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作家の卵達『落ガキ』コミュの華詩 とある1月のとある休日

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正月なまりした体を癒した三連休があっという間にあけて、いつもの平常授業が始まった休み明けの平穏な日常。
 しかし平穏は昼休みにはいり何やら不穏な雲行きになってきた。その原因は朝から不機嫌だった親友だろう。そしてそれは、四人集まるいつもの昼休みに爆発した。
私の隣にいる彼を親友は睨む。
 そして、私に申し訳なさそうな顔を向ける。はて、何かしたんだろうか。
私と彼は顔を見合わす。彼は思い当たる節がないらしく首を傾げる。
「ねぇ、朝からどうしたの。」
気マヅイ空気の原因を探るため話しかける。やっぱりごはんは美味しく食べたい。
「うん。」
 親友は生返事をしただけで、彼を睨んでいる。
間違いなく彼に対して怒っている。
何だろうな。何かあったのかな。
「ねぇ、何でこうなのか知っている。」
親友の彼に私は聞く。親友の彼はとっても複雑な表情をしていた。
 そして、私の隣にいる彼をみて、親友を見る。
親友は首を振る。その動作からしてたぶん何か知っている。
けど、口止めされているみたいだ。後は睨まれている彼が何か知っているのかな。
 そう思い彼を見る。すると彼は肩をすくめる。まぁそのうち、元に戻るだろう。
私はカバンからお弁当箱を二つ出した。こうやってお弁当を作るのは二回目。
前回は彼の好みがわからず、当たり障りのないおかずで揃えた。でも今回はこの間の休みに好みを聞けた。というよりも一緒に買い物に行った。
 その時に、もう一回お弁当を作ってくれないかと彼に頼まれた。
以前ならマゴマゴしてこっちが気づかなければいけなかったのに。
彼はつき合いはじめたらどんどんと積極的になってきた。
私はそん彼にますます惹かれていった。
 どうやらヘタレだったのは私だったのかな。そんな風にさえ思えてくる。
オレンジのハンカチで包んであるお弁当と、ブルーのハンカチで包んだるお弁当。
ブルーのが彼のだ。色違いだけどデザインは私とお揃い。
以前なら恥ずかしくて出来なかったけど、今は平気。
まぁちょっとだけ恥ずかしいけど。机に置いて隣にいる彼を見る。彼はすごく嬉しそうな顔していた。そこまで喜んでもらえると私もすごく嬉しい。
「ありがとう。」
 そういって机からお弁当をとろうとして手をのばしたが。その手は空を切った。
お弁当は前から伸びた手にとられていた。
えっと、思って前を見る。親友がすごい顔をしていた。
それはとっても悲しそうな顔だった。そしてお弁当をもった手は震えていた。
「なに。どうしたの。返してそれ真一のだよ。」
私は親友に尋ねる。何でお弁当を持っていったんだろう。
私を見た親友の顔は今にも泣きそうな顔していた。
彼を睨んだまま、そして大きな声で叫んだ。
「アンタにこれを受け取る資格ない。」
そう言うと横に座っている。彼氏に抱きついた。泣き声がもれてくる。
教室がざわつく。とっても注目されている。
でも今はそれどころじゃない。どうしたんだろう。どういう意味なんだろうか。
親友の彼が私を見る。どうしていいのかわからないと言った表情をしていた。
そして隣にいる彼をみてこう言った。
「間違いだよな。お前だしな。」
親友の彼が彼に言う。
親友が今こうして泣いている理由を知っているのだろう。
でもまだそれは半信半疑と言った感じだ。
何にが間違いなんだろうか。
そしてそれは私にも関係しているんだろう。
親友達二人の視線はそう言っている。
なんだろう。私は彼を見る。そして彼の腕を握る。
