「商工会職員」友の会コミュの＜月刊S12月号　特集座談会?＞p.14～18

　管理人のピカチュウです。
　この度、大変お恥ずかしい限りですが、月刊S12月号のｐ14～18ページの座談会で商工会の今後のついて考えました。
　ぜひ、この機会にピカチュウを探して見て下さい。
　また、感想やご意見もお願い致します。

＜月刊S12月号　特集座談会?＞
【タイトル】
商工会、前へ！　
～経営指導員が描く商工会の未来～

【リード】
商工会は50年、地域の小規模事業者にとって最も身近で頼りになる経営相談の窓口であり続けてきた。特に近年では、市町村合併により発生した「旧町村部（周辺部）」や中山間地域において損なわれつつある、生活支援機能の一翼を担うコミュニティビジネスにも取り組み、地域から商工会への期待と評価はますます高まっている。
これからの50年も、商工会が地域住民や小規模事業者から信頼される地域の屋台骨として必要とされ続けるために、日々奔走する経営指導員の方々に、経営支援の実情や商工会の未来などについて語っていただく。

【出席者】
A　T県・K市
ピカチュウ　S県・K市
H　O県
【司会】
E　Z連

【本文】
E　はじめに、商工会に入ったいきさつ、これまでの商工会歴など、自己紹介をお願いします。
A　商工会歴14年目、平成９年の着任当初からずっとK市商工会に勤めています。大学を卒業後、大手食品メーカーの営業をしておりましたが、地元で公共の仕事をして地域のために働きたいと思い、商工会に入りました。
ピカチュウ　愛知県新城市で生まれ育ち、学生時代は宮崎県に4年間、広島県に2年間、三重県に10日間住んでいました。学生時代に中山間地域をフィールドワークにしていて、地域活性化に関わる仕事がしたくて商工会職員になりました。平成14年から7年間、旧H商工会で勤務し、昨年の商工会合併でO商工会本所での勤務となりました。今年から、人事交流でK市商工会へ転籍しました。
H　O県商工会連合会で経営安定特別相談室に所属し、地域力連携拠点応援コーディネーター、経営革新塾などを主に担当しています。東京の大学を卒業した後、地元で仕事がしたいと思い戻ってきました。平成９年から６年半、旧S町商工会で青年部を担当し、中小企業大学校に１年通った後、県連職員となって６年になります。

着任当初は、地図を片手に
必死に地域を走り回った

E　商工会に最初に配属されたときの気持ちはいかがでしたか？
A　私は、前任者の人事異動と入れ替わりの採用だったので、その方の仕事がそのまま私の仕事となりました。入っていきなり労務支援だったのには面くらいましたね。「できて当然」というような雰囲気があり、始めは正直怖いところだと思いました（笑）。マニュアル片手に支援にあたった覚えがあります。とにかくなんでも覚えようと、必死に勉強しましたね。
ピカチュウ　最初の配属先では、県外から県境を越えての通勤で土地鑑がなく、まずは商工会へ行くことが精一杯でした。毎日地図をコピーして銀行、役場、会員企業などを巡回しました。記帳や労働保険についても、会員さんの質問に答えられるように本やインターネットで調べたり、毎日のように労働局や職安出張所へ電話して聞いたりしていました。
H　私が配属された頃は、まだ人事異動がない頃でした。私が着任した商工会は、職員５人中４人が地元の人で、町外の人が入ってくること自体初めてでした。すごく歓迎されましたが、自分自身は「一人よそ者」という不安もありました。上司にはよく相談しましたね。
E　実際に一人で仕事を任されるようになってからは、どんなことを心がけましたか？
A　K市商工会には経営指導員は３人いるんですが、相談件数一番を目指しました。会員さんに遠慮なくどんどん相談してもらえるように、いつも笑顔で気遣いのいらない雰囲気づくりに徹しました。
ピカチュウ　現場第一主義で、会員さんとのコミュニケーションを大切にしています。巡回で会員企業を回ることが一番勉強になると思います。毎日昼食の時間も必ず新聞を読んで、さまざまな情報を集めるよう心がけています。
H　ピカチュウさんがおっしゃるように、いろんなことに関心を払っていた方がいいように思いますね。相談をしやすい環境を作れます。世の中の状況やトレンドをよく知っているとか、知識があるといったことが、経営者は相談するうえで安心されるようです。

