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作家の卵達『落ガキ』コミュの華詩 とある11月のとある一日

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 窓の外は紅葉しきった木々の葉でいっぱいだった。
机に体を預けながら今日も外を見ている。相変わらずチョークの音は心地よい睡眠誘導音だ。そう言えばあの日もこんな風にまどろんで寝ていったっけ。そんな風にあの日の事を思い出す。
 思い出すが最後、顔が熱くなるのを感じる。今、顔をあげるわけにはいかない。
眠気は何処かにいったけど落ちつくまで、このままで。それでもアレからそれなりに日は経つている。やっぱり納得いかない。でも感謝している。
 結果はいいけど私は過程も大切にしたい。できればあんな状況じゃなくてもっと、こう……。それはそれで恥ずかしいし、そんな状況が想像できない。
 そんなことを考えているうちにチャイムが鳴り授業は終わっていた。
 変な事を考えていたせいでさっきより顔が熱い気がする。
机の横にかけてある鞄から鏡を取りだし体の位置を少しずらし顔をみる。少しだけ赤い気がする。そんな事をしていたら肩を揺すられる。まずい、私は鏡を机の中に無理矢理しまい。とりあえず手を振って後でとだけかえす。
「何、どうしたの。お昼だよ。」
 しゃがみ込んで私の顔を見る。
 もう、まだだめだってば。そんな私の願いも虚しくバレてしまう。
「あれ、何か赤いけど、ああそっか。」
「何が。」
「照れちゃって。」
「!?。」
 やっぱり気づかれた。言われてさらに顔が熱くなる。取合えずあっちに行っておいてもらおう。
「後で合流するから先に行って。」
 私はふせたまま右手を振る。
「はいはい。じゃあ先にね。」
 親友はそう言って向こうに行く。
 机に伏しながらあの日の事をはっきりと思い出していた。

―一生忘れる事がないだろう出来事だった。何もイベントがない11月に決定的なイベント。そう世界的に見るとささいな、とってもささいな出来事。でもそれは私の人生にとって重要な事。そんなのが私の予想をこえる状況でおこったあの日。私はあの日の事を絶対に忘れないだろう。―


 窓から外を見る。ドラマとかならたぶん校庭が見えるんだろうけど。でもここから見えるのは木ばかり。周りを緑の囲まれた日本のどこにでもある田舎の学校。
 黒板に触れるチョークの音が心地よい眠りを誘う。机に体を預け窓から見える緑を愛でる。楽しい昼休みまではあと10分。
 今日のおかずは何だろうか、そんなことを考えていたら瞼がゆっくりと閉じてきた。
これは抵抗しても無駄というもんだ。本能のおもむくままに身を委ねた。
肩を軽く揺すられる。顔をあげると親友が「おはよう。お昼だよ。」と笑顔で向かえてくれた。
 鞄からお弁当箱をとりだし、いつものように窓際の日当りのいい場所に移動する。
そこにはすでにいつもの二人も来ていた。
 いつものように親友と親友の彼氏とその友達の彼との四人でお弁当を食べる。
食べていると隣に座る、親友がふっとこんなことを言った。
「ねぇ、今日は何の日かしってる。」
親友は嬉しそうに話しかける。
「さあ。」
 私はカレンダーをみるでも特に何かの日という記憶はない。
 昨日何かを言っていたような気はしたが覚えていない。
なので私は他の二人を見る。親友の彼氏と彼はそれなりに雑学にたけている。そんな二人だが何も思いつかないみたいだ。私も何も思いつかない。だから素直に聞くことにした。
「今日って何かの日だったけ。」
 親友はうれしそうに私を見る。何がそんなに嬉しいんだろうか。次に彼氏の方を向き微笑む。彼氏も微笑む。私と彼はよくわからなないと言う表情をしていただろう。
それをみた親友の彼氏はウンウンとうなずいた。それを見て親友は続けた。
「今日はね。ポッキーの日なんだよ。」
 彼女はそう言いながらカバンからポッキーを取り出した。そう言えば何か聞いた事があるようなきがする。そんな事を思っていると親友はポッキーの封をあけて。口くわえた。
お弁当以外にお菓子を食べる親友。
 そしたら、親友の彼氏が俺も食べると言って席を立つ。別に立たなくても手に届く場所に箱は置いたあるんだけど。そんなことを思っていたら。彼氏は親友の口にくわえられたポッキーをくわえた。
 私は固まった。向かいに座っている彼も固まっていた。
「何をしているんですか。お二人さん。」
彼が声をかける。すると親友の彼氏はポッキーから口を離す。
「何ってポッキーを食べてる。何か問題でもある。」
「「ある」」
 私と彼の声がかぶる。
 それをみて何やらいやらしい笑みを浮かべる親友。
「なんで新しいのを食べようとしないの。」
 私としては当然の質問をしたつもりだったのだが、親友の彼氏は何を言っているんだって目をしていた。
 そして、親友とアイコンタクトをした。何かあるんだろうかちょっと嫌な予感がする。
親友がうなずく。何やら事前に打ち合わせがしてあったのだろうか。
「普通に食べるだけじゃ面白くないからゲーム」
それだけ言うと再びポッキーをくわえる。親友をみる。ちょっと顔が赤いでも嬉しそう。
相変わらずのバッカップルだ。見ていてこっちが恥ずかしくなる。
ついでにその状況を知った教室内はざわざわし始めたが、まぁまた始まったという感じで一度視線を向けただけで、あとは日常に戻っていた。
私も彼もそしてバッカップルも一緒に日常に戻るはずだった。

