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キム・ギドクコミュのキム・ギドク3連発

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新入の北京波です。
ギドク作品を3本続けて見ましたので、ご挨拶代わりに評のようなものを書いてみました。お邪魔します。

『 サマリア 』


なんという哀しい映画であろう。

また、なんと美しい映画であることだろうか。

高校1年生のヨジンとチェヨンは親友同士。2人でヨーロッパ旅行へ出るために、チェヨンが援助交際をし、ヨジンはそれを嫌いながらも、男たちとの折衝や連絡係をし、チョエンが無事に帰還できるまでラブ・ホテルの前で見張り役をしている。

チョエンはいつも笑っており、ヨジンは肉体的に汚い男たちに身をまかせているチョエンに罪悪感を抱いてもいる。

ある日、淫行取締りのために警察に踏み込まれたチェヨンは、いつもの笑顔を浮かべたまま、ヨジンの目の前で窓から飛び降りて、遂には死んでしまう。
 
ヨジンは、そんなチェヨンへの罪滅ぼしのために、いままでの相手の男たちに肉体をさしだし、いったんは受け取っていたお金を返しはじめる。

もう少しで全員に完済できる寸前に、ヨジンの行動に気付いた刑事でもある父ヨンギは、衝撃をうけ、彼女を尾行をするが、やり場の無い怒りは男たちへの制裁をエスカレートさせていく・・・。

本作は、物語を三部構成で見せていく。
第一部では、夢のために身体を売るチェヨン、第二部は、死んだチェヨンへの贖罪に身を費やすヨジンと、その父親。そして第三部は、罪を犯した父親の行動を描いている。

援助交際という反社会的な行為を描きながら、それに陥っていく少女たちのあまりに卑小な夢にすがる絶望的な意識の停滞。

母親を病気で失って父一人子一人で過ごしてきたヨジンの家庭のつましくも温かさを思うとき、この父ならずとも事実を知って驚愕した悪夢のような事態に観客の胸は張り裂ける。

少女たちが何も信じずに行動していることが、なんと言っても哀しい。また、父親から愛されていることをわかっているはずのヨジンを、それでも駆り立てていく絶望の淵の深さ。

この『サマリア』が発信してくるものは、先進国なら普遍的な光を放つものだろう。

最後に父親がヨジンを河原で絞殺して埋めるイメージは、ヘッドフォンを掛けさせてやるところで嗚咽を我慢した。

このような場合、日本人なら殺してしまうだろうが、それでも赦すところにキリスト教的な視線があるのだろう。

父親は埋めることで何も知らずに過ごせた甘美な日々を葬ったのであるが、唯一地表に伸ばしたヘッドフォンのコードは、そのまま親としての切なさを象徴するものである。

心ならずも選択した愛する娘との惜別・・・、それでも生かしておいてやる寛容。

父親は一生、娘の分まで罪を背負っていくのだろう。

『春夏秋冬、そして春』に続いて、キム・ギドクの送り出してくる清冽な魂への叫び。

世界のトップ監督と表現することを些かも躊躇しないものである。

かの伊丹万作が30歳のときに言ったという言葉、《人間を慰めることこそは、映画の果し得る最も光栄ある役割でなければならぬ》を痛烈に思い出した。
 
これほどに希望の光の差さない漆黒の荒野にも、人が生きようとして歩みを進めようとするとき、必ず方向を示すしるしがあるのではないか。

そして、それこそは神と呼ぶものであるのではないのか?

そういう祈りに似た意識の下の感情をうねらせる紛れもない傑作である。必見!(★★★★☆☆)

タイトルの「サマリア」は、聖書に登場するサマリア人から来ている。あまり詳しくないボクでさえ聞いたことがあるものだ。ユダヤ人と対立し蔑まれたサマリア人は、聖書の中ではしばしば、信仰心の厚い「良き人」として表されていると聞く。

チェヨンへの贖罪に男たちに抱かれていくヨジンへ、複数の男たちが口に出す感謝の言葉・・・。淫行する男たちもまた、単なるだらしない社会の一員であることが胸に迫る。

『 コースト・ガード 』

南北軍事境界線、民間人をスパイと誤認し、射殺してしまったある兵士の物語。

南北軍事境界線に近い海岸を警備中の部隊。

チャン・ドンゴンはまるで『拝啓、天皇陛下様』の渥美清や、『兵隊やくざ』の大宮貴三郎こと勝新太郎のように、軍隊が好きで好きでたまらない兵隊。

頼まれもしないのに、有事に備えて草叢に隠れて勤務を遂行しているような、一本気かもしれないが、知性もそういったレベルの兵隊である。

 部隊の駐屯している町は漁業しかない寂れたところで、なんにも事件もないために兵隊たちのことを給料泥棒とおちょくっているようなところ。

ドンゴンは勤務中に、セックスしようと警戒地域内に無断で入ってきた男女のうち、男を北のスパイと誤認して射殺してしまう。男は射殺されて、女は精神をおかしくし、部隊の周りをうろついて、兵士たちの慰み者となる。