カンパニーコンパリゾンを推進
経営支援にチームで臨む

E　密度の濃い経営支援・巡回訪問を実践するためにどのようなことを行っていますか？
H　O県では、巡回訪問の前に「カンパニーコンパリゾン」を推進しています。事前に企業の状態などを調査してから、あるべき姿と「違う点」を見つけ出して、それを事業者と一緒に解決していこうという手法です。競合店を比較調査することを「ストアコンパリゾン」といいますが、その企業版です。ただ、「違う点」に弱みや脅威ばかりを挙げると、事業者の心が萎えてしまいます。いいところをほめて伸ばすような支援を心がけています。
その際には、多角的な視点を持って支援するために、チームで臨み、反省会をしながら進めています。まだ、大きな成果は出ていませんが、手ごたえはかなり感じています。
A　巡回に行くと、地域のイベントのようすから景況感まで、会員さんはとにかく情報をほしがります。どんな情報でも、提供してあげるととても喜びますし、そうしたやりとりの中で相談や悩みも打ち明けてくれます。経営革新や地域資源活用の認定案件は、ほとんどそういった巡回訪問での他愛ない会話がきっかけです。ですから、巡回はとても大切にしています。
ピカチュウ　私は巡回訪問の際、セミナーや会員福祉共済の案内などを持っていくようにしています。その場で書いてくれるような方は、経営に対しても前向きですし、必ず受講してくれます。そういった反応をみながら、支援対象を探っていくこともしています。
E　巡回は、手がかりというか、掘り起こしのきっかけになるんですね。経営革新や農商工連携をいきなり勧めても、あまり反応はないのでしょうか？
H　「経営革新」と聞いてピンとくる人はほぼいません。Aさんがおっしゃったように、他愛ない会話から手がかりを探り、事業者と一緒に少しずつ取り組んでいきます。世の中にないものをやりましょう！という意気込みだと、小規模事業者には拒絶されます。小さい改善や成功の中から革新が生まれてくるという意識を指導員自体がしっかり心得て、事業者に自信をつけていくことが成功の秘訣ではないでしょうか。
A　経営革新をやりましょうといって飛びついてくる人はまずいませんね。経営革新塾を受講したり、設備投資のための金融相談に来るなど、事業に一生懸命な人に勧めて支援します。新しいことを始めるには、前向きな事業者でないと続きません。

地域資源活用で認定
梅酒が飛ぶように売れた

E　経営指導員をしてきて、一番印象に残っていることはなんですか？
A　去年11月、地域資源活用で認定を受けたときは嬉しかったですね。地元の酒蔵から「梅酒を作りたい」という相談を受けました。「Tの清酒」を地域資源に、地元の梅を使って吟醸酒で梅酒（５００ml、１２６０円）を作りました。認定を受けたおかげでマスコミにも取り上げられ、売れ行きがすごくて。３０００本用意して今年10月から販売を開始しましたが、ほとんど手元に残っていません。
これには事業者さんも大変驚いて、「商工会に相談して本当によかった。こんなことなら、ほかの酒蔵も使えばいいのに！」とおっしゃてくれました。私も本当に嬉しかったです。
ピカチュウ　リーマン・ショックのころ、中小企業緊急雇用安定助成金の取得支援を10件ぐらい行ったときは本当に喜ばれました。社会保険労務士による中小企業緊急雇用安定助成金の概要説明会や個別相談会を開催したり、職安の助成金担当職員から助成金申請書の書き方を会員企業の集団講習会で教えてもらったり、根気強く繰り返して支援を行い会員企業が自分で申請ができるようになりました。
また、会員企業同士のビジネスマッチングや特産品の販路開拓支援などに一生懸命に取り組んで成果が出たり、会員さんから「ありがとう」「商工会の山﨑さんが教えてくれたので会社が生き残れた」などと言われた時には本当に嬉しいですね。
H　３年前、１０人規模の建設会社の経営支援に、地元の商工会と専門家、県連の経営特別安定室がチームであたりました。自己破産寸前だったのですが、なんとか立ち直り、今年は経営革新をとうろうとがんばっています。
なんといっても印象的なのは、資金繰りを担当していたお母ちゃんがみるみる明るくなったことです。再建に一番努力した後継者からは、「商工会がこんなに親身になってくれるとは思いませんでした」と大変感謝されました。一緒に支援にあたった専門家も「商工会は、ここまで徹底してやるんやな。ゼニ、カネの問題やないな、すがすがしい思いがした」と嬉しい言葉をかけてくれました。この事例は、建設会社再生のモデルになっていて、多くの同業者が視察に訪れています。