―ここまでの展開ならいつもの昼休みだった。けどアレはこの言動からすべては始まっていた。そして、見事に誘導された私と彼。ああ、思い出すだけでも恥ずかしい。最後のは自分で決めた事。でも親友と親友の彼氏には感謝しなくちゃいけないんだろう。―

 二人はおかまいなしに、ポッキーを交互に食べていく。初めに親友の彼が噛み付いたところからさらに親友が浅く噛み付く。まるで心地よいダンスを踊るかのようにリズミカルに二人が一本のポッキーを食べていく。
 見る見るうちに二人の距離が0へと近づいていった。あたしは何故か二人から目が離せなかった。
 そして残りが後わずかになったとき親友が首を少しだけ傾げた。
 えっともしかして最後までするつもりですか。こんな教室で、
 そう思っていたら。「ポキ」と心地よい音した。どうやら親友の行動は親友の彼氏には予想外だったみたいだ。親友の名残惜しそうな表情は何だかとっても女らしかった。
 親友の彼氏はどこかバツの悪そうな表情をしていたが、親友の笑顔ともに消えていった。そんな二人を揶揄するかのように彼が声をかける。
「カッコ悪いなお前。そこまでいったなら最後までいけよ。このヘタレ。」
彼がそういった。なっ何てことを言うのかな、昼間からそんな光景を見せられたらどうなることやら。
 間違いなく午後の授業中その光景が脳内でリピートされて、最後にはたぶん自分と彼とに置き換わって……。うん、精神的に絶対にもたないよ。ポッキーを折ってくれて良かったと思う。でもあんな雰囲気になるんだな。
 いつか私も彼とそんな風になれたらいいな。そんな事を思っていたら、親友の彼氏が混ぜっ返す。
「言うね。究極のヘタレのくせに。」
「なっ。誰が究極のヘタレだ。」
 彼も負けじと声をあげる。二人がどうでもいい事のいいあいを始めた。これもいつもの事なんだけど、いいかげんもう少し成長してもいいと思う。そこに親友がからむ。
「あれ、ヘタレじゃなかったけ。私の彼は違うけど。」
「違う」
 彼はムキになりながら答える。
「じゃ、ヘタレじゃない証明をしないと。」
 何か妙案があるともいいたげな感じがした。
「どうやって。」
 彼が親友に問いかける。
 ここで親友はとんでもない事を言いだした。
「簡単だよ。同じ事をして自分から折らずに最後までいけばいい。そしたらヘタレじゃない証明終わり。簡単だよねヘタレじゃないんだから。」
 そう言いながら、ポッキーをもう一本袋から出し口にくわえる。
 おいおい、彼氏の前で別の男とポッキーゲムをするつもりなのか。親友よそれはいろいろまずいよ。でもあの子ならやりかねない。そもそもそんな光景は見たくない。
「ねぇアンタ正気。さすがにそれは……」
 止めようとしたが私は最後まで言うことが出来なかった。
 親友はもう一本袋から取り出して、そのポッキーを事もあろうに私の口に差し込んだ。
「はい、準備完了。ヘタレじゃないところをみしてね。」
 自分はくわえたポッキーを美味しそうに食べている。
 ちょっとまった。どうして私まで巻き込まれなきゃならない。
「ちょっと待て、なんでコイツなんだ。」
 えっ、親友とのがよかったのかな。確かにあの子は、可愛いし、スタイルもいい性格もいい。私と親友どちらがと問われれば、十人いれば十人が親友を選ぶ。わかっていることだけど、それはそれでちょっとショックを受ける。
「何、お前、人の彼女とポッキーゲームして最後までいきたいの。」
その発言に親友の彼氏が反応する。そう言われて彼は顔を真っ赤にする。
「さすがに俺に寝取られ属性はないから。やるならね。」
意味ありげな視線をこちらに送りさらに彼にも送る。
えっとあなたは何をいっているんでしょうか。そんな事より止めてください。
「ちょっと私やだよ。恥ずかしいよ。」
私はポッキーを手に持ち講義する。ついでにポッキーは食べた。
ゲームにつき合わないために。
「まぁいいじゃない。ゲームだし。何かが減るわけじゃないし。それに……」
 いや確実に私の何か大切なものが減っていく気がする。
 親友が意味ありげ笑いながらいう。そして最後は私だけに聞こえるように言った。
 そして、袋から新しいポッキーを取り出し、そつなく私の口に差し込む。

―私は抵抗すればいいのに親友がいった最後の言葉に期待してしまったのか。あの時の私はすんなりとくわえてしまった。―

 そんな私たちの会話が周りにも伝わったのか、ざわざわとしてきた。周りを見ると騒がしいことになっている。目に手を当てながらもバッチリとこちらを見て、顔を赤くしている子。友達同士で何やら盛り上がっている子。興味ない振りしてチラチラとこちらを見ている子。色んな子が私たちの周りにいた。隣をみると、無邪気に頑張れと声をかける私の親友。
 まぁあの子は楽しいんでしょうけど。こっちはとてつもなく恥ずかしい。何で私はこんな事を、こんな大勢がいる前でしなくてはいけないんだろうか。
 私は親友を睨む。親友は笑っていた。確かに彼との距離を縮めたいとは言ったけど。
 でもでも急にここまでするような、大胆な勇気は持ち合わせてない。
 しかもこんな大勢が見ている前で、仮に四人しかいなかったとしても無理。
 確かに私は鈍い彼との関係を少しでも近づけたい。そんな話を親友と親友の彼氏にいつも相談していた。昨日も二人に相談していた。そしたら親友がカレンダーをみながら良い事思いついたといって、私に任せてといった。そして親友と彼氏の二人で何やら打ち合わせをして。明日のお昼を楽しみにしてとだけ言い残して帰っていったけ。
 するとさっきの二人のアレも全部計画通りなんだろうな。最後の折れたのも計画だろうか。まぁ親友は時たま悪戯するからあれはあの子の独断かな。
 けど、彼の性格からして失敗すれば何かしら親友の彼氏をからかうだろうから。それを見越しての二人の計画なのか。
 彼の方を見てみる。彼の方は親友の彼氏となにやら話をしている。何やら頷いたり、首を振ったりしてる。
 親友の彼氏よ、別の手段でなら多いにありがたい光景なんだけど。できれば止めてほしい。でも二人は私のためにこれを考えてくれたんだから文句はあまり言えないのかな。
 そう思い、私は彼らを信じて大人しくポッキーのチョコの部分をくわえて彼が、くわえつくのを待っている事にした。チョコが口の暖かさで少しずつ溶けていく。
 彼は彼でなんだか普段からは想像もできないほど狼狽えている。私のことを少しは異性として意識していてくれたのかなと思うと、正直ホッとする。これで躊躇なくくわえられていたらちょっぴり悲しいな。
 そんな風に思っていると親友の彼氏が彼に何かささやいた。
顔を少し赤くして反論しようとした所で親友の彼氏に背中を押され、私の目の前にきた。
「これ、ゲームだから。気楽にな。」そんなことを言う。
それって男の子が言うセリフなんだろうか。むしろ私が言うべきセリフじゃないのかな。
少しだけほんとうにすこしだけ、寂しい気持ちがした。やっぱりこんな事してもダメなのかな。親友に視線をおくる。彼女は大きく大きく頷いてた。となりの彼氏も頷いていた。
自分たちを信じろ、そんな風に言っている気がした。
 私は顎を少しだけあげる。身長差があるため上を向かなくてはならい。それにしてもいい加減くわえてくれないかな。私は早くしろと言う意味もこめて、もう一度だけ顎を動かす。
「ほら、早くしてあげないと。いつまで女の子にあんな格好さ背ておくつもり。」
 親友が彼をうながす。
「わかっているって、俺はヘタレじゃない。」
 よっぽどヘタレといわれたのが悔しいようだ。
 彼も何か覚悟を決めたような顔つきになった。あんまりみたことがない真剣な表情だ。思わず見つめてしまった。周りが一段と騒がしくなる。
「そのままだとうまくいかないしな。」
 そんな事を言いながら、私に彼は私に机に腰掛けるように言った。
 私は彼が言う通りに机に腰掛ける。体を支えるために机に手をついて三たび顎を動かした。彼の顔が近い。ゆっくりと彼がポッキーをくわえる。さすがに親友の彼氏みたいに多くはくわえなかった。というより端っこをくわえただけ。
 この瞬間にもっとパニックになるかなと思ったが以外と冷静な自分がいた。
こうなったらゲームを楽しもう。変に意識するとパニックになりそう。そう思い私はこの状況を楽しむ事にした。それとこの状況の彼の反応を見たい。そこからわかる情報をしりた。そして私に可能性があるかも知りたい。
 そう思い、私は少しだけ深く噛み付いた。距離にして1cmぐらい。それに対して周りから歓声があがる。彼はビックリしたような表情をしている。目があう。普通なら耐えられずに視線をはずすんだろが、今はしっかりと視線をかわす。すると彼が目線をはずした。やっぱりヘタレかもしれない。彼は一度目をつぶり、私が進めたよりも短くくわえた。
「ちょっと、全然進んでないじゃない。やっぱりヘタレ?」親友が揶揄する。
彼は少しだけムッとした表情をした。
まぁ言われてもしかたないよね。何せいまだに彼はチョコの部分に近づいてない。
やっぱり私とはこんな事したくないのかな。
すると親友の彼氏が彼にこう言った。
「さっきもいったろ。大丈夫だって。俺を信じろよ。」
なんだろう何ていったんだろう。何が大丈夫なんだろうか。そんな事を私は思いながらどうするかを考えていた。
 そして、私も少しだけポッキーを食べていく。お互いにちょっとずつしかくわえていかない。あの二人みたいにリズミカルとはいかない。それでも食べていけばポッキーは少しずつ短くなる。いつかはあの二人の距離にまでなるのかな。視線を彼に向ける。
彼は何かを考えるかのような顔をしている。まだ二人の間のポッキーはそれなりの長さをもっている。何を考えているんだろうか。彼の表情から私が読み取れるのはただただ真剣な表情だった。
 すると彼は私の方に両手をおいた。私は一瞬体に電気が走ったかのように震えた。彼の顔を見る。そこには何かを覚悟した男の子の顔があった。彼はポッキーを今までで一番深く齧った。
 その結果私との距離は一気に短くなった。5cmくらい。私はビックリして彼の顔をみた。彼は何だか申し訳なさそうな顔をしていた。なんだろう何でそんな顔をするんだろうか。私と視線が合うと、その表情はいつもの彼にもどっていた。
 彼は私とこれをしてドキドキもしてくれないのかな。私を驚かせてゲームを終わるつもりなのかな。私は肩に手をおかれただけどドキドキしたのに。彼に取って私はただの気の会うお友達なんだろうな。

―正直この時の私はパニックになっていたんだと思う。だってそうじゃなきゃあんな事はしない。たぶん、そうたぶんね。―

 気づいてもらえないなら、気づかせればいい。だから私は勇気を持って彼がしたように一気に距離をつめる。二人の距離が微妙なとろろまで迫る。私の肩には彼の両手がおかれている。ポッキーがなければ完全なキスの体勢だ。私もヘタレなのかな。最後までいっちゃてもいいのに、でもさあファーストキスが自分からってのは何だか嫌だった。
 だから微妙にポッキーを残した。でもこれで気づいてくれるかな。ここまでして気づいてもらえなかったら。たぶん立ち直るのにすっごいかかるだろうな。この体勢のまま彼は止まっている。何かを躊躇しているみたいだ。でもこれが私の思い。届いてほしい。そう思ったとき私の心は決まった。
 私は、目を閉じる。うるさかった周りが急に静かになった。周りは私の意図を的確に読み取ったみたい。彼はどうなのかな。どれぐらい経ったのだろうか、体中がドクドクして時間的なものはよくわからない。でもチョコの溶け具合からして目を瞑ってからそれなりに時間が経っているような気がする。
 でも彼の動きはない。決心したのに、何だか踏みにじられた気がした。彼にしてみればなんでこうなっているのかわかってないから、しかたないんだけど。
 それにしても鈍いにもほどがある。嫌ならポッキーを折ってくれればいい。けどここまで乙女にさせておいて、折られては私が立ち直れない。ならいっそうの事。
 私は腕を伸ばし、彼の頭を抱くように強引に唇を重ねた。そうこれが私の思い。だからちゃんと受け止めて。
 お互いの距離を取る。周りは静まり返っていたが、しだいと賑わいが広がっていった。
女の子たちはキャーキャーいいながら色んな話をしている。まぁそう言うのが普通だろうね。親友達はというと驚いた顔をしていた。彼は呆然としていた。それはそうだろうね。
自分が噛み付く番でどうしようかと考えていたら突然されたんだから。けどその顔はないんじゃないのかな。いつまでも驚いてないで私を見てよ。
「あのさ、何か反応してくれないかな。」
 私は恐る恐る聞いた。それでも彼は固まったままだった。すごく恥ずかしいけどしかたがない。本当は彼からと思っていたけど。ここまで来たから私から言うことにする。
「私、貴方が好き。」
 ずっと心にしまっておいた言葉を口にしてみた。これで振られたら私はどうなるだろう。でもファーストキスはちゃんと想い人に捧げれた。だから結果はダメでも後悔はしない。周りがまた一段と騒がしくなる。中にはまだしてなかったのかよとの声も聞こえる。大きなお世話だ。
「うん」
 彼が少しだけ反応した。返事なのかなんなのかよくわからない。
「なになに、キスの後に告白。新鮮だね。」
 親友の彼氏が私を見ながら彼をつつく。彼はまだ固まっている。
「一応私のファーストキスなんだけど。返事くれないの。」
 さっきのが返事だなんてのは認めないから。
 ようやく彼は口を開いた。
「俺なんかでいいのか。」
 ここまできてこんな事を言う。乙女の唇の価値をなんだと思っているんだろうか。
でもそんな彼が大好きだ。
「よくなきゃしてない。」
 私は恥ずかしさのあまり後ろを向く。後ろにいた親友と顔があう。親友はよかったねと一言いってくれた。私の頬に冷たい物が流れる。親友が手で吹いてくれた。
「おめでとう。こ……。」
 親友は何故か途中で言葉を切った。私は顔をあげると親友がにこやかに笑っている。私が不思議そうな顔をしていたら後ろからギュッと抱きしめられた。
「ごめんな。俺、とことんヘタレだったみたいだ。もしかしてって思う事もあったけど。俺なんかがそんなわけないって誤魔化していた。俺もお前が好きだよ。」
 教室中がお祭りのように一気にさわがしくなっていく。私の目からは涙が止まらなかった。

 さて、なにやら全てを思い返してしまった。
 一瞬とっても顔が熱くなっていたけど、全てを思い返したら随分と余裕ができた。
 そろそろ顔をあげて三人がまついつもの場所に行こうと思っていたら、肩をポンポンと叩かれた。横をむくと彼の顔があった瞬間にまた赤くなる。すぐに顔を伏せる。
「何やってんだよ。」
「何だっていいでしょ。先食べてていいから。」
「俺もそうしたいんだけどさ……」
何だかは切れが悪い。何だろうか。彼は一言
「弁当」
と言った。だから先に食べてて良いっていったのにな。私は意識を集中させる。もう少しで熱いのがとれそうだ。
すると彼は小さな声でもう一度言う。
「ああ、もうだから弁当」
 お弁当はわたっただからなんだろう。私は顔から熱が離れていくのを感じていた。
 そしたら彼は私の耳元で小さく言う。それを聞いて私は思い出した。
「ごめん。」
そう言って私は慌てて起きる。
「まったく、もしかして忘れてた。俺は凄く楽しみにしていたんだけどな。」
「!」
また赤くなる。さっきまでの時間はなんだったんだろうか。親友の照れちゃっててのはお弁当の事だったのかな。そうだよねたぶん、アレからだいぶ日もたっているし。
「あんまり期待しないで、料理そんなに得意じゃない。」
そう真っ赤になりながら私は鞄の中からお弁当をとり彼に渡す。彼はすごっく嬉しそうな顔をしていた。
「おい、そこいつまでもいちゃついてないでこっちに来いよ。」
「よかったね。手作りのお弁当が手に入って。」
 こらそこ大きな声で言わない。周囲の視線が私たちに集まる。ああ、もう恥ずかしい。絶対わかってあの二人はやってる。
「さぁ、行こう。昼休み終わっちゃう。」
 私は彼の手をひっぱりいつもの場所に移動する。
そして、今日もいつもの同じように日常が過ぎていく。
fin

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