「何のことだ。よくわからん。」
彼がそう答えた。
「そうだよな。お前一昨日誰と何してた。よければ話してくれ。俺は信じられないんだ。」
親友の頭を撫でながら親友の彼氏が聞く。
「亜由美がいるから言えないよね。言えるわけない。」
親友は彼氏の胸にしがみついたままそう言い放つ。
「ごめん。問いただして説教して引っ叩いて終わるつもりだった。でも、アンタのその幸せな顔が真一に向けられるの見てたらコイツがしていたことが許せない。」
自分の彼氏を悪く言われるのは聞いていてとっても嫌だった。
「わけわかんないよ。ちゃんと話して。なんで真一をそんなに責めるの。」
私は親友達に食って掛かった。そう言うと親友がこっちをみる。
「私、見たの。」
親友の視線が私に突き刺さる。でもその視線は徐々に弱くなっていく。
隣に座る彼氏に視線を向ける。彼もどうしていいのかわからないみたいだ。
「あのね。」
親友の言葉が詰まる。目からはまだ涙が出ていた。
「亜由美、お願いだから泣かずに最後まで聞いてね。」
私はそれに頷く。親友が真剣だということが嫌でもわかったから。
「あのね、一昨日商店街で見たの。真一が髪の長い女の子と仲良く歩いているのを。」
えっとそれってどういうことだろ。一昨日は……私は彼を見る。彼も私を見る。
「すっごい仲良さそうに腕組んでた。しかもすごく引っ付いて……。」
親友のそこまでいって言葉を詰まらす。
「それでさ、俺に電話があって、真一はって。部活休んだっていったら電話が切れた。」
「それは、」
彼が言いよどむ。恥ずかしいんだろうな。部活の自主練習よりも私に会いにいくことにしたのが。彼はまじめだ、たぶん初めてのサボリだったんだろうな。
彼を見るどうしていいのかわからないみたいだった。だから私が言わないと。
「あのね、二人とも落ち着いてね。一昨日のなんだけど……。」

―親友の優しさが嬉しかった。私たちのことをこんなにも思っていてくれている。そして親友の彼氏にも。でも今回のは完全なる勘違いだ。さっさと誤解をといていつもの日常を取り戻したい。ー


 あまり嬉しくない実力テストも終わり、やっと来た三連休。そしてその中日である鏡開きにあわせて、弟妹にぜんざいを食べさせるため準備をしていた。
準備と言ってもできあいのあずきを煮詰めて、お餅を焼くだけだったんだけど。
弟と妹が手伝うと言って離してくれないので、取合えず危険性のないあずきの缶詰を開けるのを手伝う事にしてもらった。そうここまでは良かったんだね。開けてもらって後は大人しくリビングで出来るのを待っていてもらえば。何てこともなかったんだけど。

「ほら、喧嘩しないの。二人で仲良く一緒にね。」
そういって二人に缶切りを握らせる。
「いい、りょうちゃんはここ持っててね。」
「うん」
「それで、よう君はこの回す部分をゆっくり回してね。」
「わかった。」
元気な声が返ってきた。二人は恐る恐る缶切りを回していく。
そして徐々に開いていく缶。二人はとっても楽しそうだった。
そして、フタが取れる。二人は嬉しそうに私を見ていた。二人の頭を撫でてあげる。
二人はとっても嬉しそうだった。
「はい、よくできました。もう一個やってみようか。」
「あのね、おねえちゃん。わたしもまわしてみたい。」
期待をこめた顔をしてお願いしてくる。
「じゃ、持つ所を交代しようか。」
「やった。」
そして今度も楽しそうに蓋を開けていく。
さて、あとはこれを鍋に入れて煮て、お餅を焼いておしまい。
そう思い、フタをとり鍋にあずきを移そうとすると
「それもやりたい。」
「ぼくも。」
これはさっきのよりも簡単だしね。
私は今度は二人の前に鍋を置いて
「じゃ、お願いしようかな。ここから、スプーンでお鍋にいれてね。」