地域内流通システムの確立で
人・モノやサービス・カネを域内で循環

E　商工会は、疲弊する地域コミュニティを支えるという大きな役割を担っています。今後地域のためにどのようなことに取り組んでいくべきだと思われますか？　
ピカチュウ　コミュニティビジネスで、地域内流通システムが確立できればと思っています。地域内で人・モノやサービス・カネが好循環させられれば流通コストも抑えられますし、価格競争にも歯止めが効くのではないでしょうか。
　以前、地元の酒屋さんと食品配達会社のビジネスマッチングをしたことがあります。酒屋さんを取り巻く環境は非常に厳しいのです。宅配便やメール便の配達、クリーニング店の取次、夜の運送会社の荷物の仕分けなどを兼務されている方が多いです。一方、食品配達会社は配達要員の人手不足に悩んでいました。そこで、地域に詳しく配達のプロである酒屋さんに、食品会社の配達・集金をしてはどうかと持ちかけたんです。
　これがとてもうまくいきました。酒屋さんは午前中だけの食品配達・集金で、月12万円ほど収入が増え、食品配達会社は、酒屋さんがお客さんに非常に愛想よく丁寧に配達してくれるので、安心して任せることができました。また、この食品配達会社の業務内容が本業のディナーサービスのみならず、健康サーポート便（治療食）、1人暮らしの老人で一定の条件の方はお弁当代の半額を市の社会福祉協議会が補助してくれるなどのハピネスビジネスでもあるのです。地域に住む子供から大人、ご年配の方、病気をお持ちの方など全ての方々に喜んで頂ける商品やサービスがコミュニティビジネスの基本ではないでしょうか。
E　両者の悩みを地域内で解決できた好例ですね。
ピカチュウ　もちろん、さまざまなリスクも考えないといけないのですが。それから、コミュニティビジネスの組織化もしていきたいです。旧H町商工会で、地元の三方原馬鈴薯（男爵芋）を活用した「Mポテトチップス」の販路開拓支援に携わりました。E夢倶楽部（36）という酒屋さんが作った特産品開発グループの企画だったのですが、酒屋さんが配達のときにジャガイモ畑のそばを通りながら、規格外のジャガイモはどうしているのだろうか、と思ったことが商品開発のきっかけです。県内のお菓子製造会社と連携して商品化し、今では年間一万ケースを販売する人気の商品となっています。
　また、K市は製造業のまちで、1ドル80円の超円高経済の中で産業の空洞化が進み非常に厳しい状態が続いています。今後は、国際化にも目を向けた幅広い事業展開が必要だと考えています。
A　勝浦市では、県南部の豊富な地域資源をうまく活用して新たな産業を生み出し、雇用の創出に力を入れるべきだと思っています。
　毎年開催するイベント「Kビックひなまつり」では、友好都市であるT県K町から７０００体の雛人形をいただいて展示します。今年10回目を終えて、12日間で約20万人が集まりました。こうしたイベントなどをきっかけに交流人口を増やし、最終的には定住人口の増加に貢献したいと思います。
H　商工会が地域のために行うべきことは、まずは個を強くすることが一番だと、私は思っています。それぞれの企業が強くなれば、地域問題の解決にも取り組むことができます。
　そのためにも、経営革新による事業承継を積極的に勧めていきたいですね。起業・創業はゼロからですが、経営革新はあるものを活かしながら企業を強くしていきます。経営者や後継者は、貸借対照表の右側の借金ばかりをみますが、左側にも顧客や信用など、築いてきた価値あるものがたくさんあるんです。事業承継をともなった経営革新に取り組み、事業者が力をつけることが最重要・最優先課題だと思っています。

