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英語学習とPC応用を考える会コミュの米教育史の分岐点_1

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今日から、アルク出版のGlobalEduNetに2000年の2月から2年間管理人の私が連載したアメリカからの報告を加筆してこのサイトに載せて行きます。
(児童)英語、英語教育、日米の教育、教育工学、ITの教育的効果などに関心のある方々の目にとまり、ご参考になれば幸いです。

GlobalEduNet #第1回目原稿

「米教育史の分岐点」
締め切り:2000年1月15日

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「九九を学校では教えないから自分で覚えなさい、だって」とPTAの会合から帰ってきた友人の奥さんは、大学で教鞭をとる主人に、喉を詰まらせ、ときどき遠慮がちに私にも目をやりながら経過を伝えた。その時初めて、私は米国の母親が目に涙を浮かべながら我が子の教育問題を語るのをみた。
 友人は階下にいる小学校3年生の息子に聞こえないように声を潜ませながら、「これまで人類が蓄積した知恵を伝えないで、あんな子にゼロからやりなおせと言うんだろうか?」と眉を曇らせた。
 やや自虐的な笑顔で私に問いかけた彼の目はこう言いたげだった。
『数学が優秀な国からきた君には、こんな基本的な問題でぼくたちが悩んでいるなんて信じられないだろうね』、と。
 友人夫妻の、そして多くの米国の親たちの、我が子がかけ算さえ覚えられないのではないかという共通の不安は、近年米国で進みつつある数学教育の改革が起因している。その改革自体も89年の州知事教育サミットが原因なのだが、実はそのサミットも83年の「危機にある国家」というセンセーショナルなレポートが起因しているのだ。
 この一連の出来事は、コンピュータとインターネットの普及の時期と重なったために、米国でコンピュータ応用教育の必要性がますます大きく叫ばれ、どの国よりも先に教育に使われだしたと言っても過言ではなかろう。

 そんな米国のK−12(幼稚園から高校生3年まで)の公立の教育者たちのプレッシャーは大きい。西暦2000年の今年中に、1989年に為政者たちが、ある意味では勝手に公約したことを実現しなければならない年だからだ。この公約はその後の教育改革につながり、ひいてはコンピュータならびにインターネットが学校に導入される導火線となっている。
 1989年、バージニア州の小さな街CHARLOTTESVILLE(シャーロッツヴィル)に全米の知事たちを集めて教育サミットが開催された。当時の大統領、ブッシュ氏と米国のこれからの教育改革について語るためであった。議長は当時アーカンソー州知事だった現ビル・クリントン大統領がつとめた。
「89年の教育サミットは米教育史の大きな分岐点」(オレゴン大学教育学部デービッド・コンリー教授)と言わしめるほど重要なものだった。その後、この国の教育改革は“教育大統領”と自称するビル・クリントン氏が92年に大統領に就任したときから本格的に始まった。それは、既に特集の中でも述べたように、ゴア副大統領と二人三脚で実行しはじめたいわゆる「情報ハイウェー構想」であり、マスコミ、企業、教育、政界を巻き込んでそのハイウェーを各家庭、各学校の机の上にまで通す作業である。そして、この世界中にクモの巣のように張り巡らされたWorld Wide Webをうまく教育に利用することによって、西暦2000年までに一気に米国のK−12の教育水準を世界のトップレベルにあげようという思惑もあった。
 しかし、そんなに急激に米国の子どもたちの数学理解がわずか10年かそこらで変化するとは思えない。なぜなら、米国の教育者の多くが日本では当たり前の数学の公式や歴史的事実などの「暗記」を重視せず、積極的にひろく情報を集め自分なりに分析して「理解」することに重点をおく。数学なら、似たような問題を繰り返し解くドリル練習を嫌って、文章問題による解決をよしとする。これがこちらの理想的教授法なのだ。しかし、確かに理想的だが、その実践には、子どもたちが「理解」する前にまず教師(D教師とも揶揄され、決して質が高いとは言えない教師がかなり多くマスコミでよくたたかれている)たちがその教授法と概念を「理解」しなければ成功しない。そんなものを州ごとに独立した法律、条例をもつ全米50州の教育者、生徒、そしてその親たちに分かってもらうには長い長い時間がかかるのは明白であった。

 確かに、約束の2000年までに実現する予定だった中学生の理数レベルを、世界のトップまで持ち上げることはできないとこの国の教育者たちのだれもが認めている。が、これまで苦労して準備してきた「情報ハイウェー」の構築は、まだ完璧ではないが、多くの生徒たちや教師の机の上にまで伸びてきた。関係者の努力は決して無駄にはならなかったのである。

 では、米国のコンピュータ利用や情報教育は現在どのあたりまで来ているのだろうか。
 1980年代、「米国のコンピュータ応用教育は日本の10年先を行っている」が日米のコンピュータ応用教育の現状を把握している人たちの大方の見方であった。しかし、日本が急速に追いついて、教育ソフトやコンピュータを教育に応用するコンセプトにはまだまだ大きな隔たりがあるとは言え、米国のそれは5年先の視野に入ってきたと思える。
 日本の企業戦略的な面からいえば、日本が米国のコンピュータ関連で追いついていると言っても良い部分は、やはりハードの面だ。こちらで使われるコンピュータや周辺機器の多くは日本製だし、日本で携帯電話があまねく普及し、そこから電子メールができるようなインフラができつつあるとは、多くのアメリカ人はまだ知らない。日本がハード面において米国をリードしていく傾向はこの先当分変わらないだろう。また、教育面においても、日本はいったんハードの設置やネットの配線などを始めると、米国が何年もかかったことをその半分以下の時間でやりとげるだろう。
 しかし、こと教育ソフトの利用や情報処理に関しては米国は日本のずいぶん先を行っている。自分たちの使用する言語(英語)で世界中にウェブを通して早く送受信ができる米国人のメリットは大きい。これからの日本の英語教育の方向によっては、日本はますます引き離されていく可能性は充分にある。
 

この稿完了

写真:左から、Melody, 管理人, Craig Hickman, my son (オレゴン大学教授のCraig Hickman氏はKid Pixの制作者です)

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