「うん」
二人に一つずつスプーンを渡した。二人は交互にあずきをを鍋に入れていく。
その姿を見て、私はお正月に下ろしたお餅をとりにキッチンを一旦離れた。
棚の上に置いてある箱からお餅を出そうとしていると
『ガシャン』
何かが落ちる音がキッチンからした。しばらくすると妹の大きな泣き声が聞こえてきた。
何だろう何があったんだろう。私はお餅をその場において慌てて戻る。
キッチンに入ると鍋が下に転がり、あずきが床に溢れていた。泣き声がする方を見る。
弟が一生懸命、私がするみたいに妹の頭を撫でてあやしている。
私が来たのを見つけると、弟も泣きそうな顔だった、頑張って我慢しているようだった。やっぱり小ちゃくてもお兄ちゃんだ。私は弟の頭をそっと撫でる。そして妹を見る。
「りょうちゃん。大丈夫?、どこが痛い。」
そう聞くと妹は首を横に振る。何処か怪我をしているわけじゃないみたいなのでホッとした。たぶん、ボールが床に落ちた時の音にビックリしたのと、あずきがダメになった事で悲しくなったんだろうな。とりあえず、何事もなくて良かった。そして、妹の鳴き声は徐々に弱くなっていった。
妹をちょっとだけ弟にまかせて私は片付けをすることにした。
何も見事に逆さまに落ちなくてもいいのにな。
すると二人が近寄ってきた。
私は何も言わず妹の頭をなでて抱きしめてやった。
そして弟も抱きしめた。こぼれたあずきを拾おうとしていたのか、二人の手はあずきで汚れていた。
「じゃ手を洗おうか。」
二人が大きく頷いた。二人をつれて洗面所にいく。まず弟を抱いて手を洗わせる。
「はい、よく出来ました。」
私の腕から降りると弟はそのままリビングにいった。そして妹を抱き手を洗わせる。
「ごめんなさい。」
俯きながらそういいた。私は笑ってやる。怒ってないってことを教えてあげるために。
「おねえちゃん……。」
「ほら、コタツの所で暖まっておいで。」
妹は手を洗い終わっても私の側にいた。
「うん」
妹は俯いたままリビングに向かっていった。
さて、どうしようかあずきはあの二缶しか買ってない。
あの子達ぜんざいを楽しみにしていたしな。
買いにいかないと行けないけど。でもあの子達二人で留守番させるのはな。
ちょっとした時間だから大丈夫だと思うけど、ここ数日のニュースが頭をよぎる。
万が一があってはいけない。かといって一緒に行くとなると、間違いなくどっちかが必ず迷子になる。それは夕方の買い物に行く時だけで十分だ。
そんなことを考えていると玄関のチャイムがなる。
誰だろうか、彼は、今日は部活だっていってたから違うし。
休み前に日曜日はって聞いたときすまなさそうにしていたのを思い出す。
そう言えば親友達に女の子からの誘いを断る何てヘタレめって言われてたっけ。
でも私はそう思ってない。ちゃんと自分のための時間は使ってほしい。
そう思いながら玄関を開けると。そこには彼が立っていた。
「なんで。」
「いや、まぁ会いたくなったからさ。」
「だって部活は。自主練習だけど行くって言ってたのに。」
彼は私の顔をまじまじ見る。
えっともしかして顔に何かついているのかな。恐る恐る聞いてみる。
「なに。顔に何かついてる。」
するとかれはぼそぼそと言いはじめた。
「いや、髪下ろしているの初めて見た。結構長いんだな。」
そう私は髪をいつも上げている。お母さんが仕事に行く時の髪型を少しアレンジしたもの
。高校一年生になってはじめて教えてもらった。たしかに下ろすとかなりの長さになる。
「変かな。」
私は髪を持ち上げる。
「ううん、変じゃない……。」
彼は小さく呟いたが私は聞き取ることが出来なかった。
「あのね、今ちょっとゴタゴタしているからリビングにいて。」
取りあえず中に入ってもらった。
