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京都で映画コミュのフィクサー

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昨夜、試写会に行ってきました!とてもいい映画だったので、新しいトピックたててみました〜ムード

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昨夜、今年のアカデミー賞を席巻した「フィクサー」って映画を見た。原題は「マイケル・クレイトン」。

久しぶりに胸にずっしりくるハリウッド映画だった。素晴らしい。

内容としては、訴訟を起こされた巨大農薬会社が、高級弁護士事務所の有能弁護士を雇って、裁判を闘う。

しかし、その担当弁護士は、六年間という長い戦いの中で、巨悪な農薬会社の実態を知り(もともと知っていたんだけど)、良心的ディレンマから精神的にイカれてしまう。ついには、小法廷で裸になり、原告を追い回すという警察沙汰を起こし、弁護士事務所は窮地に追い込まれる。そこで、登場するのがジョージクルーニー扮する"フィクサー=事件揉み消し担当弁護士"ことマイケル・クレイトン。彼は、早速事件のダメージを最小限に抑えるために、現地に赴いて、旧知の仲でもある担当弁護士に入院して、今回の件からは手を引くように促す。しかし、担当弁護士は、農薬会社を裏切り、原告側に立って戦う準備を進める・・・

さて、ここで肝心なのが、マイケル・クレイトンの役柄。普通のアメリカ映画ならば、正義役(?)の彼を超腕利きの「事件もみ消し」弁護士、才能があり、センスがよくて、何でもできる「ヒーロー」として描くのが普通。でもこの映画は、マイケル・クレイトンをあくまでも一人の男として描いている。彼はギャンブルや出店の失敗で借金まみれ、離婚していて、老後の不安を抱えている、仕事にもやりがいを感じてはおらず、つまり、「公私ともに不幸せ」な、まるでダメヒーローとして描かれている。

圧巻は冒頭、精神的にイカれた担当弁護士から旧知であるマイケル・クレイトンへの電話。ずっと彼のイカれた会話が冒頭を支配。映像は、夜のオフィス街を様々なカットでつなぐだけ、とにかく、いきなり訳の分からない話がシンバルラッシュのように叩かれる。そう、まさに叩かれる感覚。「起きろ、起きろ、始まるぞ、始まるぞ!」という感じ。鮮烈。

時間軸は、現在→四日前→現在→進行という典型的「巻き戻し」。周りの人や一緒に行った人の話だと前半はあんまり面白くなく、わけがわかんなかった、と言ってた。隣の人は寝てるし、前の女の子二人組は「字幕読めへん」とか言ってずっとぺちゃくちゃ喋ってたけど・・・
映画のカットとシーンを読む練習を始めるには格好の映画です。つまり、簡潔、上手でメタファーや洞察のレベルが中の上くらいに設定されている。映画の勉強をしたい人はぜひ見て欲しい。

あらすじではなく、テーマとしてみてみると、これは「現代の狂気」。上でいう最初の「現在」シーンは、一切の紹介なく出てくる助演女優(主演女優)が、脇にべっとりと汗をかいて、トイレで狂っている様子。冒頭の電話のくだりと共に「なんだ?」っていう先制パンチをくらわす。マイケル・クレイトン登場で、彼の車が爆発するまで、こちらはクモをつかむ感じ。

・・・と残念ながら全てを解説する時間がないけれど、これはまさにキューブリックが「フルメタルジャケット」で「戦争の狂気」を画いたように、フィクサーは「現代の狂気」を画いている。特に働いている人の多くが感じている「何のために働くのか」というディレンマを高給弁護士という次元に移し変えて描いているだけで、本質は同じ。資本主義という巨大な暗闇がどっさりと乗りかかり、身動きのとれない状況に陥っている人は多い。
マイケル・クレイトンが目に隈をためつつ、もやがかる朝に、車をとめ、馬を見つめる、この時の心情がまさに、この映画の本題なのだ。なぜ、馬なのか、この時の彼の心に引っかかっているものとは、そして、正義とは。これがこの映画のテーマ。
ぜひか投げて欲しい。
そして、ラストシーンの前に、エスカレーターを真上からとるカットがある。昇る、下る。降りていくクレイトン、それとは逆の方向。実に象徴的なカットです。しかし、このカットは、黒澤明の「生きものの記録」のラストでも実践されている(彼は水平方向にとってるけど)。
つまり、人生の二つの方向性、その哀しさ、矛盾、人間をワンカットで表しているのが、あのエスカレーターだ。

最後に敵役の女性と対面するシーン。ここも一瞬「おい、これじゃ普通のハリウッド映画だろ・・・」と考えるけど、料理の仕方は新しい。時間軸を巻き戻すタイミングもばっちりだし、脚本としての完成度が高いことが伺える(特にシンプルな点。これだけいいストーリーだともう少し遊びたくなるけど、しっかりと軸をもっている。本物)

ただ、今年はこのフィクサーですらアカデミー作品賞をとれなかった。それもそのはず、かの名作「ファーゴ」を凌駕すると言われるコーエン兄弟の「ノーカントリー」、原題「ノーカントリーフォーオールドメン」があるからだ。うん、これは面白い!早くノーカントリーも見に行かなければ!

最後にもう一言、この映画は容易に「ハリウッド的」になる点を着実に抑えて、「静」のサスペンスを貫いている。押し殺したBGM(一箇所気になった点があったけど)、説明を最小限にとどめている点、スタティックなカメラワーク・・・・ぜひ見て欲しい。

そして、映画の勉強をしてほしい(と上から目線で言ってみる)つまり、ちゃんとエンターテイメント性もあって単館系を見ない人でも十分楽しめる良作に仕上がっているからね!

時間があれば、またちゃんとまとめて評したいと思う作品だった!

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