原始仏典コミュの無為相応　「十一涅槃道」1

（『南伝大蔵経16上　相応部経典5』大蔵出版　P77−82　に相当）



相応部経典＞4 六処篇

「　　　　　　　第九　無為相応［アサンカタ・サンユッタ］

　　　　　第一品

　　　第一　念身
366．サーヴァッティ因。
　比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　身体を念じること。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。

　比丘たちよ、このように私はあなたたちに無為を説き、無為に行く道を説いた。
　比丘たちよ、弟子の利益を憐む師がその憐れみによって為すべきこと、それを私はあなたたちに為した。
　比丘たちよ、このような樹下、このような空き家がある。
　比丘たちよ、ジャーナしなさい。放逸であってはならない。後に悔いる者となってはならない。これがあなたたちへの私の教えである。

　註　念身：ねんしん カーヤ［身］ガター［行った］サティ［念］
　　　　　　kāyagatāsati　身体を念じること


　　　第二　止観
367．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　サマタとヴィパッサナー。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。

　比丘たちよ、このように私はあなたたちに無為を説き、無為に行く道を説いた。
　比丘たちよ、弟子の利益を憐む師がその憐れみによって為すべきこと、それを私はあなたたちに為した。
　比丘たちよ、このような樹下、このような空き家がある。
　比丘たちよ、ジャーナしなさい。放逸であってはならない。後に悔いる者となってはならない。これがあなたたちへの私の教えである。

　註　サマタ　　　　：samatha 止観の「止」　心を静寂にすること
　　　ヴィパッサナー：vipassanā 止観の「観」　知りたいことをよく見ること


　　　第三　有尋有伺
368．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　有尋有伺のサマーディ、無尋有伺のサマーディ、無尋無伺のサマーディ。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。

　比丘たちよ、このように私はあなたたちに無為を説き、無為に行く道を説いた。
　比丘たちよ、弟子の利益を憐む師がその憐れみによって為すべきこと、それを私はあなたたちに為した。
　比丘たちよ、このような樹下、このような空き家がある。
　比丘たちよ、ジャーナしなさい。放逸であってはならない。後に悔いる者となってはならない。これがあなたたちへの私の教えである。

　註　サマーディ：samādhi 「三摩地」「三昧」「定」
　　　　　　　　　雑念を排除することによって意識を集中し統一すること
　　　尋　　　　：ヴィタッカ vitakka 　心の中で言葉で考えること
　　　伺　　　　：ヴィチャーラ vicāra　心の中で言葉を使わずに考えること
　　　有尋有伺　：サヴィタッカ・サヴィチャーラ savitakka savicāra 　
　　　　　　　　　尋が有り伺が有る
　　　無尋唯伺　：アヴィタッカ・ヴィチャーラマッタ avitakka vicāramatta　
　　　　　　　　　尋が無く伺だけ　　　　　　
　　　無尋無伺　：アヴィタッカ・アヴィチャーラ avitakka avicāra　
　　　　　　　　　尋が無く伺が無い


　　　第四　空三摩地
369．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　空無のサマーディ、無相のサマーディ、無願のサマーディ。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。

　比丘たちよ、このように私はあなたたちに無為を説き、無為に行く道を説いた。
　比丘たちよ、弟子の利益を憐む師がその憐れみによって為すべきこと、それを私はあなたたちに為した。
　比丘たちよ、このような樹下、このような空き家がある。
　比丘たちよ、ジャーナしなさい。放逸であってはならない。後に悔いる者となってはならない。これがあなたたちへの私の教えである。

　註　空無：スンニャ suñña　空なる、空無の
　　　無相：アニミッタ animitta　思考対象の相がない状態
　　　無願：アッパニヒタ appaṇihita　願いがない


　　　第五　念処
370．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　四念処。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。


　　　第六　正勤
371．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　四正勤。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。


　　　第七　神足
372．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　四神足。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。

　　　第八　根　　　
373．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　五根。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。


　　　第九　力
374．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　五力。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。


　　　第十　覚支　　　
375．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　七覚支。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。

　　　
　　　第十一　道
376．比丘たちよ、無為と無為に行く道を説こう。それを聞きなさい。
　比丘たちよ、何が無為か。
　比丘たちよ、貪りが尽き、瞋りが尽き、癡かさが尽きること。
　比丘たちよ、これが無為と言われる。
　比丘たちよ、何が無為に行く道か。
　聖八支道。
　比丘たちよ、これが無為に行く道と言われる。
　・・・これがあなたたちへの私の教えである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第一品

　　　その頌
　　　　　身とサマタと尋、空と念処、
　　　　　正勤と神足、根と力と覚支、　　
　　　　　道の十一とこの頌は言われる。
　　　
　　　

（続く　『南伝大蔵経16上　相応部経典5』大蔵出版　P77−82　に相当）