「お邪魔します。」
彼がリビングのドアを開けると弟が出てきた。
「あ、にいちゃんだ。」
弟が彼の足にまとわりつく。そしてそのまま彼と一緒の部屋に入っていく。
部屋に入ると、妹はコタツでしょげていた。
まだこぼしたことを気にしているのかな。
何とかしないとな。その前に片付けてこないとな。
「なぁ、げーむしよう。」
「ああ、いいぞ。ん、稜子なんか元気ないな。どうした?」
そう言ってコタツに入る。彼が妹の頭を撫でてやると、妹は彼に身を寄せるようにして引っ付いた。
「ごめんね、ちょっと待っててね。」
私は片付けにもどた。そして、片付けが終わってリビングにはいる。
すると彼の膝に妹が座っていた。
「ほらほら、りょうちゃんコッチおいで。」
私は妹がこっちに来るように促す。
けど私を見るだけで動こうとしない。どうしたのかな。
「ねぇ、どうしたの。」
彼に聞いてみる。
「まぁ、ちょっとな。」
彼はそれだけ言って妹の頭をポンポンと叩く。まぁ、彼にまかせよう。
私は彼の隣に座る。すると弟が私の膝に座ろうとする。
「もう、しょうがないな。」
妹が座ってみるのを見てしたかったんだろう。
「なぁ亜由美、稜子を叱ったりした?。」
ふっと彼がそんなことを言ってくる。
「ううん、してないよ。ただね。」
私はこの子達がぜんざいを楽しみにしていたこと。
そしてそのぜんざいを作っている途中で、あずきがダメにしてしまったことを話した。
あと、二人が頑張って手伝ってくれているのを私が台無しにしてしまったことも話した。だって私が最後までみていてお餅をとりにいっていれば、この子達にこんな思いをさせなくてすんだのだ。悪ことしちゃったな。
「そっか。わかった。」
彼はニコニコしていた。そして私の頭をなでる。なんだかくすぐったかった。
弟が不思議そうな顔をして見上げていた。
そうだ、彼にこの子達と一緒にいてもらって私が今から買いにいけばいいんだ。
私があずきを買ってくるので、この子達と一緒に留守番をしていて欲しいと彼に告げる。
すると彼は笑顔で答えてくれた。
「ああ、いいよ。」
そう言って彼は妹を自分の方に向かせる。
「ほら大丈夫だったろ。稜子、元気出せな。お姉ちゃんは怒ってないし。お前を嫌いにはならない。それでいてぜんざいも食べれる。」
彼がそういって妹の頭を撫でる。
「ほんと、きらいにならない。」
この子はそれを気にしていたのか。それであんなに悄気ていたのか。
洗面所で中々私の側から離れなかった姿を思い出す。
あのときちゃんといってあげれば良かったな。
笑ってあげただけじゃ伝わらなかったのか、難しいな。
「嫌いになるわけないでしょう。」
妹の頬に手を添え、おでこをくっ付ける。
すると顔に笑顔が戻った。
「じゃ、ちょっと買ってくね。」
そういって私が立とうとすると。服を掴まれた。
「なに。」
「いっしょにいく。」
「あっおでかけ。ぼくも。」
「えっ、お家で待ってて。」
首を振る二人。妹は今にも泣きそうな顔をしていた。
「もう、わがままいわないの。」
妹が何でこういうのかよくわからなかった。どうやって説得しよう。
たぶん納得はしない。泣かして買いにいくのも嫌だな。彼にも迷惑かけたくないな。
ただでさえ留守番を頼むのに。そんな風に上手い方法はないかと考えていると。
「いっしょに行こう。二人いれば大丈夫だろう。」
と彼がそう言った。私は彼を見る。どう考えたらそうなるんだろう。
「なんで。」
「よくわかるよ。二人の気持ち。俺も弟だから。」
彼はそう言った。そう言われてもよくわからなかったが、彼にまかせることにした。
「わかった。真一がそう言うならそうする。この子達の準備するからまっていて。あと私も髪とか上げないと。」
私がそう言うと、
「あのさ、……。」
彼が耳元で囁く。
「別にいいけど。なんで。」
「……。」
頬をかいている。まぁいいか。
「ほら、よう君にりょうちゃん。お出かけするから。お姉ちゃんと一緒においで。」
二人はすごくいい笑顔だった。彼が来てくれて本当に良かった。

ーそして戸締まりをして私たちは家を出て商店街にある小さなスーパーへあずきを買いにいった。ついでに頼まれていた買い物も済ませることにした。やっぱり二回行くのはめんどくさい。まぁその買い物は私や彼が予想していた通りとはならなかった。やっぱり人数が多い分色々なことが起きた。まぁその色々なことがあったおかげで彼と腕を組んで歩くことになった。しかも彼はその間、私の髪を触ったり頬触ったりと普段では絶対しないようなことばかりしてきた。そして、ただでさえ動揺して狼狽えていたのに、彼から思わぬ告白を受けたりとかして、二人がいなくなっていたのに気づいて焦ったのはまた別のお話。それでもなんとか無事にあずきと買い物をおえて家に帰ったのだった。―


「優子だからね、その一緒にいた腕組んでた女の子は私なの。」
親友はまだ信じれていないような顔をしていた。
「だって。髪上げてなかったし。クリスマスイブデートだって土壇場でキャンセルするぐらいのヘタレカップルがあんな大勢がいるところでべったりってありえない。」
そうだよね。普段髪の毛をアップでまとめてるしね。あとヘタレで悪かったね。
確かに外でのデートはキャンセルしたけどちゃんと一緒にいたもん。
「本当に本当なんだよね。」
私たちは大きく頷いた。すると親友は再び彼氏に抱きついた。
「よかった。間違えで。」
「だから言ったろ。間違えだって。それにしても突っ込みどころ満載だよな。」
親友の彼の目は輝いていた。
「それでその後は。」
とってもニヤニヤしている。
「圭司、なんだよその後ってのは。」
「家についてから二人で何してたのってこと。」
それを聞いて彼がうんざりしたような表情で聞いた。そして私にどうするっと聞いてきた。その後も何もお家に帰ってぜんざいを作って食べて冬休み見たいに一緒に過ごしただけ。宿題もあったしね。
「そうだよ。亜由美になんて言えば泣かないかなとか、真一をどう成敗するか、もしくは更生させるかとか。連休中ずっと考えて棒に振ったんだから。全部最後まで包み隠さず話しなさい。」
親友がそんことを言う。そんなの理由になるんだろうか。まぁ心配かけたのはよくわかるけど。ただ面白いネタを見つけたとしか思ってないんだろうな。だって表情がいつもみたいいなっているし。
「あとは家に帰ってぜんざいを作って食べて普通に遊んでいただけだよ。」

ーそう冬休みに二人で過ごしていた時間が再び過ぎていっただけ。ー

「なぁ、甘さはこれでいいのかな。」
彼が鍋を煮詰めながら聞いてくる。
「どれどれ。」
私は中身をすくい、舐めてみる。
「ちょっと甘さまが足りないかな。塩入れてみて」
「えっ、塩を何か入れるのか。砂糖の間違いじゃなくて。」
「うん、ほんのちょっとだけね。」
引き出しから塩を取り出してパラパラと鍋にいれていく。
「たぶん、いいと思うけど。ちょっと味見して。」
スプーンであずきをとり彼の口元に運ぶ。
彼は一瞬躊躇したみたいだったが餡を口に入れる。
「どう」
顔が赤いけどあずき熱かったかな。
「あずき熱かった。ごめんね。」
「いや、大丈夫。味はたぶんいいと思う。」
「そ、じゃ、あと少し煮詰めて火を止めておいて。あとお椀を棚にあるから出しておいてほしいな。」
お正月に残ったのし餅を一口サイズに切っていく。
そしてその内のいくつかを私は細かくする。
「それ、小さすぎないか。」
彼が杓文字で鍋をまわしながら聞いてくる
「小さくしないと危ないからね。あの子達の分。」
喉に詰まらせて苦しむ姿は絶対に見たくない。
「そっか、洋一と稜子にはちょっと大きいか。」
彼はそう言い火を止めて棚にあるお椀を取り出す。
私はお餅を切り分け、網に載せて焼きはじめる。
そして焼けたお餅を、軽くお湯に浸してお椀に入れる。
鍋のふたを開けこちらも軽くもう一度火を通す。
「ねぇ、もうできた。」
妹が匂いに釣られてリビングから来て足にまとわりつく。
「出来たよ。あっちで食べるから。これもっていってね。」
そう言って箸とスプーンを渡す。
「はぁ〜い。」
私が頭を撫でてやると嬉しそうに向こうに走っていった。
「何かあれだな。」
「なに」
「ん、いやなんかさ、亜由美はいいお母さんになるなって。」
彼はボソッとそう言った。優しい顔をしていた。
「そんなことないよ。真一がいなければ今日はダメだったしね。真一こそいいお父さんになるよ。」
言っておいてすごく恥ずかしくなった。何でだろう何でもない話なのにな。
「さぁ後は盛りつけだけだから、先いっていて。」
「わかった。」
彼がリビングに向かう。私もお盆に人数分のお汁粉をもってリビングに向かう
リグングでは弟と妹が仲良く遊んでいた。
「ほら、コタツの上片付けて。」
コタツの上にお盆を置く。
彼がコタツに入ると妹が彼の膝の上に座る。
「ねぇ、食べる時もそこなの。」
「うん」
元気な返事が返ってくる。しかたない彼の前にお椀をふたつ並べる
「ごめんね。」
「いいよ別に。あっほら、服が汚れるぞ。」
妹はさっそくスプーンを持ってお椀を抱えようとする。
彼が妹の袖口をすこしだけ折り曲げている。
私は彼の隣に座る。すると弟が私の膝に乗ってくる。
「もう、よう君もなの。」
私の前にも二つお椀を置く。弟はすかさずお椀に口を付けた。
「あつい。」
弟が舌をだしてちょっと泣きそうな顔をしている。
「もう、慌てて食べないの。ほら貸して。」
そう言ってスプーンをとり、ぜんざいをすくい。冷ましてあげる。
「ほら、もう大丈夫だから。あ〜んして。」
弟が大きな口を開く。そこにヒョコッといれてやる。
「どう、フーフーして冷まして食べれば大丈夫だから。」
スプーンを返してやる。
「おねちゃん。わたしも。」
妹が言う。もうしかたないな。弟の時と同じように冷ましてあげる。
「ほら、あ〜んして」
「あ〜ん」
妹は嬉しそうに口をモゴモゴさせる。
「おねちゃん、ぼくももっかい。」
「わたしも」
弟妹がせがむ。しかたない、二人が満足するまで食べさせるか。
二人にぜんざいを交互に食べさせてやる。
しばらくそんなことをしていると彼が呼ぶ。
「なぁ亜由美。」
「なに。」
そう言って振り向くと口の中にぜんざいを入れられた。
えっと何でしょうか。ものすごく恥ずかしいんだけど。
「だってお前、全然たべてないだろう。」
顔を真っ赤にするぐらいならやらなきゃいいのに。
彼は誤魔化すようにお椀に口を付けて啜っている。
「やっぱりふたりはらぶらぶなんだね。」
妹の何気ない発言により彼が咽せる。
「ちょっと大丈夫。もう、りょうちゃん。」
妹はニコニコしながら自分でぜんざいを掬って食べていた。
もう、すると彼が耳元でいう。私は顔がカッーと熱くなるのを感じた。
「バカ、何言ってるのよ。」
そりゃ二人きりならいい、嫌二人でもよくない。口移しなんてでも……。

ーその時のことを思い出したら恥ずかしくなってきた。何でこんな事まで話さなくちゃならないんだろうか。でも楽しかったな。あっでも口移しはしてない。そんなのあの子達の前で出来るわけないし。いなかったとしても恥ずかしくて出来っこない。―

コメント(1)

「なぁ、二人たぶんもう話聞いてないぞっていうより、聞いてなくて良かった。」