企業の事業承継のように、
商工会も若手職員に任せてみる

E　次の50年に向けて、商工会組織がより活性化するために職員はどうあるべきでしょうか？
H　思い切っていいますと、若手にもっと任せること。そして若手ががんばることではないかと考えています。若手は、フットワークが軽くて行動力がありますし、体力も元気も、夢を実現するための時間もあります。それにかけるしかない。事業承継と一緒です。
それから、職員がもっと見聞を広げたり自由に行動できるように奨励することも大事だと思います。ここに集まった３人の意見や想いが違うように、いろんな考え方や視点を持った人がいるということはとてもいいことです。
商工会の経営支援は、ボランティアにもコンサルタントにもできません。小規模事業者の経営支援は、50年続く理念をもった商工会が担っていくべきですし、どこにも参入できないでしょう。フレキシブルな発想と行動で、徹底した支援を行っていきたいと思います。
A　組織の理想像を思い描いて、役職員全員が共有して努力していくことが大事だと思います。
K市商工会は、指導員が３人と補助員が２人おりまして、この２人の補助員が勉強熱心でとても頼りになるんです。会員さんからの経営相談が経営指導員に回ってくるまでに、相談内容を聞いて３割くらい捌いてくれます。私たち指導員は残り７割の作業をしっかりと進めていけばいいので、ほかの事業にも手を出すことができるんです。
こうした役割分担ができるのも、商工会の存在意義をみんなが共有しているからではないでしょうか。
ピカチュウ　今後、商工会が地域で生き残って行くためには、安定した収益を得て持続可能な組織にしていくことが必要だと思います。
今一度、現状の事業や収支のバランスを見直して、会員企業とバッティングしない新たなサービスの提供や商品開発をして、行政も民間もやらないニッチ市場を開拓していけたらいいと思います。ダーウィンの進化論のように環境に迅速に対応できる柔軟な組織にしていくことが必要だと思います。収益事業では、長野県の宮田村商工会のパソコン学院や旅サロンを視察研修に行きました。

地方から経済の仕組みを変えたい！

E　最後に、ご自身の決意と抱負をお聞かせください。
A　大きなことを言わせていただくと、私は地方から経済の仕組みを変えたいと思っています！　お金になる産業を創ってシステム化して、地域に貢献したいんです。勝浦市では、豊かな観光資源を活用して、うまく育てることが一番かなと考えています。青年部も、今年「勝浦ブランド開発企業組合」を立ち上げ、地域資源のブランド化を目指してがんばっています。
ピカチュウ　諸先輩方が築きあげてきた財産を次の世代へバトンタッチするためにも、全力で地域経済や地場産業の振興に取り組んでいきたいと思います。
私自身も、日々精進していきたいと思います。一番近い目標では、会員さんが学ぶことができるビジネススクールの開講を目指しています。
H　商工会組織の使命は、地域経済に寄与することです。イノベーションに取り組める人材を育てていきたいと思っています。
経営指導員の諸先輩方は、今では考えられないような泥臭い場面や修羅場もご経験されています。そういう話を聞くと、勇気も出ますし自分ももっと骨のある指導員にならなければと思います。足を止めずに、がんばり続けていきたいです。