘルスとスピリチュアル・ヘルスの比較

スピリチュアリティは確かに精神過程に大きく関係しているが、精神過程そのものでも一部に含まれるものでもない。身体的健康と精神状態は互いに影響を及ぼしあう心身相関が知られているが、スピリチュアリティと精神的健康の関連も同様に相関があることが説明できよう。
現状ではスピリチュアルな問題がメンタルヘルス分野に持ち込まれているために見えにくくなっているが、スピリチュアル・ヘルスはスピリチュアルなレベル、メンタル・ヘルスはマインドのレベルにおける健康と考えると整理しやすい。メンタル・ヘルスにおいては、現実適応がひとつの重要な要素であるが、スピリチュアル・ヘルスはそれを超越した視点を持っている。社会的にうまくいっているように見えながらも、人生の目的や価値が見いだされず空しさを感じる状態は、適応を中心概念としたメンタルヘルスでは見逃されるが、スピリチュアルなレベルでは問題となる。また、本来の自己や生きる意味を模索する成長プロセスの中で見られる苦悩は、メンタルヘルス的にはうつ状態として症状が観察されるものの、内因性やストレス反応として起きるうつ状態とは原因も治療法も異なっている。原初的防衛機制や非合理的信念も観察されず、薬物療法も認知行動療法も妥当ではないケースが多い。このようなケースは、スピリチュアル・ヘルス概念を用いることによって、メンタルヘルス問題である感情傷害から分離してこそ適切な対処が可能となる。
これらの論考を基に、メンタル・ヘルスとスピリチュアル・ヘルスの領域を図のように示した(図1)。左側がメンタルヘルスの、右側がスピリチュアルヘルスの比重の大きい領域である。両者を明確に分離することは困難であり、メンタル、スピリチュアルをひとつの連続したスペクトラムと考えるほうが理解しやすいかもしれない。このような比較によって、従来メンタル・ヘルスの中で扱われてきたスピリチュアル・ヘルスの問題が明確化され、したがってそれぞれに適切なアプローチも整理されると考えた。

7.問題提起

スピリチュアル・ヘルスに関する問題がメンタルヘルスから区別されることにより、心身医学で扱うべき問題の所在が明らかになってきたと考える。つまり、脳機能や感情障害といった精神科領域で扱うものよりむしろ、人間性の根源にかかわる、心身を超えたスピリチュアリティにかかわる問題、スピリチュアル・ヘルスの問題である。これらが、メンタルヘルス的対処の精神科的な治療では解決がつかず、身体症状に形を変えて心療内科に持ち込まれてきた。
心身症のうち難治性のものは、かなりの割合でスピリチュアル・ヘルスの問題がかかわっていることが推測される。以上を実証するための臨床報告・実態調査研究が待たれる。


文献

4.Ikemi Y: Integration of Eastern and Western Psychosomatic Medicine.Kyushu University Press,1996
5.尾崎真奈美・奥健夫:心身医学におけるスピリチュアリティーの位置づけー心身を超越しかつ内在する非局在的な意識として、心身医学46(9)827-829,2006
46(10)915-918,2006








コメント(9)

手(パー)はい先生
図がないのですが・・・?
あ、ごめんなさいね。PPTはうつらないのね、ここには。
えっと、来週の心身医学会で発表します福岡ですが。
今は想像してみてくださいな。
これ大幅になおしてます。
出版されたらお知らせしますね。
書きなぐりってことで、失礼。お許しください。
拙著「スピリチュアリティーとは何か」ご参考まで
了解しましたぁ!
想像力をフルに活用して、読み直しています。
スピリアリティヘルスとメンタルヘルスの違い、とても面白い切り口で興味深い内容です。

 メンタルヘルスは、「現実適応がひとつの重要な要素」でありますから、例えればある平面での捉え方。その平面でのバランスが取れていることなのでしょう。
 これに対し、スピリチュアリティの成長は垂直軸。これが成長するには、メンタルヘルスの平面でのアンバランスを生じさせながらすこしずづ平面が上昇しなくてはいけないのでしょう。
 
 スピリチュアリティの成長においては、スピリチュアリティエマージェンシー(SE)のような状態も成長のきっかですから、メンタル的に健全ではない状態も普通に現れます。現代の社会や健康の定義では、こういったSE状態をよしとしませんから、問題ですよね。こういったことを許容できる社会になって欲しいところです。

 スピリチュアリティヘルスの定義は、スピリチュアリティの成長が停滞していないことかなぁと考えてます。つまり、成長のために今まで「自覚できていなかったもの」を考慮することで、それにとらわれて、高い視点にシフトできない状態かと考えました。
 さらにここで言っている「自覚できていなかったもの」とは、ウィルバーの4象限で考えないといけないと思っています。つまり、「それ」「それら」といった現実世界での個人的、社会的諸問題、「私」「私達」の個人や集団のシャドー。

 難しいけど面白いテーマですね。



スピリチュアリティヘルスの定義は、スピリチュアリティの成長が停滞していないこと

そうそう、だから、どんなに悟ってる人でも、危機はありえるんですよね!

この健康観を従来の健康観と比較したモデル図を作っています。別論文でかいてますけど、6月の研究会逗子ではご披露するつもり。

またコメントくださいね!ありがとうございます。
せーいち様
ご丁寧に読んでくださりありがとうございます。
おっしゃるとおりですね、既にかなり直していたのですが、コメントを踏まえ近日中に再挑戦いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

スピリチュアリティーの学際研究 更新情報

スピリチュアリティーの学際研究のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング