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社会を科学の目でコミュのワーキングプア

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久しぶりの投稿ですね。


ワーキングプア、絶望からの脱出法 新たな労働力求めて
http://www.asahi.com/job/special/TKY200610270136.html

(AERA:2006年10月23日号)
 全国に650万世帯とも言われるワーキングプアが、日本の救世主になるといったら言い過ぎだろうか。

団塊世代の大量退職。少子化に伴う人口減。

人手不足は始まっている。絶望している暇はない。

(AERA編集部・片桐圭子)





 「明日は、仕事できますか?」

事務所に足を踏み入れて、5分でこう言われた。9月下旬のある日、1日単位の日雇い労働をあっせんする人材派遣会社へ登録に出かけたときのことだ。

登録書類はまだ書きかけで、私が何者かさえわからないのにいいのかなぁ。逡巡したがその後も、

「どうですか、明日」

と繰り返す。結局、書類を書き上げる前に、翌日スーパーで働くことが決まった。


 「ワーキングプア」の急増が社会問題化している。都留文科大学の後藤道夫教授は、「1人、あるいは複数がフルタイムで働いているか、働く準備があるにもかかわらず、最低限度の生活水準(生活保護レベル)を保てない収入の世帯」と定義しており、就業構造基本調査(総務省)などを基にした試算では、02年の段階ですでに、656万世帯がワーキングプア状態。一人暮らしなら、地方の中堅都市で年収230万円程度、首都圏で280万円程度が生活保護レベルに相当するという。

 「スポット派遣」「アルバイト派遣」などと呼ばれる日雇いの派遣労働は、メーカーの工場などで増え続ける「請負」労働と共に、ワーキングプアに陥りがちな労働形態だ。人材派遣会社に登録しさえすれば、こんなふうにどんどん、仕事が紹介されるから。

 スーパーで任されたのは、レジの横で顧客が買った品物をレジ袋に入れる「サッカー業務」と呼ばれる仕事だった。


●熱心になるほどに埋没

 業務開始は午前10時なのに、集合は午前9時20分と指定された。そのぶんの賃金は支払われない。午後6時までの8時間は休憩時間以外立ちっぱなしで、数時間のうちに足が痛くなる。右手で商品をつかみ、左手で持った袋に入れる単純作業の繰り返し。

 考えるのは「待たせちゃいけない」ということだけだ。一生懸命になるほど、自分が機械になったような、何かに埋没していくような思いに捕らわれた。

 疲労困憊して向かった休憩室でさえ、疎外感に襲われた。冷蔵庫や電子レンジを自由に使い、チョコレートをつまみおしゃべりに興じるのは、ロゴ入りシャツを着た長期契約らしい主婦たちや、エプロンに「研修生」のバッジを付けた直接雇用のアルバイト。「販売支援員」のわが同僚たちは、あいている席にポツンと座り、黙々とおにぎりをかじった。1人は食べ終わると突っ伏して眠り、1人は分厚いマンガをめくった。

 1日働いて、対価は6650円。登録の時に手渡された規定には7000円とあったが、所得税の他に「データ装備費」なるものを200円引かれ、1000円までの交通費も含んでいると説明された。同じ仕事を25日続けたとして、月収は16万6250円。年収に換算すれば199万5000円。りっぱなワーキングプアだ。

 それでも、1日限りの同僚となった30代後半とおぼしき男性は、こう話した。

 「今日のスーパーは働きやすいですよ。ちょっとしたミスを責めるようなところも、たくさんありますからね」

 彼が毎日を楽しんでいないことは、その話しぶりでわかった。日雇いの道に入り込むと、なかなか抜け出せないことも。8時間立ち続けた後で就職情報誌をめくるのは想像以上に重労働だと感じた。先のことを考える間もなく、

 「明日は、仕事できますか?」

 の電話は、かかってきたから。


●テロ夢想させる不満

 横浜出身、法政大学法学部卒業、日雇い派遣会社5社に登録しているという男性(37)に会った。

 大学を卒業したのは94年。それこそ必死で就職活動に臨まなければ内定を得られなかった「就職氷河期」元年にあたるが、彼は合同会社説明会に2度参加しただけで就職活動をやめた。英会話教材のキャッチセールスに遭い150万円の借金があったためだ。

 卒業後の1年半は深夜の工場で毎日12時間働いた。借金を返すと幼い頃から興味があったマスコミを目指し、アルバイトをしながら業界紙や一般紙を受けたが全敗。

 日雇い派遣の仕事をし始めたのは、マスコミをあきらめた99年ごろだっただろうか。製本工場、菓子工場、コールセンターなど、1日ごとの契約ながら週に何日も通う「レギュラー」として働いたところも多かったが、体調を崩して休んだり、有休を求めたりするたびにクビを切られた。

 身についたスキルなんてない。やりがいを実感したこともない。意欲を示してまじめに働くことがもたらしたものは、「認められること」ではなかった。いいように使われること。言ってはいけないんだろうけど、と前置きして、男性は言った。

 「こういう不満が、テロにつながるんでしょうね。あまりにもばかばかしくて、国家転覆さえ夢想してしまうんです」

 男性の「テロ」発言を荒唐無稽とばかりは言い切れない。『新平等社会』などの著書がある東京学芸大学の山田昌弘教授(家族社会学)が、希望の喪失と社会状況の悪化はシンクロしている、と指摘しているからだ。

 山田さんの指摘はこうだ。

 高度成長期の日本には、受験戦争を突破していい大学を出ていい会社に入れれば、年齢とともに収入が増えるという「努力が保証される構造」が整っていた。

 しかし、90年代後半、「必ずしも努力が保証されない社会」がやってきた。それと時期をあわせるように、自殺者が増え、ホームレスが増え、高齢者による犯罪が増え、少子化が進んだ、と。

 埼玉出身、家業を手伝うために高校を中退したという男性(30)は、その家業が立ちゆかなくなって運送会社のドライバーになった。01年のことだ。1年足らずで正社員になったが、毎月250時間働いても、給与は手取りで20万円に満たない。1日に配達する荷物が300を超えることもあり、プレッシャーとひどい腰痛で退職を余儀なくされた。

 1カ月間は、新たな職探しに力を入れたが、見つからない。何もやる気がしなくなり、外出が面倒になり、家に引きこもるようになった。部屋の電気をつけることさえためらわれる。「親に申し訳ない」という気持ちだった。

 結局、同じ運送会社に事務職として復職したが、身分は契約社員に逆戻り。いま、毎月の手取りは12万円だという。


●2週間の研修で正社員

 正社員にならない、なれない人が増え、格差や貧困が生まれている。

 彼らを、努力不足と切り捨てることは簡単だが、90年代半ば以降の就職氷河期に高校や大学を卒業した人たちの中には、どんなに面接を受けて、努力しても内定が取れなかった人が多くいる。頑張ったけどダメだったというトラウマや、やりたいことが見つからない焦燥感を抱え、やむなく非正社員の道を選んだ人たちだ。東京・渋谷のヤングハローワークにやって来る20代、30代の中には、こうした人たちが多く含まれている。

 しかしいま、絶望の縁に沈むこの人たちをもう一度、社会の中に取りこもうというビジネスが始まっている。

 例えば、人材紹介・研修の「ジェイック」が開講する「営業カレッジ」がそれだ。

 対象は20代のフリーターで、学歴、性別不問、受講料無料。午前9時から午後5時まで、2週間をかけて、社会人のマナーから営業のイロハまでを教える。同期生全員を前にした自己紹介にはじまり、飛び込み営業の実習もある。「スーツ着用」「遅刻は即退学」がルールだ。すでに380人が卒業し、その8割が、中小企業に正社員として就職している。ジェイックは、採用が決まった時点で企業から成功報酬を得る。

 発案者の佐藤剛志社長は、常々、新卒採用を絞りに絞ってきた企業が、「営業経験5年以上、20代、リーダー経験あればなおよし」などと経験者ばかり求めることに疑問を感じていた。

 「ほとんどの企業が経験を積ませたり、育てたりする手間を放棄しているのに、そんな人、いるわけないじゃないですか」


●フリーターの再評価を 

 ハローワーク主催の就職セミナーの運営を任されるうち、職を求める大量の若者が来るようになった。中小企業からは、人手が足りないという声が聞こえるようになった。それなら、自分たちが新人研修を施して両者をマッチングすればいい、と思ったという。

 卒業生を採用した企業の一つが、東京都墨田区の建設資材リース会社「大同機械」だ。社員50人ほどの小所帯ゆえ、未経験者に営業を一から教える余裕はない。経験者ばかり採用してきた、と落合康全社長。フリーターは、

 「あてもなくブラブラしてる、どうしようもないヤツ」

 に思えたが、ジェイックの集団面接で宮本浩さん(25)を採用した。エントリーシートに、

 「これまで面接を受けても就職できなかったのは、具体的な目標と執着心がなかったから。いまは、出会った全ての人に『すごい』と言われたい。そのためには常に結果を出す。そのために努力する」

 と書いた。まもなく宮本さんの入社から1年が経つが、落合社長の中では、

 「『よーいドン』から1、2カ月なら、営業経験のある人に負けるかもしれない。でも、長い目で見れば宮本が勝つんじゃないか」

 という期待感が高まっている。

 05年5月に「毎年20万人のフリーターをフルタイムの仕事に」という目標を掲げた厚生労働省は、06年4月末時点でその目標を達成。07年からは、25歳以上の「年長フリーター」支援事業を始める。


●必要なのは「意欲」だけ

 業務請負会社の団体「日本生産技能労務協会」の清水竜一理事によれば、「偽装請負」を正常化すれば、彼らを指導監督するリーダーが20人に1人は必要になる。

 「リーダーは請負労働者を派遣する会社の正社員になります。工場で働く派遣や請負100万人のうち、仮に50万人が適正な状態にないとすれば、単純計算で2万5000人の正社員需要が生まれる」

 リクルートも4月から、横浜市のJR桜木町駅前に「就職Shop」と名付けたカウンターを設け、地元で正社員の職を求める既卒者たちを支援するビジネスに乗り出した。登録者は首都圏在住の20代の大卒者を中心に2400人。登録企業は神奈川県内に拠点をおく中小企業470社。9月末までに、173人が就職している。

 こちらも利用者は無料で、企業から成功報酬を得る仕組みだ。単に職を紹介するのではない。企業・求職者の双方に仕掛ける。

 経験者を求める経営者には「育てる意識を持って欲しい」と迫り、フリーターをいやがる企業には「先入観を持たずに人物を見て」「東大生なら全員が優秀とは言えないのと同じ。フリーターの中にもコミュニケーション能力の高い人はいる」と意識変革を促す。

 一方で、大手企業にこだわる求職者にも、「空白のない『きれいな履歴書』を好む企業にとって、自分はマイナスの存在なんだ」と自覚させ、やりたいことが見つからない、と繰り返す「自分探し世代」には、「やりたいことは、仕事をしていく中で見つかるもの。順番が逆」とアドバイスする。

 青臭い話に聞こえるかもしれない。しかし、職を得られるか得られないかを分けるのは、学歴でもコミュニケーション能力でもない、「意欲」だけだと、就職Shopチーフの高森志文さんは話す。


●1人じゃないんだ

 仕事の中身の前に、給与や休日を気にするような状態のままでは、職が得られることはまずない。自分の理想とは違っても、この仕事をやってみようと腹をくくれるか。いまの状態を変えよう、抜けだそうと決意して訪ねてきたとすれば、仕事はすぐに見つかる。高森さんはそう断言した。

 利用者の側から言えば、1人じゃないという気持ちが覚悟を固めさせてくれる。

 スーパーなどで使うPOS(販売時点情報管理システム)や計量器機を販売・保守する会社に就職した男性(23)は、半年間通った就職Shopを思うとき、最初に頭に浮かぶのは「応援してくれた担当者の存在」だと話す。就職が決まらないまま、この春に大学を卒業し、ゴールデンウイークには就職Shopの門を叩いていた。自分の背中を押してくれる人がいたことの意味は大きかったと思う。

 団塊世代の大量退職や、少子高齢化にともない、労働人口が減っていくことは必至。絶望する暇なんかない。いまが、チャンスだ。

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