私が話している内容に補足したり、濁した部分をフォローしてくれたりとしていた彼がそう言う。
「えっ、なんで。」
「ほらみてみなアレ。まったくいつも通りだ。」
親友はお弁当から卵焼きをとり、彼氏の口まで持っていく。
「あ〜ん。」
彼氏は躊躇なく食べる。
「おいしい?」
「ああ、今度はあの海苔で巻いてある奴がいいな。」
「はいはい、あ〜ん。」
あのお二人さん何をしているんでしょうか。どうして人が話している間にそうなるのかな。さっきまでのあの状況は言ったどこへ行ったのやら。まぁなにはともあれ何時ののバカップルだ。
「あのさ、そう言うのは二人のときにしてくれない。」
たまりかねて私はそう言った。
「だってあんな話されたら。私たちもラブラブしたいなって思うでしょう。」
惚気も何も起きた出来事を教えただけなんだけどな。
「それにしても、なるほどね。将来の予行演習をしていたわけだ。」
「しかも子育て体験まで、いったい、いくつ階段を飛ばしてくの。もしかしてちゃんと登った後。」
親友は悪戯っぽく笑っている。
「バカいってないの。」
この子は何てことを昼間っから言うんだろうか。まだキスしかしてない。
いやそれで十分だろう。その先はまだまだ先の話。お互いがちゃんと大人になってからの話。
「あはは、そんなに真っ赤になっちゃって。固いんだから。」
そう言う問題じゃない。
それに私は普通だと思う。
世間がおかしいんだ。
「だってね。そうとしか思えないよ。もしかしてわかってないの。」
「そうだよな。それにしてもいつの間に家に上がり込んでるんだよ真一。弟妹とも仲良くなっているし。一昨日行ったのが初めてってわけじゃなさそうだな。」
それは、まぁそうなんだけどね。
隣で彼も真っ赤になっている。ごめんね。
あんまり知られたくないよね。
クリスマスイブのことも二人には言ってないもんね。
「ほらほら、今さら照れないの。いいじゃんもう夫婦で。でっ、いつから夫婦なの。」
そういって二人はお弁当の食べさせっこをしていく。
もう、好きに食べてください。
親友の前に置いてある彼のお弁当箱をとり彼に渡してあげる。
すると彼がこんな事を言いだした。
「よくない。そんな勝手にゴールさせられたくない。ちゃんと自分でゴールするよ。」
えっとあなたも何を言っているでしょうか。
その話はもう終わりにしようよ恥ずかしい。
そんな風に思っていると、周りからすごい歓声が聞こえる。
なんだろう。何があったんだろう。私はキョトンとしていた。
親友と親友の彼氏をみる。二人とも笑っている。
「ねぇ、亜由美。返事は。」
親友が聞いてくる。何の返事だろう。
「いいからいいから、返事、返事。」
「だから何。」
「いいから、お願いしますっていっておきなさい。証人は私たちがなってあげるから。」
「だから何の話をしているのよ。」
「いいから早く早く。彼に向かって。」
「えっと、お願いします。」
彼を見る。彼も何だかわかってない顔をしていた。
すると大きな歓声が教室中をこだました。
『オオォー』教室が揺れた気がした。
「真一、よかったねプロポーズ受けてもらえて。」
親友がとんでもないことを言う。えっとどういう事なんだろう。彼をみる。
「そんなことしてない。どうしたらそうなるんだよ。」
そりゃそうだよね、私もどうしてなのか聞きたい。
「もう、今さら照れな照れない、私たち及びクラス全員が聞いてるから。」
ダメだこれは。
でも、さっきまで漂っていた不穏な空気よりも、こんなに騒がしくてもなんだか心地よい。だからといって年から年中こんなに騒がしいのは勘弁して欲しいな。
今年も私たちはこんな感じなのかな。
fin

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