この辺りは『神々の深き欲望』の沖山秀子みたいである。

一般人からは糾弾され、部隊からは冷遇され、休暇を与えられるが、ついにドンゴンは精神を病んでしまう。

 まあ、こう書いてきても暗く陰鬱なストーリーであることは分るだろうが、観客としては更につらい重苦しさである。

ついには除隊させられるが、軍隊以外には居場所のないドンゴンは舞い戻り、結局精神病院に送られてしまう。

その頃から、部隊にはなんともいえない変な雰囲気が漂いはじめ、兵隊たちのなかでドンゴンの幻を見る有様になり、毎夜毎夜不可解な出来事が起き始める。(ドンゴンの幻を見せる画面処理は巧みだ)

 しかしまあ、ここまでが忍耐にも程があるぜと叫びたい面白くなさであり、ようやくエンジンがかかってくるにしても遅すぎだと言わざるをえない。

ホーム・ページによれば、『ロスト・メモリーズ』の次回作として、チャン・ドンゴンが選択したのが低予算ながらも海外映画祭では高い評価を得てきたキム・ギドク監督作品である本作。

独特な映像感覚で“韓国映画界の異端児”と言われてきたキム監督の作品に俳優としてトップスターの地位を確立したチャン・ドンゴンが自ら出演を志願し、破格の安いギャラで出演し大きな話題を呼んだのだという。

どこの国でも娯楽映画のスターだけでは物足りなくなるのか。
ドンゴン演じる兵隊のキャラクターはファンとして決して気分のよいものではなかろう。

本作はキム監督自身が5年間海兵隊で過ごした経験をもとに、朝鮮半島の現在を生きる人々の現実と葛藤を生々しく描いた作品である、とのことだ。

キム監督は本作のインタビューで「チャン・ドンゴンはスターとは思えないほど、謙虚で知れば知るほど素晴らしい人物」と賞賛の声を惜しまなかった、とある。

恐らくドンゴンが出たお陰で、興行収入としてはよかったことだろう。

撮影は全羅北道扶安郡ウェドの海岸で行われた。

気の触れた女の兄の役で『氷雨』での登山仲間ユ・ヘジンが信じられないほどバカなキャラクターを演じている。

もし、ドンゴンが出演していなくて、この映画見せられた日にゃ、死ぬほど退屈だったとは思えませんか、ご同輩!
(★★★)


『 受取人不明 』


遅れて来たキム・ギドク映画注目者であるボクには、まだ作家論を云々するレベルにはないが、この映画もまた、一筋縄にはいかない重たい映画で、しかも見応えがある。

『コースト・ガード』を見た身には、もはやどんな映画でも耐えられるように思えるから不思議。

ギドク作品としては『コースト・ガード』に先立つ2001年度作品である。

 登場する人物は少なくはないが、全ての人物に存在理由があるために、決して散漫にはならない。

1970年頃、米軍基地のある町。大変に田舎である。米軍兵相手の娼婦あがりの母(パン・ウンジン)と、黒人を父に持ったその息子(ヤン・ドングン)。

彼が使われている犬商人(チョ・ジェヒョン)は、母親の情夫である。朝鮮戦争で戦死した遺族の母と長男と長女の3人家族の家庭。その長女(パン・ジョンミン)は幼い頃兄の手製の拳銃の弾に当たって右目の角膜を傷めている。

彼女が心憎からず感じている幼なじみの青年(キム・ヨンミン)は、娼婦あがりの母の息子と友人で、彼らは仲がいい。青年の親父(ヨン・ナゲム)は朝鮮戦争で北鮮兵士を3人殺したのに叙勲されないのはけしからんと不満に思っている。

この青年にいつもたかってくる2人の不良高校生に、女子高生が角膜の手術を受けさせてもらえることを条件に愛人契約するG.I.(ミッチ・マーラム)で登場人物はほとんどすべてである。

 「受取人不明」とは娼婦あがりの母親が、名前もろくに覚えていない男へ、混血の息子のために延々とアメリカに向けて手紙を出しては還ってくることを指している。

 いずれの役者もすこぶる上手というか、演出にまったく弛みがないために、この救いのない内容でも“痛み”が充満しているから惹き付けられるのである。

若者には若者の、混血青年には出自と、子の目から見ての母の淫猥さ、そして犬商人に強権的にこき使われること。そしてそれは、韓国人から見ればなにも問題のないように見えるアメリカ兵さえ問題を抱えこんでいる。

 はっきりとはわからないのだが、それぞれの人物になにかの歴史的な暗喩がこめられているのだろう。

観客としては混血青年への痛ましさが一番だと思われるが、目を傷めた女子高生がアメリカ兵に身を売り渡す前に好意をもっている若者に身を差し出すが、通りかかった2人の不良学生に殴りつけられて凌辱されてしまうシーンには、『裸の十九歳』の永山則夫の姉妹が見舞われた災厄を思い出した。

それはとりもなおさず、貧困と、アメリカの傘の下で今日の繁栄をもたらされた境遇に共通点を持つ日韓なればこそ浮かびくる印象であるのかもしれない。(★★★☆☆)

あぁ、恥ずかしい。『木浦は港だ』で主役の俳優を知らない俳優だが実力がある・・・とうがったことを書いたら、『受取人不明』の犬商人(チョ・ジェヒョン)も彼だった!

「犬を殺すときはな、まず目で犬をひるませるんだ」と睨みつけるやり方を混血青年に教えるときアップになってわかった。

調べると、ギドク作品の常連性格俳優であるという。

『木浦は港だ』の彼は最初風間トオル風のアイドルみたいだが、この犬商人の眼力たるや、す,凄い!彼の主演として名高い『悪い男』を猛烈に見たくなった。

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